お菓子の名前(日本語)
村雨(むらさめ)
※別名:時雨(しぐれ)、むらしぐれ、高麗(こうらい)
お菓子の名前(外国語)
Murasame(英語表記)
※英語圏での説明的な表現としては “Steamed Azuki Bean and Rice Flour Cake” と訳されることがある。和菓子用語として「Murasame」とそのまま表記されるのが一般的である。
お菓子の分類
和菓子 / 蒸し菓子 / 棹物(さおもの)生菓子 / 湿粉(しっぷん)製菓子
どんなお菓子
村雨は、小豆の生餡(なまあん)に米粉(上新粉)と餅粉、砂糖を混ぜ合わせ、そぼろ状にしたものを型に敷き詰めて蒸籠(せいろ)で蒸し上げた、棹物の生菓子である。口に含むとほろほろと儚く崩れながらも、蒸すことで生まれる餅粉のわずかなもっちり感が相まって、独特のしっとりとした食感を楽しめる。見た目は素朴で飾り気がなく、断面には蒸される前のそぼろの粒感がうっすらと残り、まるで細かな雨粒の跡のような趣がある。甘さは控えめで、小豆本来のやさしい風味が前面に出た、日本の伝統的な和菓子の原点のような味わいである。
村雨の最大の特徴は「そぼろ」にある。餡に粉類と砂糖を混ぜた生地を、裏ごし器(そぼろごし)やふるいにかけて細かいそぼろ状にし、これを型に敷き詰める。この工程によって生地の中に空気が含まれ、蒸し上がったときの繊細なほろほろ感が生まれる。押し固めすぎると食感が損なわれるため、そぼろを崩さないようそっと型に入れる職人の繊細な手仕事が求められる。
棹物(さおもの)とは、棹状、つまり細長い直方体に成形された和菓子の総称で、羊羹(ようかん)やういろうと同じカテゴリーに属する。村雨は通常、一本の棹を切り分けて供される。切り口に現れるそぼろの粒感は、他の棹物にはない村雨ならではの表情であり、まさにその名の通り、通り雨がぱらぱらと降り注ぐような風情を宿している。
製法の分類上、村雨は「湿粉製(しっぷんせい)」あるいは「村雨製」と呼ばれる製法に属する。これは、餡に粉類を混ぜてそぼろ状にし、蒸し上げるという独特の手法であり、和菓子の製法カテゴリーの中でも特徴的なものである。京都や関東の和菓子店では、この村雨生地を活用して羊羹と組み合わせたり、餡を巻き込んだりと、さまざまな意匠菓子の素材としても広く用いられている。
お菓子の名前の由来
「村雨」という名前は、気象用語の「村雨(むらさめ)」に由来する。村雨とは、激しく降ってはすぐに止み、また降り出すというにわか雨、通り雨のことである。「群れた雨」という意味から「群雨」あるいは「叢雨」とも書く。秋から冬にかけて見られるこの気まぐれな雨のように、村雨菓子を口に含むとぱらぱらとほどけて崩れゆく食感が、まさしく通り雨の儚さを連想させることから、この名が付けられたといわれている。
この命名に深く関わるのが、鎌倉時代初期の歌人・寂蓮法師(じゃくれんほうし)が詠んだ新古今和歌集の一首である。
「村雨の 露もまだ干ぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ」
通り雨が過ぎ去ったあと、まだ露の乾かない常緑樹の葉から霧が立ちのぼっていく秋の夕暮れの情景を詠んだこの歌は、百人一首の八十七番としても広く親しまれている。和菓子としての村雨は、この歌が描くしっとりとした秋の風情をそのまま菓子の世界に写し取ったものといえる。
また、大阪府貝塚市の「村雨本舗 塩五」は、和泉八景のひとつ「貝浦村雨」にちなんで「村雨」の名を冠したと伝えている。泉州の海辺の地で、通り雨が過ぎていく情景とこの菓子のほろほろとした口溶けを重ね合わせたのである。
なお、「村雨」は塩五の登録商標(登録番号第1532586号)であるため、他の店では「○○むらさめ」や「むらしぐれ」といった商品名で販売されている。同様に「時雨」も大阪府岸和田市の和菓子店「竹利商店」の登録商標(登録番号第77725号)であり、他店は「○○しぐれ」と名乗っている。このため、ほぼ同じ製法の菓子が「村雨」「時雨」「むらしぐれ」「しぐれ」など複数の名称で流通しているのが現状である。
