お菓子の名前(日本語)
求肥(ぎゅうひ)
別表記:牛皮、牛肥
お菓子の名前(外国語)
英語:Gyuhi(Japanese soft rice cake / Sweet mochi dough)
※海外では「Mochi」の一種として紹介されることが多く、”Gyuhi – a type of soft Japanese confectionery made with rice flour” と説明される。トルコの「ターキッシュ・ディライト(ロクム)」に食感が近いとされることもある。
お菓子の分類
和菓子/餅菓子(もち菓子)/生菓子(水分量30%以上の場合)または半生菓子(水分量10〜30%の場合)
※求肥は水分量によって「生菓子の練り物」にも「半生菓子の餅物」にも分類される。全国和菓子協会の分類では、製法・生地の区分上「もち菓子」に該当する。
どんなお菓子
求肥(ぎゅうひ)とは、白玉粉または餅粉(もち粉)に砂糖や水飴を加え、加熱しながら練り上げて作る、やわらかくもちもちとした和菓子の素材であり、それ自体が独立した菓子としても食される伝統的な餅菓子です。
一見するとお餅のように見えますが、お餅とは根本的に異なる特性を持っています。お餅は蒸したもち米を搗(つ)くことで粘りを出すのに対し、求肥は粉にしたもち米に水と大量の砂糖を加え、火にかけながら練ることで粘りと弾力を生み出します。この製法上の違いが、求肥ならではの最大の特徴である「時間が経っても固くならない」という性質を生んでいます。
一般的な配合では、白玉粉(または餅粉)1に対して砂糖2、水飴1程度の割合で使用されます。砂糖や水飴に含まれる糖は、でんぷんと一緒になると保水性が非常に高くなり、水分をしっかり抱え込んで維持し続けます。そのため求肥は製造してから数日経過しても柔らかいままで、さらには冷凍しても固くなりにくいという驚くべき特性を持っています。この性質を活かして、大福の皮やあんみつのトッピング、アイスクリームを包む菓子など、常温から冷凍まで幅広い温度帯の菓子に利用されています。
求肥は和菓子の世界では決して派手な存在ではありませんが、その柔軟性と汎用性の高さから「和菓子の縁の下の力持ち」とも呼べる、なくてはならない素材です。練り切りのつなぎとして使われたり、餡を包む生地として使われたり、それ自体が主役の菓子になったりと、その活躍の場は極めて広いのです。
お菓子の名前の由来
「求肥」という名前には、実に興味深い歴史的背景が隠されています。
もともとこの菓子は、中国から日本に伝来した当初、「牛皮(ぎゅうひ)」という漢字で表記されていました。名前の由来については諸説ありますが、もっとも広く知られているのは以下の二つの説です。
第一の説は、当時の求肥は現在のように白くはなかったことに由来するものです。平安時代の日本にはまだ精製された白砂糖が普及しておらず、甘味料としては黒砂糖が用いられていました。また、もち米も玄米が主体だったため、当時の求肥は黒みがかった色をしていました。その見た目と、やわらかく伸びる質感が牛のなめし皮に似ていたことから「牛皮」と呼ばれるようになったというものです。
第二の説は、中国における原型との関連です。中国には古くから祭祀の際に奉納される「牛脾(ぎゅうひ)」という食物があり、これに似せて作られた餅菓子が「牛脾糖(ぎゅうひとう)」と呼ばれていました。砂糖に澱粉を加えて煮て作るこの飴菓子が日本に伝わった際、「牛皮」の字が当てられたとする説です。
いずれの説においても、日本で「牛皮」が「求肥」に改められた経緯には共通の事情があります。日本では仏教思想の影響により、7世紀頃から明治時代に至るまで、公には獣肉食が禁じられていました。帝の命により、あるいは仏教的な忌避感から、「牛」の字がついた食べ物を口にすることが憚られたのです。江戸時代に編纂された百科事典『和漢三才図会』にも「わが国ではかつて畜肉を食べることを忌む。それで字も求肥と換えている」と記されています。
