用語名称(日本語、外国語)
乾燥焼き(かんそうやき)
外国語では特に定まった単独の専門用語はなく、英語圏では「low-temperature drying bake」や「drying in the oven」といった説明的な表現が使われることがあります。
フランス語の製菓用語では「séchage au four」(セシャージュ・オ・フール、炉での乾燥)のような言い回しで表される場合がありますが、日常的には「乾燥焼き」として日本語の製菓現場で定着しています。
意味
乾燥焼きとは、オーブンを使って低温で長時間加熱し、生地や菓子に焼き色をほとんど付けずに水分をゆっくりと飛ばして乾燥させる工程を指します。通常の焼き上げとは異なり、目的は「焼く」ことではなく「乾燥させる」ことです。温度は一般的には50℃から150℃程度に抑え、1時間から数時間かけることが多く、表面が白く残るか淡い色合いを保ちながら、中までパリッとした軽い食感に仕上げます。
この方法は、急激な高温で焼くと生地が焦げたり、内部の水分が一気に抜けすぎてひび割れが生じたりするのを防ぎます。メレンゲのように泡立てた卵白を主材料とする場合、気泡の構造を崩さずに水分だけを除去できる点が大きな特徴です。家庭用オーブンでも実践可能ですが、温度制御が安定している業務用オーブンの方がムラなく仕上がりやすい傾向があります。
用語を使う場面・対象となる食品
乾燥焼きは、主に水分を多く含む生地をサクサクとした軽い食感に仕上げたいときに登場します。特にメレンゲをベースにしたお菓子でよく用いられます。例えば、ムラング・フランセーズ(フランス風メレンゲ)やムラング・スイス(スイス風メレンゲ)を絞り出した後、100℃前後の低温で1〜3時間かけて焼くことで、純白で軽やかなメレンゲ菓子が完成します。これを土台にクリームやフルーツをのせたパヴロヴァなども、乾燥焼きでメレンゲ部分を作ることが一般的です。
また、マカロンの焼成工程でも一部で温度を下げて乾燥焼きを組み合わせるレシピが見られます。最初にやや高い温度で「ピエ」(足)と呼ばれる部分を立ち上げた後、温度を落として内部を乾燥させる調整に使います。ビスコッティのような二度焼きする焼き菓子では、1回目の焼き後にスライスして低温で乾燥焼きを行い、さらなるカリッとした食感を加えるケースもあります。ラスクを作る際にも、パンをスライスした後に低温で長時間乾燥焼きして水分を抜く方法が有効です。
家庭でお菓子を作る場面では、卵白が余ったときにメレンゲクッキーやメレンゲ菓子を作るレシピでこの用語が出てきます。プロのパティシエの現場では、モンブランの栗ペーストの下に敷くメレンゲベースや、長期保存を目的とした乾いた焼き菓子(フール・セックと呼ばれるカテゴリーの一部)の仕上げに活用されます。湿度が高い日には乾燥時間が長くなりやすいため、晴れた日に作業するのがコツの一つです。
乾燥焼きを上手に取り入れると、食感が軽やかになり、保存性も高まります。ただし、オーブンの機種によって温度のばらつきが出やすいので、最初は短時間で様子を確認しながら調整すると良いでしょう。