お菓子の歴史
村雨の歴史を語るうえで欠かせないのが、大阪・泉州地域の豪商と藩主の物語である。
江戸時代、泉州(現在の大阪府南西部)でその名を馳せた豪商・食野家(めしのけ)が秘伝の菓子として守り伝えていた蒸し菓子がこの系統の菓子の原型とされている。あるとき、岸和田城主であった岡部美濃守長住公が病にふせった際、この秘伝の菓子が献上された。城主はその味を大いに賞賛し、「時雨」の名を賜ったと伝えられている。これが泉州における「時雨」系菓子の始まりとされる。
その後、江戸時代中期から後期にかけて、時雨が評判となって繁盛した店があり、近隣の菓子店がそれに似せた菓子を作るようになった。このとき差別化のために付けられた名前が「村雨」であったといわれている。時雨も村雨もどちらも秋から冬にかけての雨を意味する言葉であり、風流な名前の付け方には江戸時代の菓子職人の粋なセンスがうかがえる。
安政元年(1854年)、泉佐野の地で干菓子や肉桂餅などを商っていた初代・塩屋五兵衛が現在の貝塚に移り、村雨を専門に作る御菓子司「塩谷堂」を開業した。これが現在の「村雨本舗 塩五」の創業であり、明治42年(1909年)には「村雨」の商標登録を果たしている。以来170年以上にわたり、泉州銘菓としての村雨の伝統を守り続けている。
一方、明治25年(1892年)には、初代・向井新與門が泉佐野の地で「むらしぐれ本舗」ののれんを掲げて創業した。これが現在の「むか新」であり、南海鉄道が佐野まで開通した明治30年代には駅でも販売されるほどの人気銘菓となった。
こうした歴史的背景から、村雨(むらさめ)系の菓子は泉州地方を代表する郷土菓子として発展してきたのである。
また、製法的な視点でみると、全国的には類似した菓子が各地に存在する。鹿児島県では「高麗餅(こうらいもち)」あるいは「高麗(こうらい)」と呼ばれる菓子があり、これは豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に島津氏が朝鮮半島から持ち帰った製法に由来するとされ、朝鮮の旧国名「高麗」にちなんで名付けられたといわれている。関東地方でも「高麗」という名称で同系統の菓子が作られている。京都をはじめとする各地の和菓子店では、餡を砂糖で炊き上げてからそぼろにする「餡村雨(あんむらさめ)」の手法も広く用いられており、村雨生地は和菓子の基本技法のひとつとして全国の製菓学校でも教えられている。
発祥の地
村雨の発祥の地は、大阪府泉州地方(大阪府南西部)である。とりわけ大阪府貝塚市、岸和田市、泉佐野市を中心とする泉州一帯が村雨・時雨系菓子の本場として知られている。泉州地方は、戦国時代には堺を中心に南蛮貿易の拠点として栄えた地域であり、だんじり祭りをはじめとする伝統文化が色濃く残る土地柄でもある。そうした豊かな歴史と文化の風土のなかで、村雨は泉州の人々の暮らしに寄り添う郷土菓子として育まれてきた。
大阪府はこの村雨を「大阪産(もん)名品」として認定しており、泉州地域を代表する特産品のひとつに位置づけている。
有名な商品(メーカー名と商品名と販売価格)
泉州地方を中心に、村雨・時雨系の菓子を看板商品とする和菓子店は数多く存在する。以下に代表的な商品を紹介する。なお、価格は2025年時点の参考情報であり、変動の可能性がある。
村雨本舗 塩五(しおご)(大阪府貝塚市)の「村雨」
安政元年(1854年)創業の元祖ともいうべき存在である。小豆の生餡と砂糖、米粉のみで作る無添加の伝統菓子で、1本600円前後。消費期限は製造日を含めて3日間と非常に短く、保存料を一切使用していないことの証でもある。「村雨」の登録商標を持つ唯一の店として、泉州銘菓の正統を今に伝えている。
むか新(むかしん)(大阪府泉佐野市)の「むらしぐれ」
明治25年(1892年)創業の老舗が作る泉州の郷土菓子である。北海道十勝の契約農場で収穫された小豆を使用し、1本約690円(2本入り1,380円)。日持ちは約5日。泉州を中心に約20店舗を展開し、広く親しまれている。