こうして「牛皮」は「求肥」へと改字されました。「求肥」の「肥」には「豊かになる」という意味があることから、「豊かさを求める」という、むしろ縁起のよい名前に生まれ変わったとも言えるでしょう。なお、「牛皮」「牛肥」の表記も現在に至るまで併用されることがあります。
お菓子の歴史
求肥の歴史は非常に古く、平安時代(794年〜1185年)に中国大陸から日本へ伝来したとされています。
その原型は、中国で祭祀の際に供えられていた「牛脾糖」と呼ばれる菓子にあるとされます。砂糖に澱粉を加えて煮て作るこの飴状の菓子が、遣唐使や渡来人を通じて日本に伝わったと考えられています。
伝来当初の求肥は、前述のとおり玄米と黒砂糖を原料としていたため、現在のような白く美しい姿とは異なり、浅黒い色合いをしていました。その後、室町時代(1336年〜1573年)になると京都を中心に求肥の製造が盛んに行われるようになりました。茶の湯の文化が花開いた室町時代から安土桃山時代にかけて、求肥は茶席で供される菓子の重要な素材として重宝されるようになります。
江戸時代(1603年〜1868年)に入ると、求肥の製造技術はさらに発展し、江戸(東京)でも広く作られるようになりました。白砂糖の普及にともない、求肥は現在のような白く艶やかな見た目に変化していきます。同時に、求肥を使ったさまざまな菓子が考案されるようになり、鶯餅、練り切りの生地、あんみつのトッピングなど、和菓子の世界における求肥の用途は飛躍的に広がりました。
明治時代以降も求肥の進化は続きます。近代的な精糖技術の発展により、より精製度の高い砂糖や水飴が使用できるようになり、求肥の品質は一段と向上しました。昭和に入ると、1981年にロッテが発売した「雪見だいふく」のように、求肥をアイスクリームの皮として使うという革新的な商品が登場し、求肥は和菓子の枠を超えた広がりを見せるようになります。
現代においても、求肥の可能性はさらに拡大し続けています。グミの原料として使われたり、洋菓子とのコラボレーション商品が生まれたりと、伝統と革新の両面で存在感を発揮し続けています。
発祥の地
求肥の原型である「牛脾糖」は中国に起源を持ちます。これが平安時代に日本に伝来し、以降は日本独自の発展を遂げました。
日本国内での発展の歴史を見ると、室町時代には京都が求肥製造の中心地でした。茶の湯文化と密接に結びついた京菓子の伝統のなかで、求肥は洗練されていきます。やがて江戸時代には江戸(東京)にも伝わり、全国的に普及していきました。
現在では日本全国で製造されていますが、求肥を主体とした銘菓としてとりわけ有名なのは福井県の「羽二重餅」です。福井県は高級絹織物「羽二重織」の産地であり、その絹のようになめらかな求肥菓子に織物の名を冠したもので、福井を代表する銘菓となっています。そのほか、岡山県の吉備団子、熊本県の朝鮮飴や誉の陣太鼓、鹿児島県のボンタンアメなど、求肥を使った銘菓は全国各地に存在します。
有名な商品(メーカー名と商品名と販売価格)
求肥を使った菓子は和菓子から洋菓子、アイスクリームまで多岐にわたります。以下に代表的な商品を紹介します(価格は参考価格であり、時期や販売場所によって変動する場合があります)。
羽二重餅總本舗 松岡軒「羽二重餅」
福井県を代表する求肥菓子の元祖とされる銘品です。蒸したもち米の粉に砂糖と水飴を練り上げたシンプルな求肥そのもので、絹の羽二重織のようなきめ細やかさとなめらかさが特徴です。6袋入りで約1,048円(税込)から販売されています。
お菓子の香梅「誉の陣太鼓」
熊本県の銘菓です。一般的な求肥菓子とは逆に、あんこで求肥を包んだ独特の構造を持ち、北海道産大納言小豆の餡と柔らかな求肥の組み合わせが絶妙です。4個入りで約885円(税込)程度です。
ロッテ「雪見だいふく」
求肥(もち)でバニラアイスを包んだ画期的な商品で、1981年の発売以来、国民的なアイス菓子として親しまれています。冷凍しても柔らかさを保つ求肥の特性を最大限に活かした商品です。希望小売価格は194円(税込)です。
セイカ食品「ボンタンアメ」
鹿児島県発祥の求肥菓子で、もち米と水飴を主原料とし、ボンタン(ブンタン)の果汁で風味づけしたものです。オブラートに包まれた柔らかなアメは、1924年の発売以来100年以上愛され続けています。10粒入りで希望小売価格130円(税抜)です。
