お菓子の名前(日本語)

片くりもの(片栗物)

別称:かたくり物、片栗製、片栗細工

お菓子の名前(外国語)

Katakuri-mono(英語表記)

※海外での固有の呼称は定着しておらず、”Katakuri starch dry confection” や “Japanese pressed starch sweet” などと説明的に訳されることがある。

お菓子の分類

和菓子 > 干菓子(ひがし) > 打ち物(打菓子)

水分量10%以下の干菓子に属し、製法上は「打ち物」に分類される。全国和菓子協会の分類では、打菓子の主な製品として「落雁(らくがん)」「懐中しるこ」「雲きん種」とともに「片くりもの」が挙げられている。

どんなお菓子

片くりものとは、砂糖を主原料とし、片栗粉(かたくり粉)やすりおろした山芋(つくね芋)などを加えて固くこね合わせ、木型に詰めて打ち出して成形する干菓子の一種である。見た目は落雁に似た白く上品な菓子であり、口に含むと落雁とはまた異なる、きめ細かくほろりと崩れるような繊細な食感が特徴的である。

干菓子の大分類である「打ち物」には落雁や和三盆糖の型物なども含まれるが、片くりものが他の打ち物と異なるのは、主たる粉類として片栗粉(澱粉)を用いる点にある。落雁が寒梅粉やみじん粉といったもち米系の粉を基本とするのに対し、片くりものは片栗粉の粒子の細かさと、木型に押した際に模様がくっきりと美しく出る性質を活かして作られる。そのため、鯛や海老、花鳥風月といった精緻な細工が求められる飾り菓子や雛菓子に好んで用いられてきた。

とりわけ山形県酒田市の老舗「御菓子司小松屋」(天保10年・1839年創業、2019年閉店)が手がけた「片栗細工の雛菓子(飾り菓子)」は、片くりもの文化の代表格として知られている。北前船によってもたらされた上方(京都・大阪)の菓子製法技術をルーツとし、湊町酒田の風土に密着した独自の発展を遂げたものである。

茶席においては薄茶(抹茶)の添え菓子として干菓子が供されるが、片くりものはその上品な甘さと口溶けの良さから、茶道の場で珍重されてきた。また、お盆や法事、雛祭りなどの行事菓子としても重要な役割を果たしている。

お菓子の名前の由来

「片くりもの」の名は、その主原料である「片栗粉(かたくりこ)」に由来する。

もともと片栗粉とは、ユリ科の多年草である「カタクリ(片栗)」の鱗茎(球根)から採取した澱粉のことを指していた。カタクリは日本の山野に自生する春の花として知られ、薄紫色の可憐な花を咲かせる植物である。その名前の語源については諸説あり、花の姿が「傾いた籠(かたむいたかご)」に似ていることから「かたかご(堅香子)」と呼ばれたのが転じたとする説や、葉に鹿子模様があることから「片葉鹿子(かたはかのこ)」に由来するとする説がある。また、カタクリの鱗茎が栗の片割れに似ていることから「片栗」と名づけられたという説もある。

このカタクリの澱粉を主に用いて作られた打ち菓子を総称して「片くりもの(片栗物)」と呼ぶようになった。京阪(京都・大阪)地方では「片栗製(かたくりせい)」とも称され、江戸時代後期に編纂された製菓書『日本製菓集』には「月平種」の別名で紹介されている箇所もあり、「月平種とは京阪にて之を片栗製と稱す」と記されている。

なお、現在市販されている「片栗粉」の原料は、カタクリの自生数が激減したことと、明治時代以降の北海道開拓に伴うジャガイモ(馬鈴薯)の大量栽培を受けて、ほぼ全てがジャガイモ由来の馬鈴薯澱粉に置き換わっている。したがって、現代の片くりものの多くも馬鈴薯澱粉を使用しているが、「片くりもの」という名前だけは、かつてのカタクリ由来の時代からそのまま受け継がれている。

お菓子の歴史

片くりものの歴史は、和菓子全体の発展史、とりわけ「打ち物」の歴史と深く結びついている。

干菓子そのものの起源は奈良時代にまでさかのぼるとされ、当時は木の実を乾燥させたものが干菓子の原型であった。その後、江戸時代に入ると茶の湯の隆盛にともなって干菓子が飛躍的に発展し、落雁をはじめとする「打ち物」の技術が洗練されていった。