青木松風庵(あおきしょうふうあん)(大阪府泉南郡岬町)の「小豆しぐれ」
泉州銘菓を現代風に洗練させた一品で、1本500円(税込)。栗を加えた「栗しぐれ」は700円(税込)。日持ちは約7日で、贈答用にも適している。大阪を中心に幅広い店舗展開を行い、人気の和菓子ブランドとして知名度が高い。
幸成堂(こうせいどう)の「村雨 巴午前(ともえごぜん)」
泉州名物の村雨を贈答用に仕立てた商品で、2本入り1,080円(税込)、4本入り2,268円(税込)。ほろほろとした食感と上品な甘さが特徴である。
京菓子司 俵屋吉富(たわらやよしとみ)(京都市)の「雲龍(うんりゅう)」
泉州の村雨とは少し趣が異なるが、村雨生地を活用した京菓子の代表的な銘菓である。白餡ベースの村雨餡で大粒小豆の粒餡を一本ずつ手巻きし、雲に乗る龍の姿を表現した意匠棹菓子である。宝暦5年(1755年)創業の老舗で、半棹1,080円(税込)、本棹1,728円(税込)。賞味期限が約20日~25日と比較的長く、手土産として全国的に人気が高い。
味や食感などの特徴
村雨最大の魅力は、口に入れた瞬間にほろほろと繊細に崩れていく独特の食感にある。これは、そぼろ状にした生地をふんわりと型に入れて蒸し上げるという製法から生まれるものであり、他の和菓子にはなかなか見られないものである。
甘さは控えめで、小豆本来の風味がしっかりと感じられる。泉州の伝統的な村雨は、餡を炊き上げずに「生餡」の状態で使うことが特徴のひとつであり、これによって小豆そのものの素朴な味わいが際立つ。一方、京都などで作られる「餡村雨」は、餡に砂糖を加えて炊き上げた(火取りした)ものをそぼろにするため、泉州の村雨に比べるとやや甘みが強くしっとりとした仕上がりになる。
食感の面では、蒸し上がったばかりの村雨はほどよいしっとり感と温かみがあり、冷めると少し引き締まってほろほろ感がさらに際立つ。餅粉が加わることでわずかなもちもち感も同居しており、このほろほろとした崩れやすさともっちりとした粘り気のバランスが絶妙である。
口溶けは非常によく、濃いめの緑茶や抹茶との相性は格別である。コーヒーや紅茶にも意外とよく合い、洋風の飲み物と合わせても小豆の風味が引き立つ。
どんな場面やどんな人におすすめ
村雨は、控えめな甘さと素朴な風味から、幅広い世代に愛される和菓子である。特に以下のような場面や好みの方におすすめしたい。
日々のお茶請けとして楽しむのに最適である。緑茶や抹茶とともにいただけば、ほろほろと崩れる食感と小豆のやさしい風味が口いっぱいに広がり、ゆったりとした和の時間を演出してくれる。来客時のもてなし菓子としても、上品でありながら気取らない佇まいが好印象を与える。
甘いものが苦手な方や、洋菓子の濃厚さに疲れを感じている方にもおすすめである。村雨は和菓子の中でも甘さが控えめであり、小豆と米粉というシンプルな素材の味わいを楽しむ菓子である。素材にこだわった無添加の品も多く、自然派志向の方にも支持されている。
泉州地方のお土産としても最適である。村雨は泉州の歴史と風土を凝縮した郷土菓子であり、大阪を訪れた際にはぜひ手に取っていただきたい。ただし、伝統的な製法で作られた村雨は日持ちが短いため、贈り先には速やかに届けるか、日持ちの長い商品を選ぶとよい。
年配の方への手土産にも喜ばれる。ほろほろとしたやわらかな食感は歯の負担が少なく、上品な甘さは年齢を問わず好まれる味わいである。
茶道の場における茶席菓子としても、村雨は古くから親しまれてきた。季節感のある銘をつけた村雨製の菓子は、抹茶とともに秋冬の茶会で重宝されている。
材料
村雨の材料は非常にシンプルである。基本的には以下の4つのみで構成されている。
第一に、小豆(あずき)が最も重要な材料である。泉州の伝統的な村雨では、小豆を煮てやわらかくし、皮を取り除いて細かくすりつぶし、水分を搾り取った「生餡(なまあん)」の状態で使用する。北海道十勝産や丹波産など、上質な小豆が選ばれる。京菓子に用いられる村雨生地では、白餡(白いんげん豆のこし餡)が使われることも多い。