廣榮堂本店「元祖きびだんご」
岡山県の銘菓です。もち粉にきびの粉を混ぜて求肥に仕立てた吉備団子は、桃太郎伝説のお土産としても全国的に知られています。10個入りで約540円(税込)程度から販売されています。
味や食感などの特徴
求肥の最大の魅力は、何と言ってもそのやわらかくもちもちとした食感にあります。口に入れた瞬間に感じるしっとりとしたなめらかさ、噛むほどにじんわりと広がるほのかな甘み、そしてどこまでも伸びるような弾力——これらが三位一体となって、ほかの菓子にはない独特の食体験を生み出しています。
味わいの面では、砂糖と水飴によるやさしい甘さが基本です。素材そのものの主張は控えめで、餡やフルーツ、抹茶など、合わせる素材の風味を引き立てる名脇役としての性格を持っています。一方で、求肥単体で味わった場合には、もち米由来のほのかな香りと上品な甘みが口いっぱいに広がり、素朴ながらも奥行きのある味わいを楽しむことができます。
食感に関して、求肥とお餅の決定的な違いは「時間が経っても固くならない」という点です。普通のお餅は時間が経つとでんぷんの老化(β化)によって急速に固くなりますが、求肥は大量の砂糖と水飴がでんぷんの老化を遅らせるため、製造から数日経っても柔らかさを保ちます。さらに冷凍しても固くなりにくいという特性があり、この点がアイスクリームを包む菓子などへの応用を可能にしています。
また、製法によっても食感には微妙な違いが生まれます。「水練り」で作った求肥はなめらかで伸びがよく、「茹で練り」はよりいっそう柔らかな仕上がりに、「蒸し練り」はやや弾力があり日持ちがしやすいという特徴があります。
どんな場面やどんな人におすすめ
求肥は、そのやわらかさと上品な甘みから、幅広い場面と多様な人々に愛されるお菓子です。
茶道の席では、求肥を使った菓子は欠かせない存在です。練り切りや鶯餅など、季節の意匠を凝らした上生菓子の多くに求肥が用いられており、抹茶や煎茶との相性は抜群です。お茶を嗜む方へのお持たせや手土産として、求肥菓子は品格のある選択と言えます。
お子様からご年配の方まで、年齢を問わずおすすめできるのも求肥菓子の大きな魅力です。柔らかいため歯が弱い方でも食べやすく、甘すぎず上品な味わいは小さな子どもにも好まれます。ただし、もちもちとした食感があるため、小さなお子様やご高齢の方が召し上がる際には、小さく切って少量ずつ食べるなどの配慮が必要です。
旅先のお土産としても求肥菓子は最適です。福井の羽二重餅、岡山の吉備団子、熊本の誉の陣太鼓など、各地の銘菓は旅の思い出を分かち合う贈り物として喜ばれます。
季節の行事にも求肥は華を添えます。正月の菱葩餅(はなびらもち)、春の鶯餅、夏のあんみつに添える求肥、秋冬の大福など、四季折々の和菓子に求肥は姿を変えて登場します。日本の歳時記と深く結びついた菓子素材であると言えるでしょう。
さらに近年では、フルーツ大福やアイスもちなど、洋菓子との融合を楽しむ新しいスタイルの求肥菓子も増えており、和菓子に馴染みが薄い若い世代にも親しまれています。
材料
求肥の材料は非常にシンプルです。基本的な原材料は以下のとおりです。
主原料となるのは白玉粉または餅粉(もち粉)です。どちらももち米から作られる粉ですが、白玉粉はもち米を水につけてから挽き、沈殿物を乾燥させたもので粒子が細かく、餅粉はもち米を乾燥させてから挽いたもので、やや粗い粒子を持ちます。白玉粉を使うとよりなめらかな仕上がりに、餅粉を使うとしっかりとした弾力のある仕上がりになります。
甘みを加えるのは上白糖(またはグラニュー糖)と水飴です。砂糖は甘みを与えるだけでなく、求肥の柔らかさを長時間保つ保水効果を担う重要な役割を果たします。水飴は艶と粘りを加え、口当たりをなめらかにします。
そして水。白玉粉を溶かし、生地の固さを調整するために使います。
仕上げに使う片栗粉(またはコーンスターチ)は、練り上がった求肥がくっつかないようにまぶす「手粉」「餅とり粉」として使用します。
