菓子の製造・流通・販売の現場では、品質と安全性を左右する「温度管理」の知識が欠かせません。
ここでは、菓子業界で日常的に使われる温度帯関連の用語を一つずつ取り上げ、定義・根拠・使用場面をまとめました。
- 常温/ Ambient Temperature
- 定温/ Controlled Temperature
- 冷蔵/ Refrigeration
- チルド/ Chilled
- 氷温/ Ice Temperature
- パーシャル/ Partial Freezing
- 冷凍/ Frozen
- フローズン/ Frozen
- 超冷凍/ Deep Frozen, Ultra-Low Temperature
- 急速冷凍/ Quick Freezing, Blast Freezing
- ブラストチラー/ Blast Chiller
- 危険温度帯/ Temperature Danger Zone
- コールドチェーン/ Cold Chain
- 保存温度帯変更/ Storage Temperature Zone Change
- フローズンチルド食品/ Frozen-Chilled Food
- テンパリング/ Tempering(調温)
- ブルーム/ Bloom
- 安全係数/ Safety Factor
- 水分活性/ Water Activity(Aw)
- HACCP/ Hazard Analysis and Critical Control Point
- 加温/ Hot Holding, Heated
- 氷菓/ Frozen Confection, Ice Confection
- アイスクリーム類/ Ice Cream Products
- 鮮度保持剤/ Freshness Preservative Agent
- 温度帯/ Three-Temperature-Zone System
常温/ Ambient Temperature
意味:冷蔵や冷凍の設備を用いず、外気温の範囲内で保管する温度帯を指す。ただし「常温」の数値は、適用される規格や法令によって幅がある。日本産業規格(JIS Z 8703)では20℃±15℃、すなわち5〜35℃と規定している。一方、日本薬局方や食品添加物公定書では15〜25℃を常温としており、両者には差がある。食品表示法においては「常温」の温度帯そのものに明確な数値規定はなく、「冷蔵・冷凍が不要である」こと、つまり外気温を超えない室温での保管を意味する、と解されている。
使う場面・対象となる食品:焼き菓子(クッキー、パウンドケーキ、ラスクなど)、干菓子(落雁、金平糖など)、せんべい、飴類、チョコレート菓子(ただし夏場は「定温」管理が望ましい)など、水分活性(Aw)が低く微生物の増殖リスクが小さい菓子が中心となる。食品表示法では、常温保存する食品は保存方法の表示を省略できる(ただし「直射日光を避ける」「高温多湿を避ける」といった留意事項がある場合は省略不可)。
定温/ Controlled Temperature
意味:一定の温度と湿度を保つ環境で保管・流通させる温度帯のこと。物流業界では一般に10〜20℃の範囲を指し、常温よりも低く冷蔵よりも高い中間帯として位置づけられている。法律上の定義はないが、夏場に外気温が30℃を超える時期の常温保管を「定温」と呼び換えるケースもある。
使う場面・対象となる食品:チョコレート製品の保管・流通で頻繁に使われる。チョコレートは28℃前後でカカオバターが融け始め、ブルーム(表面に白い粉や模様が浮き出る現象)が起きるため、通年で15〜18℃程度の定温管理が理想とされる。また、生クリームを使ったバターサンドやマカロン、一部のゼリー菓子も定温帯での流通が行われる場合がある。物流倉庫では「4温度帯」のひとつとして定温倉庫が運用されている。
冷蔵/ Refrigeration
意味:食品の品質保持を目的に、凍結点よりやや高い温度帯で低温保管すること。食品衛生法では10℃以下を冷蔵の基準としている(ただし生食用食肉は4℃以下)。厚生労働省の運用指針でも「10℃以下」が冷蔵の目安とされており、菓子類の多くもこの基準に準拠する。
使う場面・対象となる食品:生クリームを使ったケーキ、プリン、ムース、カスタードクリーム入りのシュークリーム、レアチーズケーキなど、水分活性が高く日持ちの短い洋生菓子が代表的。和菓子では生菓子(大福、どら焼き、練り切りなど)や餅菓子も冷蔵保管が推奨される。流通段階では冷蔵トラックやリーファーコンテナを用い、消費者の手に届くまで10℃以下を維持する。
チルド/ Chilled