第二に、上新粉(じょうしんこ)が使われる。うるち米を製粉したもので、蒸し上がりの生地に適度な固さとほろほろ感を与える。上用粉(じょうようこ)が代用されることもある。
第三に、餅粉(もちこ)が加えられる。もち米を製粉したもので、蒸し上がったときのわずかな粘りともっちり感を担い、そぼろ同士をつなぐ役割を果たす。
第四に、砂糖(主に上白糖)が使われる。甘味を与えるとともに、生地の保湿性を高め、しっとりとした食感に寄与する。
これら4つの材料のみで作られるのが泉州の伝統的な村雨であり、添加物は一切使用しない。そのため消費期限は非常に短く、鮮度が味の決め手となる。
配合の一例としては、辻調グループのレシピによると、小豆こし餡400gに対して上白糖25g、上新粉25g、餅粉25gというバランスが紹介されている。餡の割合が圧倒的に高いのが特徴で、粉類と砂糖はあくまで餡を支える脇役である。
レシピ
家庭でも作れる基本的な村雨のレシピを紹介する。
材料(1棹分)
こし餡(市販品可)400g、上新粉 25g、餅粉 25g、上白糖 25g
用意するもの
ボウル、裏ごし器またはザル(目の粗めのもの)、蒸し器(せいろ)、流し型または底が平らな耐熱容器、クッキングシート、板状のもの(押し板代わり)
作り方
- まず、ボウルにこし餡を入れ、上白糖、上新粉、餅粉を加えてよく混ぜ合わせる。粉類のダマが残らないように丁寧に混ぜることが大切である。餡はなるべく水分の少ないものを使うと仕上がりがよい。市販のこし餡が柔らかすぎる場合は、耐熱ボウルに入れて電子レンジで1~2分ずつ加熱しながら水分を飛ばし、パラッとした状態にしておくとよい。
- 次に、混ぜ合わせた生地を裏ごし器やザルに少量ずつのせ、手のひらやヘラで押して、そぼろ状にこしていく。家庭に裏ごし器がなければ、目の粗いザルで代用できる。2mm角程度の目があれば理想的だが、多少大きめのそぼろでも問題ない。こしたそぼろはクッキングシートの上にふんわりと落とし、決して上から押しつぶさないよう注意する。
- 続いて、流し型の底にクッキングシートを敷き、こしたそぼろをそっと入れていく。箸を使ってそぼろを全体に均一に広げ、板状のもので上からごく軽く押さえて表面を整える。強く押しすぎるとそぼろがつぶれて食感が損なわれるため、あくまで軽くなでる程度にとどめる。
- 蒸し器に十分な蒸気を立て、生地を入れた型をセットし、約20分蒸す。蒸している間に水滴が生地の上に落ちないよう、蓋に布巾を挟むなどの工夫をするとよい。水滴が落ちると生地がだんご状になり、口溶けが悪くなってしまう。
- 蒸し上がったら型から取り出し、粗熱を取って切り分ける。包丁を少し濡らしてから切ると、きれいな切り口になる。
販売温度帯
村雨は基本的に常温で販売される。蒸し菓子であるため、出来たてに近い状態では常温保存が一般的である。ただし、気温の高い夏季には品質保持のため冷蔵で販売・保存される場合もある。通信販売においては、むか新の「むらしぐれ」のように冷凍便で発送し、届いたあとに室温で解凍して食べるという形態をとる商品もある。
塩五の村雨は常温の宅急便で配送されており、冷蔵・冷凍は行っていない。消費期限内にできるだけ早く食べることが推奨されている。
主な流通形態
村雨は主に以下の形態で流通している。
店頭販売が最も基本的な流通形態であり、泉州地方を中心とした各和菓子店の店舗で直接購入できる。塩五は大阪府貝塚市の本店を拠点に販売しており、むか新は泉州を中心に約20店舗を展開している。青木松風庵も大阪府南部を中心に多数の直営店を持つ。
百貨店での販売も行われている。塩五の村雨は百貨店の和菓子売場で取り扱われることがあるが、日持ちが製造日を含めて3日と短いため(百貨店での取り扱い分は配送の都合で2日の場合もある)、常時在庫があるわけではなく、限定的な販売となっている。俵屋吉富の「雲龍」は京都の百貨店を中心に全国の主要百貨店で広く取り扱われている。