基本の材料はこれだけです。このシンプルな材料から、あの独特の弾力と柔らかさ、上品な甘みが生み出されるのですから、求肥はまさに「引き算の美学」が息づく和菓子だと言えるでしょう。
レシピ
ここでは、家庭でも手軽に作れる電子レンジを使った基本の求肥レシピを紹介します。
【材料(約350g分)】
白玉粉:100g、上白糖:100〜200g(お好みで調整。甘さ控えめなら100g、しっかり甘くて日持ちさせたいなら200g)、水:200ml、水飴:大さじ1(あれば。なくても可)、片栗粉:適量(手粉用)
【作り方】
- 耐熱ボウルに白玉粉を入れ、水を少しずつ加えながらダマがなくなるまでよく混ぜます。この時点で砂糖も加え、均一になるまで混ぜ合わせます。水飴がある場合はここで加えます。
- ラップをふんわりとかけ、電子レンジ(600W)で2分間加熱します。取り出したら、ゴムベラまたは木べらで全体をしっかりと混ぜます。この段階ではまだムラがありますが、気にせず手早く混ぜてください。
- 再びラップをかけ、電子レンジで1分30秒〜2分間加熱します。取り出して再度よく練ります。生地に透明感が出て、もちもちとした弾力が感じられるようになったら加熱は完了です。まだ粉っぽさが残る場合は、30秒ずつ追加加熱して様子を見てください。
- バットやまな板に片栗粉をたっぷり広げ、その上に練り上がった求肥を取り出します。求肥の表面にも片栗粉をまぶし、手にも片栗粉をつけながら、好みの大きさに切り分けたり、形を整えたりします。
- できあがった求肥は、そのまま食べてもよし、あんこを包んで大福にしてもよし、フルーツを包んでフルーツ大福にしてもよし。自由な発想でアレンジを楽しんでください。
なお、プロの和菓子職人が作る場合は、鍋を直火にかけて練る「水練り」が基本の製法です。白玉粉(または餅粉)1に対して水2、砂糖2の配合(「倍割求肥」と呼ばれる)が標準的で、鍋の中で力強く練り続けることで、きめ細やかでなめらかな求肥が仕上がります。
販売温度帯
求肥および求肥を使った菓子は、その種類によって販売温度帯が幅広く設定されています。
常温で販売されるものが最も一般的です。羽二重餅、吉備団子、ボンタンアメ、鶯餅、練り切りなどの伝統的な和菓子の多くは常温で流通しています。求肥は砂糖の保水作用により常温でも柔らかさを保つため、常温販売に非常に適した素材です。
冷蔵で販売されるものとしては、フルーツ大福や生クリーム入りの大福などがあります。生のフルーツや生クリームが使われている場合、品質を保つために冷蔵が必要となります。
冷凍で販売されるものの代表格が雪見だいふくなどのアイスもち菓子です。前述のとおり、求肥は冷凍しても固くなりにくいという稀有な特性を持っており、冷凍菓子の素材として非常に優れています。また、業務用の求肥シートやカット求肥は冷凍流通が主流で、賞味期限は冷凍保存で約1年と長期保存が可能です。
主な流通形態
求肥は和菓子の素材として、またそれ自体を菓子として、多様な流通形態で市場に出回っています。
和菓子店・専門店での対面販売
老舗和菓子店では、職人が手作りした求肥菓子が店頭に並びます。練り切りや上生菓子などは、こうした専門店での購入が中心です。
土産物店・百貨店での箱入り販売
羽二重餅や吉備団子、誉の陣太鼓といった銘菓は、化粧箱入りのギフト商品として空港、駅、百貨店の銘菓コーナー等で広く販売されています。
スーパーマーケット・コンビニでの販売
大福や雪見だいふくなど、大量生産品が中心です。個包装されたものが多く、手軽に購入できます。
業務用の冷凍品としての流通
飲食店やホテル、パティスリーなどが使用する求肥シートやカット求肥は、専門の和菓子メーカーから冷凍状態で業務用として供給されています。
通信販売(オンラインショップ)
全国の銘菓を自宅にいながら取り寄せることが可能になっています。
価格帯
求肥を使った菓子の価格帯は、商品の種類やブランド、製法によって非常に幅広くなっています。
もっとも手頃な価格帯としては、ボンタンアメのように1箱100〜150円程度で購入できる駄菓子的な商品があります。スーパーやコンビニで販売される大福やアイスもち菓子も1個あたり100〜250円程度の手頃な価格です。