意味:冷蔵のなかでも、食品が凍る直前の温度帯を指す。物流業界では概ね-5〜5℃の範囲とされ、「冷蔵」よりもやや狭い温度域である。JAS規格や食品衛生法に「チルド」という法定の用語はないが、流通・小売の現場では日常的に使われている。英語の”chilled”は「冷やされた」という意味で、フランス語では”réfrigéré”(レフリジェレ)が近い。
使う場面・対象となる食品:コンビニエンスストアで販売されるチルドスイーツ(プリン、シュークリーム、ティラミスなど)は、まさにこの温度帯で管理されている。乳製品を多く含む洋菓子全般、クリーム系の和菓子も対象となる。冷蔵との区別が曖昧になりがちだが、厳密にはチルドのほうがより低温(0℃付近)を意識した呼称である。
氷温/ Ice Temperature
意味:食品が凍り始める温度(氷結点)の直上、概ね0〜-3℃の極めて狭い範囲を指す。食品中の水分が凍結しない、ぎりぎりの低温帯を利用することで、組織の破壊なく鮮度を長期間保持できる技術として活用されている。一般社団法人氷温協会が提唱・普及している用語で、法令上の定義はない。
使う場面・対象となる食品:菓子業界では直接的に使われる機会は限られるが、和菓子の原材料となる餡(あん)の保管や、生鮮果実を使ったフルーツ大福・フルーツタルト用の果物の保存に応用される場合がある。鮮魚や精肉の保管で知名度が高い技術だが、菓子製造者も原材料管理の観点から知っておきたい。
パーシャル/ Partial Freezing
意味:食品の表面や一部がわずかに凍結した状態、およびその温度帯(-3℃付近)を指す。冷蔵庫の「パーシャル室」はこの温度帯を実現する専用スペースで、完全な凍結をさせずに保存期間を延ばすことを目的としている。英語の”partial freezing”(部分凍結)が語源。
使う場面・対象となる食品:菓子の製造現場では、バターの温度管理に応用されることがある。パイ生地やクロワッサン生地を折り込む際、バターが柔らかすぎると層が崩れ、硬すぎると割れてしまう。パーシャル帯でバターをやや硬めに保つことで、作業性を確保する職人もいる。ただし菓子製造業で日常的に「パーシャル」という言葉を使う場面は多くない。物流の文脈で登場することのほうが多い用語である。
冷凍/ Frozen
意味:食品を氷結点以下まで冷却し、凍結状態で保管すること。食品衛生法(昭和34年厚生省告示第370号「食品、添加物等の規格基準」)では、冷凍食品の保存基準を-15℃以下と定めている。一方、一般社団法人日本冷凍食品協会の自主的取扱基準や国際的な慣行(Codex規格)では-18℃以下を推奨しており、実務上はこちらの数字が広く採用されている。両者の差は「法的最低基準」と「品質保持のための推奨基準」の違いと捉えるとわかりやすい。
使う場面・対象となる食品:冷凍ケーキ、冷凍大福、冷凍どら焼き、冷凍シュークリーム、アイスクリーム類など。近年は「冷凍スイーツ」市場が急拡大しており、パティスリーが自社製品を冷凍通販する事例も増えている。菓子工場ではスポンジケーキやタルト台を冷凍ストックしておき、必要な分だけ解凍して仕上げる運用が一般化している。
フローズン/ Frozen
意味:英語の”frozen”をそのままカタカナにした語で、冷凍と同義。物流業界では「3温度帯」のうち冷凍帯を「フローズン」と呼ぶことが多く、「ドライ(常温)」「チルド(冷蔵)」「フローズン(冷凍)」というセットで使う。物流倉庫の倉庫業法に基づく等級区分では、C1級(-10〜-20℃)、F1級(-20〜-30℃)、F2級(-30〜-40℃)、F3級(-40〜-50℃)、F4級(-50℃以下)と細分化されている。
使う場面・対象となる食品:冷凍菓子の配送伝票や物流契約書で頻出する。アイスクリーム類はF1級(-20〜-30℃、通常-25℃以下で管理)が推奨されるなど、商品の特性によって要求される温度帯が異なる。菓子メーカーが物流会社と契約する際に「フローズン便」「フローズン倉庫」といった表現で登場する。
超冷凍/ Deep Frozen, Ultra-Low Temperature
意味:-40℃以下の極低温で保管・流通させることを指す。倉庫業法の等級ではF3級(-40〜-50℃)およびF4級(-50℃以下)がこれに該当する。一般的な冷凍よりも格段に温度が低いため、食品の酸化や組織変化がほぼ停止し、長期にわたって品質を維持できる。
使う場面・対象となる食品:マグロなどの水産物で知られる技術だが、菓子業界でも高級アイスクリームの原料乳や、特殊なフルーツピューレの長期保管に用いられることがある。ごく一部の菓子工場で、素材の風味を極限まで保つために導入される。一般的な菓子製造業では直接扱う機会は少ないものの、サプライチェーンの上流で使われている技術として知っておきたい。