片栗粉を菓子に利用する技術が確立されたのは江戸時代中期から後期にかけてと考えられている。カタクリの澱粉は当初、薬用(下痢止め・病人食・幼児食)として珍重されていたが、その粒子の細かさや加熱時の透明度の高さ、そして型押し時に模様がくっきり出る特性が製菓にも適していることが見出され、干菓子の材料として取り入れられるようになった。南部藩(現在の岩手県)は寛文年間(1661〜1673年)からカタクリの澱粉を幕府に献上しており、やがてその澱粉が菓子職人の手にも渡るようになったと推測される。

江戸時代後期から明治にかけて、片くりもの文化がとりわけ発達したのが、北前船の寄港地として栄えた山形県酒田市である。上方(京都・大阪)から北前船によってもたらされた高度な菓子技術が酒田に根付き、片栗粉を用いた精緻な飾り菓子が誕生した。天保10年(1839年)に創業した「御菓子司小松屋」は、京都の職人が彫った桜製の木型を用い、両面木型による立体的な片栗細工の雛菓子を作り出した。鯛の鱗や貝の裏側など、目に見えない箇所にまで精緻な彫りを施した木型で打ち出される飾り菓子は、工芸品としての美しさを誇り、その技術は全国的にも類を見ないものであった。

明治時代以降、カタクリの自生数が減少し、片栗粉の原料がジャガイモ澱粉に移行したことで、片くりものの材料も次第に変化した。しかし、「片くりもの」という菓子名と木型を使った伝統的な製法は各地で守り続けられた。昭和・平成に入ると和菓子離れや職人の高齢化により、片くりもの専門の職人は減少の一途をたどった。酒田の小松屋も2019年に180余年の歴史に幕を下ろしたが、元店主による制作体験教室が継続されるなど、技術継承の取り組みが続けられている。

発祥の地

片くりものの発祥を一つの土地に特定することは難しい。干菓子の打ち物自体は京都を中心とする上方文化圏で発展したものであり、片栗粉を用いた菓子の技術も京阪地方で生まれたと考えられている。前述の『日本製菓集』に「京阪にて之を片栗製と稱す」と記されていることからも、京都・大阪が片くりものの発祥地あるいは技術の中心地であったことがうかがえる。

一方で、片くりものの文化が最も華やかに花開いたのは、北前船交易で上方文化を吸収した山形県酒田市をはじめとする庄内地方である。酒田では雛祭りの飾り菓子として片栗細工が不可欠の存在となり、「湊酒田の飾り菓子」として独自の文化を形成した。

また、カタクリの澱粉の産地という意味では、東北地方(特に岩手県・秋田県の山間部)が片栗粉の本来の故郷であり、片くりものの原材料面での源流ということができる。

有名な商品(メーカー名と商品名と販売価格)

片くりものは大量生産品というよりも、地域の和菓子店が季節の行事に合わせて少量ずつ手作りするものが多い。そのため、全国流通する著名なブランド商品は限られているが、以下に代表的なものを挙げる。

片くりもの単体での全国的な定番商品は現在きわめて少なく、多くは茶席菓子や行事菓子として個別の和菓子店で注文を受けて製造される形態が主流である。落雁や和三盆の型物と混同されがちだが、片栗粉を主材料とする点で区別される。なお、広い意味での「打ち物」や「盆菓子」として、各地の和菓子店で「片栗粉製の干菓子」が季節限定で販売されることがある。価格は1個あたり100〜500円程度、飾り菓子のセットであれば2,000〜5,000円程度が目安となる。

かつて酒田の小松屋が製造していた「かたくり細工の雛菓子」は、1セット数千円で販売され、その芸術的な美しさから雑誌やメディアにたびたび取り上げられた。現在は同店は閉店しているが、元店主が樹脂粘土を使った制作体験教室を開催している(参加費1,500円程度)。

味や食感などの特徴

片くりものの最大の特徴は、片栗粉ならではの粒子の極めて細かいきめ細やかな質感にある。

口に入れた瞬間は、乾燥した干菓子らしいカリッとした硬さを感じるが、唾液に触れるとほろほろと繊細に崩れていく。落雁がもち米由来の粉のほのかな香ばしさを持つのに対し、片くりものは澱粉特有のあっさりとした風味で、砂糖の上品な甘さがより直接的に舌に伝わる。甘さの中にくどさはなく、後味はすっきりとしている。

