用語名称(日本語、外国語)
五月雨(さみだれ)
Samidare(英語では「May rain」や「early summer rain」と訳されることもありますが、和菓子の文脈ではそのまま「samidare」と表記されるのが一般的です)
意味
五月雨とは、旧暦の五月(現代の暦でいうと六月頃)に降り続く長雨を指す言葉です。昔の日本では「さつき」の雨、つまり梅雨のしとしととした情景を表し、文学や俳句の季語としても長く愛されてきました。雨が降り続いて水が垂れる様子から「さみだれ」と読み、晴れ間の少ない湿った空気感や、じっくりと染み込むような雨の風情を込めています。
この言葉は単なる天候の名前ではなく、季節の上生菓子に付けられる銘(名前)として使われます。雨粒が落ちる様子、傘の模様、水面の波紋、紫陽花が雨に濡れた姿など、梅雨の情緒を抽象的または具象的に形にしたデザインが特徴です。職人たちは餡や生地を染め分けたり、型抜きをしたりして、雨の静かな美しさを小さな菓子の中に閉じ込めます。派手さはないけれど、じんわりと味わうような、和菓子らしい繊細さがここにあります。
用語を使う場面・対象となる食品
この用語は、主に五月下旬から六月にかけての茶道の席や、季節限定の和菓子売り場で登場します。梅雨入り前後の湿った空気に合わせて、客人に雨の風情を楽しんでもらうための季節菓子として選ばれるのです。
日常のお茶請けというより、特別な茶会や贈答、和菓子屋の月替わり商品として親しまれています。
対象となる食品はほとんどが上生菓子(じょうなまがし)です。
具体例を挙げると、菊家では青紫・白・黄色に染め分けた煉切で小豆こし餡を包み、蛇の目傘の木型で押し抜いた後に錦玉の雨粒を散らしたものがあります。このデザインは紫陽花色の傘と雨粒で、梅雨の風景をそのまま切り取ったようです。
一方、とらやでは白い湿粉に黄色の羊羹を挟んだシンプルな層状の菓子で、雨の情緒を抽象的に表現しています。また、別の店では羽二重餅でこし餡を巻いた巻物状のものに赤や紫の羊羹を挟み、雨に霞む紫陽花を思わせる仕立てにするケースもあります。
このように、五月雨という名前は一つの固定レシピではなく、各菓子職人がその店の技と感性でアレンジする柔軟な銘です。
共通するのは、梅雨の柔らかな雨を和菓子で味わうという、日本の季節を慈しむ心です。六月になると店頭に並ぶのを見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。雨の音を聞きながら味わうと、格別な味わいになります。