急速冷凍/ Quick Freezing, Blast Freezing
意味:食品を短時間で凍結させる技術の総称。通常の緩慢凍結(自然に近い速度で凍らせる方法)では食品内部に大きな氷結晶ができ、細胞組織を傷つけて解凍時にドリップ(液だれ)が生じやすい。急速冷凍は-30〜-40℃の強い冷気を当てて一気に凍結させることで、氷結晶を微細に保ち、食感や風味の劣化を抑える。
使う場面・対象となる食品:冷凍ケーキ、冷凍大福、冷凍クレープなどの製造現場で広く使われている。ブラストフリーザー(blast freezer)やショックフリーザー(shock freezer)と呼ばれる専用機器を用い、焼き上がりや仕上げ直後の菓子を急速に凍結する。冷凍スイーツの品質は、この急速凍結の精度に大きく左右される。
ブラストチラー/ Blast Chiller
意味:加熱調理直後の食品を短時間で3℃付近まで急速冷却する機器のこと。-30〜-40℃で一気に凍結させるショックフリーザーとは異なり、凍結させずに冷却だけを行う点が特徴。HACCP(後述)の管理において、加熱後の食品が危険温度帯(後述)を素早く通過することが求められるため、この機器の導入が進んでいる。
使う場面・対象となる食品:カスタードクリーム、餡(あん)、ジャム、シロップ煮のフルーツなど、加熱後に速やかな冷却が必要な菓子の中間素材に多用される。衛生管理の観点から、炊き上げた餡を鍋のまま自然放冷するのではなく、ブラストチラーで一気に冷ますことで、細菌が増殖しやすい温度帯を短時間で通過させる。
危険温度帯/ Temperature Danger Zone
意味:細菌が活発に増殖する温度域を指す。日本の食品衛生の指導では概ね10〜60℃(特に20〜50℃が最も危険)が目安とされ、米国のFDA/USDAは40〜140°F(約4〜60℃)と定めている。食品がこの温度帯に長時間置かれると、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌といった食中毒原因菌が急速に増殖する。
使う場面・対象となる食品:菓子製造のあらゆる工程で意識すべき概念。加熱したカスタードクリームや餡を放冷する時間、生クリームを室温に出しておく時間、でき上がったケーキを冷蔵庫に入れるまでの時間──こうした場面で「危険温度帯をできるだけ短時間で通過させる」ことが衛生管理の基本となる。HACCPの管理計画では、この温度帯の通過時間を記録・管理する。
コールドチェーン/ Cold Chain
意味:生産・加工・保管・輸送・販売・消費に至るサプライチェーンの全行程を、途切れることなく低温で管理する物流システムのこと。日本語では「低温流通体系」と訳される。1965年に当時の科学技術庁が発表した「コールドチェーン勧告」が日本における普及のきっかけとなった。
使う場面・対象となる食品:冷蔵・冷凍が必要なすべての菓子が対象となる。洋生菓子メーカーがケーキを製造し、冷蔵トラックで卸売業者に納品し、小売店の冷蔵ショーケースで販売し、消費者が持ち帰り用の保冷剤とともに自宅の冷蔵庫に入れるまで──この一連の流れがコールドチェーンにあたる。鎖(チェーン)のどこか一か所でも温度管理が途切れると品質が損なわれるため、「チェーン」の名がついている。
保存温度帯変更/ Storage Temperature Zone Change
意味:食品の保存温度帯を、流通過程で変更すること。典型的なのは、冷凍(-15℃以下)で保管・輸送された菓子を、販売直前に解凍して冷蔵(10℃以下)に切り替えるケース。消費者庁の「加工食品の表示に関する共通Q&A」では、保存方法を変更した場合は新たな保存方法と、それに基づく賞味期限・消費期限を改めて設定し、表示し直さなければならないとされている。
使う場面・対象となる食品:フローズンチルド食品(後述)全般。ケーキ、プリン、エクレア、シュークリームなどの洋生菓子が代表的。スーパーマーケットやコンビニエンスストアのスイーツ売り場に並ぶ商品の多くが、この保存温度帯変更を経て販売されている。変更時には「保存方法」「新たな期限」「変更者(販売者・加工者など)」をラベルに記載する義務がある。
フローズンチルド食品/ Frozen-Chilled Food
意味:冷凍状態で保存・輸送し、販売の直前に解凍して冷蔵(チルド)温度帯で陳列・販売する食品のこと。略称として「フロチル」とも呼ばれる。法令上の定義はなく業界用語だが、食品流通の現場では広く浸透している。冷凍の長期保存性と、冷蔵の「そのまま食べられる」利便性を兼ね備えた流通形態として、近年対象品目が増え続けている。