山芋(つくね芋)を加えたタイプでは、しっとりとした口当たりが加わり、乾燥させた菓子でありながらどこかなめらかな印象を受ける。食紅や抹茶で繊細に着色されたものは、味覚だけでなく視覚にも訴える美しさを持つ。

茶席で供された場合、濃茶(こいちゃ)よりも薄茶(うすちゃ)との相性が特に良いとされる。砂糖の甘さが抹茶の渋みを優しく和らげ、口の中で溶けた片くりものの余韻が抹茶と融合する瞬間は、まさに和菓子と茶の醍醐味である。

どんな場面やどんな人におすすめ

片くりものは、以下のような場面や人に特におすすめできる。

茶道をたしなむ方には、薄茶の添え菓子として申し分のない上品さと口溶けの良さを持つ片くりものは定番の選択肢となる。主菓子(おもがし)として生菓子を供した後、二服目の薄茶に添える干菓子として理想的である。

雛祭りや桃の節句を大切にしたいご家庭には、片栗細工の飾り菓子がぴったりである。鯛や海老、梅に桜といった縁起の良いモチーフの片くりものは、雛壇に飾ることで華やかさを添え、行事の後には実際に食べることもできる。

お盆やお彼岸、法事などの仏事の場でも、お供え菓子として落雁と並んで片くりものが用いられる。水分が少なく日持ちするため、仏壇へのお供えにも適している。

甘いものが好きだが重すぎるものは苦手という方にも向いている。片くりものは小さな一口サイズで、口の中でさっと溶けるため、胃への負担が少ない。病中見舞いや高齢の方への贈り物としても気の利いた選択となるだろう。

和菓子の世界を深く知りたいという方、特に落雁と片くりものの違いを味わい比べてみたいという通の方にも、ぜひ手に取っていただきたい菓子である。

材料

片くりものの基本的な材料は以下の通りである。

材料

片栗粉(現在は馬鈴薯澱粉が主流)、砂糖(上白糖、粉砂糖、和三盆糖など)、しとり用のシロップ(水飴を水で伸ばしたもの)が挙げられる。副材料・風味づけとしては、山芋(つくね芋)のすりおろし、新粉(米の粉)、寒梅粉(少量加えることもある)、着色用の食紅・抹茶などが用いられる。

酒田の小松屋では、片栗粉に粉砂糖・新粉(米の粉)・山芋の粉を混ぜ、水を加えて練り上げて生地としていた。江戸時代の製菓書に記された配合では、「極上和三盆」を砂糖として用い、これに片栗粉を合わせて練るとされている。

なお、かつて使われていた本来のカタクリ由来の片栗粉は、現在では非常に入手が困難であり、一部の専門的な和菓子店や山間部の伝統的な製造者のもとでしか手に入らない。価格も馬鈴薯澱粉の数十倍に上ることがある。

レシピ

家庭でも作れる片くりものの基本的なレシピを紹介する。

材料(約20〜25個分)

片栗粉 30g、粉砂糖 100g(上白糖を粉末にしたものでも可)、しとり(水飴 小さじ1+水 小さじ1を混ぜたもの)、食紅(必要に応じて微量)、打ち粉用の片栗粉(少量)

作り方

  1. まず、ボウルに粉砂糖を入れ、しとり(水飴を水で溶いたもの)を加えて指先でよくすり混ぜる。砂糖全体にしっとりと水分が行き渡るまで丁寧に混ぜることが重要である。
  2. 片栗粉をふるい入れて全体を均一に混ぜ合わせる。生地が粘土くらいの硬さになるよう、水分量を微調整する。水分が足りなければ霧吹きでごく少量の水を加え、多すぎればしばらく置いて乾燥させる。着色する場合は、このタイミングで食紅をごく少量溶かした水を加えて練り込む。
  3. 木型(菓子型)に打ち粉として片栗粉を薄くはたき、生地を木型にしっかりと押し込む。
  4. 木型の裏面をトンと打って菓子を取り出す。
    取り出した菓子をクッキングシートの上に並べ、蒸し器で極く短時間(数秒〜10秒程度)蒸気を当てて表面を固める。蒸気の当てすぎは菓子が崩れる原因になるため注意が必要である。
  5. 風通しの良い場所で半日〜1日ほど乾燥させて完成。