通信販売も利用可能で、塩五は電話・ファックス・メールでの注文を受け付けており、ヤマト運輸の宅急便で全国配送している。むか新や青木松風庵はオンラインショップを運営しており、インターネットからの注文が可能である。幸成堂の「村雨 巴午前」は楽天市場やYahoo!ショッピングなどの通販モールでも購入できる。
価格帯
村雨は比較的手頃な価格帯の和菓子である。1本あたり500円~700円程度が一般的な価格帯であり、贈答用の詰め合わせでは2本入りで1,000円~1,400円前後、4本入りで2,200円~2,800円前後が目安となる。
京菓子としての村雨製菓子(俵屋吉富の「雲龍」など)の場合は、半棹1,080円、本棹1,728円と、やや高めの価格設定になっている。
いずれにしても、上質な素材を使った手作りの和菓子としては求めやすい価格帯であり、日常のお茶請けから贈答用まで幅広く活用できる。
日持ち
村雨は生菓子であり、保存料を使用していないものが多いため、日持ちは短い。商品によって消費期限は異なるが、おおむね以下のとおりである。
塩五の「村雨」は製造日を含めて3日間と最も短い。これは生餡を使い、添加物を一切使用しない伝統製法ゆえの短さである。むか新の「むらしぐれ」は約5日間。青木松風庵の「小豆しぐれ」は約7日間と比較的持つ。俵屋吉富の「雲龍」は賞味期限が約20日~25日間(夏季は約15日間)であり、村雨製の菓子としては長い部類に入る。これは餡を火取り(砂糖を加えて炊き上げること)した上で製造しているためである。
いずれの商品も、開封後はできるだけ早く食べることが推奨されている。直射日光と高温多湿を避けて常温保存が基本であるが、気温が高い場合は冷蔵保存し、食べる前に室温に戻してから食べるとより良い食感が楽しめる。
アレンジ・バリエーション
村雨は基本の小豆村雨を軸に、さまざまなアレンジやバリエーションが楽しまれている。
白村雨(しろむらさめ)
小豆餡の代わりに白餡(白いんげん豆のこし餡)を使ったもので、淡い象牙色の上品な見た目が特徴である。白餡は風味がまろやかなため、抹茶やゆず、桜など他の素材との組み合わせに適しており、京菓子の世界では白村雨生地がさまざまな意匠菓子のベースとして活用されている。
栗村雨(くりむらさめ)・栗しぐれ
村雨生地に栗を加えたバリエーションで、秋の季節菓子として人気が高い。青木松風庵の「栗しぐれ」はその代表格で、ほろほろとした村雨生地の中に栗の甘露煮の粒感が加わり、風味と食感の変化が楽しめる。
黄味村雨(きみむらさめ)
卵黄を餡に練り込んだ村雨生地で、鮮やかな黄色い見た目と卵黄のコクが特徴である。辻調グループのレシピでも紹介されている技法であり、和菓子の上生菓子に多く用いられる。
村雨と羊羹の組み合わせ
京菓子の世界で特に発達したアレンジである。俵屋吉富の「雲龍」は、村雨餡で小倉餡を巻いた棹菓子であり、村雨のほろほろ感と餡のなめらかさのコントラストが楽しめる。また、村雨生地と羊羹を層状に重ねた棹菓子は「源氏籬(げんじまがき)」「若葉羹」「武蔵野」など、さまざまな銘で作られている。
抹茶村雨
生地に抹茶を練り込んだもので、鮮やかな緑色と抹茶のほろ苦さが加わる。白餡ベースの村雨に抹茶を加えることが多く、目にも美しい仕上がりになる。
村雨のロールケーキ風(しぐれロール)
薄く蒸し上げた村雨生地で粒餡を巻いた創作和菓子である。青木松風庵では期間限定商品として販売されたこともあり、伝統の味を新しい形で楽しめる一品である。
洋風アレンジ
村雨にホイップクリームや生クリームを添えて食べる方法も紹介されている。むか新の庵主も「生クリームを添えて一緒に食べても相性が良い」と推奨しており、和洋折衷のおやつとして楽しめる。また、村雨生地でドライフルーツ入りの餡を巻いた「村雨のブッシュ・ド・ノエル風」というクリスマス向けの創作菓子レシピも考案されている。卵も小麦粉も油脂も使わないヘルシーな和菓子のブッシュ・ド・ノエルとして注目されている。