使う場面・対象となる食品:コンビニやスーパーで販売されるケーキ、プリン、エクレア、タルトなどの洋生菓子の多くがこの方式で流通している。菓子メーカーは工場で製造後すぐに急速冷凍し、-18℃以下で保管・輸送する。店舗では入荷後に冷蔵庫で解凍し、10℃以下の売り場に陳列する。前述の「保存温度帯変更」のラベル対応が不可欠。
テンパリング/ Tempering(調温)
意味:チョコレートに含まれるカカオバター(ココアバター)の結晶を安定した型(V型結晶)に整えるための温度調整作業。日本語では「調温」ともいう。カカオバターにはI型からVI型まで複数の結晶形があり、口どけがよくツヤのある仕上がりになるのはV型結晶だけである。テンパリングでは、チョコレートを一度45〜50℃で完全に融解し、27℃前後まで冷却してからふたたび31〜32℃(ダークチョコレートの場合)に調整するという一連の温度操作を行う。
使う場面・対象となる食品:型抜きチョコレート(ボンボンショコラ)、チョコレートのコーティング、ガナッシュの仕上げ、装飾用のチョコレートパーツ制作など、チョコレートを扱うほぼすべての工程で必要となる技術。テンパリングが不十分だと、仕上がり後にファットブルーム(白い粉状の結晶が浮き出る現象)が発生したり、パキッとした食感が失われたりする。
ブルーム/ Bloom
意味:チョコレートの表面に白い粉状の斑点や膜が現れる現象の総称。大きく分けて「ファットブルーム」と「シュガーブルーム」の2種類がある。ファットブルームは、温度変化によりカカオバターの結晶が不安定化して表面に析出するもの。シュガーブルームは、結露などでチョコレート表面に水分が付着し、砂糖が溶け出して再結晶化するもの。いずれも食べても健康上の問題はないが、外観・食感の劣化につながるため商品価値を損ねる。
使う場面・対象となる食品:チョコレート菓子全般。保管温度が高すぎたり、温度変化の激しい環境に置かれたりすると発生しやすい。チョコレート製品を倉庫から出荷する際、外気温との温度差で結露が生じシュガーブルームが起きるケースもある。テンパリングの精度や保管温度管理がブルーム防止の鍵となる。
安全係数/ Safety Factor
意味:賞味期限や消費期限を設定する際に、保存試験で得られた「品質が保持される期間」に掛け合わせる1未満の係数。農林水産省・厚生労働省の「食品期限表示の設定のためのガイドライン」では、客観的な試験結果から得られた期間に1未満の安全係数を掛けて、実際に表示する期限を短めに設定することが基本とされている。一般的には0.7〜0.9程度が用いられ、品質が安定している乾燥品では0.8以上、水分活性の高い菓子ではより低い値を採用する場合がある。
使う場面・対象となる食品:すべての加工菓子の賞味期限・消費期限設定で使われる。たとえば、保存試験の結果30日間品質が保たれた焼き菓子に安全係数0.8を掛け、賞味期限を24日と設定するような運用が行われる。菓子メーカーの品質管理部門では、微生物試験・理化学試験・官能評価を組み合わせた保存試験を実施し、その結果に安全係数を掛けて期限を決定する。
水分活性/ Water Activity(Aw)
意味:食品中の水分のうち、微生物が利用できる自由水の割合を示す指標。純水のAwを1.00とし、数値が低いほど微生物が増殖しにくい。一般に、Awが0.60以下ではほとんどの微生物が増殖できず、0.85以下ではボツリヌス菌の産毒が抑制されるとされる。菓子の保存性を左右する根本的な指標であり、温度帯の選択にも直結する。
使う場面・対象となる食品:菓子の保存温度帯を決めるうえでの判断材料となる。干菓子や焼き菓子はAwが低く常温保存が可能。生クリームケーキやプリンのようにAwが高い菓子は冷蔵が必須。半生菓子(羊羹、カステラ、どら焼きなど)は中間的なAwを持ち、商品ごとの保存試験に基づいて適切な温度帯と期限が設定される。
HACCP/ Hazard Analysis and Critical Control Point
意味:食品の安全性を確保するため、原材料の受入れから最終製品の出荷まで、各工程で起こりうる危害要因(ハザード)を分析し、特に重要な管理点(CCP)を継続的に監視・記録する衛生管理手法。2021年6月以降、日本ではすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されている。菓子製造業も例外ではなく、厚生労働省から菓子製造業向けのHACCP手引書が公表されている。