木型がない場合は、シリコン製のチョコレート型やクッキー型で代用することも可能である。蒸気を当てる工程は、濡れ布巾の上に菓子を一瞬だけ伏せて蒸気を吸わせるという方法でも代替できる。

販売温度帯

片くりものは水分量が10%以下の干菓子であるため、常温での販売・保存が基本である。冷蔵や冷凍の必要はなく、直射日光と高温多湿を避ければ常温で長期間保存できる。店頭では常温の棚や木箱に入れて陳列されることが多い。

主な流通形態

片くりものの流通形態は、大きく分けて以下のようなパターンがある。

最も一般的なのは、和菓子専門店での店頭販売である。茶席用の干菓子セットの一部として、あるいは季節の行事菓子(雛菓子、盆菓子など)として販売される。個別包装ではなく、紙箱や木箱に詰め合わされた形態が多い。通信販売(オンラインショップ)で取り扱う和菓子店も一部存在するが、落雁や和三盆の型物に比べると取り扱い店舗数は少ない。百貨店の和菓子売り場では、特に雛祭りやお盆などの季節になると特設コーナーで販売されることがある。業務用としては、茶道の家元や教室、寺社仏閣への納入品として流通する場合もある。

価格帯

片くりものの価格は、菓子のサイズや精緻さ、使用する砂糖の種類、製造者の技術力などによって幅がある。

一般的な小ぶりの片くりもの(1個あたり)は100円〜300円程度である。和三盆糖を使用した上質なものは1個300円〜500円ほどとなる。茶席用の詰め合わせ(8〜12個入り)は1,000円〜3,000円程度、飾り菓子(雛菓子セット)などの工芸的な片栗細工は2,000円〜10,000円以上となることもある。

日持ち

片くりものは干菓子の中でも特に水分が少なく、適切に保存すれば比較的長い日持ちが期待できる。

一般的な目安として、製造日から2週間〜1ヶ月程度が賞味期限として設定されることが多い。ただし、飾り菓子用の片くりもの(雛菓子など)は、直接食べることよりも飾ることを主目的として作られるため、さらに長期間(数ヶ月〜半年程度)形状を保つことができるものもある。もっとも、長期間飾った後の菓子は風味が落ちるため、食用として楽しむならば早めに食べるに越したことはない。保存の際は、高温多湿を避け、密封容器に乾燥剤とともに入れるのが理想的である。湿気を吸うと表面がべたついたり、カビが生じたりする原因となる。

アレンジ・バリエーション

片くりものは伝統的な干菓子でありながら、素材や製法の工夫によってさまざまなアレンジが楽しめる。

味のバリエーション
抹茶を生地に練り込んだ「抹茶片くりもの」は定番のアレンジであり、鮮やかな緑色と抹茶のほろ苦さが加わる。きな粉を配合した「きな粉片くりもの」は、大豆の香ばしさがアクセントとなり、素朴な味わいが魅力である。柚子の皮を乾燥させて粉末にしたものを加えると、爽やかな柑橘の香りが広がる「柚子片くりもの」となる。紫芋やかぼちゃなどの野菜パウダーを加えて、天然の色味と風味を楽しむ現代的なアレンジも見られる。

形や意匠のバリエーション
伝統的な木型を使った花鳥風月モチーフ(梅、桜、紅葉、菊、鶴、亀など)のほか、現代的なデザインの型を使ったハート形や動物モチーフも若い世代に人気がある。雛菓子としては鯛、海老、宝船、打ち出の小槌など縁起物が中心となる。

組み合わせや食べ方のアレンジ
片くりものを温かいお湯に溶かすと、即席の「くず湯風」ドリンクとして楽しむことができる。砕いた片くりものをアイスクリームやヨーグルトのトッピングにすると、和洋折衷のデザートに変身する。コーヒーや紅茶に砂糖代わりとして溶かし入れるという活用法もある。

近縁の干菓子との関係としては、「雲錦(うんきん)」はすりおろしたつくね芋に砂糖を混ぜた干菓子であり、片くりものとは兄弟のような存在である。片栗粉と山芋の配合比率を変えることで、片くりものから雲錦へのグラデーションのような菓子を作ることもできる。また、懐中汁粉は乾燥させた餡やかたくり粉を最中の皮で包んだものであり、片くりものの応用形態とも言える。

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