中価格帯としては、土産菓子の銘菓類が該当します。福井の羽二重餅は6袋入りで約1,000円前後、岡山の吉備団子は10個入りで約540円、熊本の誉の陣太鼓は4個入りで約885円など、1箱500〜3,000円程度の価格帯の商品が多く見られます。
高価格帯としては、老舗和菓子店や茶席向けの上生菓子があり、1個あたり300〜600円以上するものもあります。職人の手技が光る練り切りや、季節限定の意匠を凝らした求肥菓子は、芸術品のような美しさとともに相応の価格が設定されています。
日持ち
求肥の日持ちは、含まれる糖分の量や製法、包装形態によって大きく異なります。
**手作りの求肥(家庭で作った場合)**は、常温保存で2〜3日程度が目安です。砂糖の量が多いほど日持ちがしやすくなりますが、できれば作った当日から翌日までに食べるのが最も美味しく楽しめます。冷蔵保存は可能ですが、やや食感が固くなることがあるため、冷蔵よりも冷凍保存のほうが品質を保ちやすいです。冷凍の場合は約1か月程度保存が可能です。
市販の求肥菓子は、商品によって賞味期限が異なります。羽二重餅は製造日より約10日〜40日(真空パックの場合は40日程度)、吉備団子は製造日より約20日、ボンタンアメは約240日(8か月)と、商品の形態や包装によって大きな差があります。
業務用の冷凍求肥は、冷凍状態で約1年(365日)の賞味期限を持つものが一般的です。解凍後は密閉して冷蔵保存し、7日以内に使用することが推奨されています。
いずれの場合も、直射日光や高温多湿を避けて保存することが基本です。また、求肥は乾燥すると風味が落ちるため、開封後はラップに包むなどして乾燥を防ぐことが大切です。
アレンジ・バリエーション
求肥は和菓子の世界において、もっともバリエーション豊かな素材の一つです。その柔軟性を活かした菓子は、伝統的なものから現代的なものまで多岐にわたります。
求肥そのものを菓子として楽しむもの
福井県の「羽二重餅」が代表格です。求肥そのものの繊細な食感と上品な甘みを堪能できる、もっともシンプルにして完成度の高い形と言えます。
求肥に食材を練り込んだもの
岡山の「吉備団子」(きびの粉を練り込む)、秋田の「バター餅」(バターを練り込む)、鹿児島の「ボンタンアメ」(ボンタン果汁で風味づけ)などがあります。抹茶やよもぎ、柚子、黒ごまなどを練り込むバリエーションも定番です。
餡を求肥で包んだもの
和菓子の王道とも言える組み合わせです。鶯餅、菱葩餅(はなびらもち)、練り切りのほか、大福もこの範疇に含まれます。近年人気のフルーツ大福は、いちごやマスカット、みかんなどの生のフルーツと白あんを求肥で包んだもので、伝統的な求肥菓子に現代的なアレンジを加えた好例です。
求肥を餡で包んだもの
通常とは逆の構造を持つものもあります。熊本の「誉の陣太鼓」はその代表で、求肥を小豆餡で包み込んだユニークな一品です。
求肥をほかの生地ではさんだもの
カステラ風の薄い焼き皮で求肥をはさんだ「若鮎」や「調布巻」があります。
アイスクリームを求肥で包んだもの
ロッテの「雪見だいふく」が切り拓いた革新的なジャンルです。冷凍でも柔らかさを保つ求肥の特性を活かした商品で、現在ではさまざまなメーカーから類似のアイスもち菓子が販売されています。
求肥を添え物として使うもの
あんみつやみつまめに添えられる求肥が定番です。白やピンクに色づけされた小さな求肥は、甘味処のデザートに彩りと食感のアクセントを加えます。
現代的なアレンジ
チョコレートを包んだチョコもち、抹茶ラテに求肥をトッピングしたカフェメニュー、求肥のもちもち感を活かしたグミ菓子など、和洋の垣根を超えた新しいスタイルの商品が次々と生まれています。また、求肥シートでジェラートやケーキを包む「もちアイス」や「もちクレープ」なども、海外でも人気を博しています。
求肥というシンプルな素材が持つ無限の可能性は、平安時代から現代に至るまで、菓子職人たちの創意工夫によって絶えず更新され続けているのです。