使う場面・対象となる食品:菓子製造業では、たとえば「カスタードクリームの加熱殺菌温度と時間の管理」「焼き菓子の中心温度の確認」「冷凍庫の温度が-15℃以下に保たれているかの日常点検」などがCCPとして設定される。温度管理はHACCPにおける最も基本的な管理項目の一つであり、温度帯の知識はHACCPの運用に直結する。
加温/ Hot Holding, Heated
意味:食品を20℃以上の温かい状態で提供・保管する温度帯。物流では「加温帯」として3温度帯とは別に扱われることが多い。菓子業界では焼きたて・揚げたてを提供するケースで登場する。
使う場面・対象となる食品:焼きたてのワッフル、揚げたてのドーナツ、ホットパイ、たい焼き、今川焼きなど、温かい状態で販売される菓子全般。店舗のショーケースでホットプレートやフードウォーマーを使い、60℃以上を維持する場合は危険温度帯を回避できるが、中途半端な温度(20〜50℃)での長時間放置は衛生上のリスクが高まる。
氷菓/ Frozen Confection, Ice Confection
意味:乳固形分がアイスクリーム類の基準に満たない、あるいは乳成分を含まない凍結菓子のこと。食品衛生法の「食品、添加物等の規格基準」に成分規格・製造基準・保存基準が定められている。保存基準は「-15℃以下」。アイスクリーム類(アイスクリーム・アイスミルク・ラクトアイス)は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)の管轄だが、氷菓は食品衛生法の告示第370号で規定されている点が異なる。
使う場面・対象となる食品:かき氷、シャーベット、フローズンフルーツバー、アイスキャンディーなど。夏場の菓子製造・販売で欠かせないジャンル。製造にあたっては、原水が食品製造用水であること、原料を68℃で30分間以上の加熱殺菌(またはこれと同等以上の方法)に付すことなどの製造基準がある。
アイスクリーム類/ Ice Cream Products
意味:乳等省令に基づき、乳固形分と乳脂肪分の含有量によって「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の3つに分類される凍結菓子の総称。アイスクリームは乳固形分15.0%以上かつ乳脂肪分8.0%以上、アイスミルクは乳固形分10.0%以上かつ乳脂肪分3.0%以上、ラクトアイスは乳固形分3.0%以上と規定されている。保存温度について乳等省令には明文規定がないが、業界の自主基準として-18℃以下(流通段階では-25℃以下を推奨する場合もある)での管理が標準である。賞味期限の表示が省略できる食品のひとつとしても知られている。
使う場面・対象となる食品:アイスクリームを使ったパフェ、アイスケーキ、モナカアイスなど。パティスリーではアイスクリームを自家製するケースもあり、乳等省令の成分規格や製造基準(68℃で30分間の加熱殺菌、またはそれと同等以上の効力を有する方法)を遵守する必要がある。
鮮度保持剤/ Freshness Preservative Agent
意味:食品の品質劣化を防ぐために包装内に同封される資材の総称。菓子業界では主に「乾燥剤」と「脱酸素剤」の2種類が使い分けられている。乾燥剤は包装内の水分を吸収して湿気を防ぎ、クッキーやせんべいなどのサクサクした食感を維持する。脱酸素剤は包装内の酸素を吸収し、酸化による風味劣化やカビの発生を抑制する。温度帯管理と組み合わせることで、菓子の品質保持期間を延ばすことができる。
使う場面・対象となる食品:乾燥剤はクッキー、パイ、メレンゲ菓子、せんべいなど吸湿を嫌う焼き菓子に使用される。脱酸素剤はバウムクーヘン、どら焼き、マドレーヌなど、しっとり感を保ちたい菓子に向いている。両者は目的が異なるため、併用すると効果が相殺される場合があり、商品特性に応じた選択が求められる。
温度帯/ Three-Temperature-Zone System
意味:食品の保管・配送における温度管理を、常温(ドライ)・冷蔵(チルド)・冷凍(フローズン)の3つの区分で運用する物流システムの呼称。日本通運や大和物流といった物流大手が用いる標準的な分類で、対応する温度域はおおむね常温10〜20℃、冷蔵-5〜5℃、冷凍-15℃以下とされている(ただし企業によって幅がある)。ここに「定温」を加えて「4温度帯」とする場合もある。
使う場面・対象となる食品:菓子メーカーが物流会社と配送契約を結ぶ際、商品ごとにどの温度帯で輸送するかを指定する場面で使われる。たとえば、クッキーは常温便、生クリームケーキは冷蔵便、冷凍大福は冷凍便、チョコレートは定温便──というように仕分ける。
