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生クリームとホイップクリームの違い

2026 4/08
雑学
2026年4月8日
目次

はじめに

お菓子作りに欠かせない「クリーム」。スーパーの売り場に行くと、「生クリーム」「ホイップ」「フレッシュ」など、さまざまな名称の商品が並んでおり、どれを選べばよいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。実はこれらの商品は、原材料や法令上の分類が明確に異なっており、味わいや食感、価格、保存性にも大きな違いがあります。

本記事では、お菓子の原材料辞典として「生クリーム」と「ホイップクリーム」の違いを、法令上の定義、原材料、風味と食感、栄養面、価格、保存性、お菓子作りにおける使い分けなど多角的な観点から詳しく解説します。

法令上の定義と分類

生クリーム(種類別「クリーム」)

日本における「生クリーム」の定義は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令(乳等命令)」によって厳密に定められています。同命令では、「クリームとは、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」と定義されており、成分規格として乳脂肪分18.0%以上であることが求められています。

ここで重要なのは、種類別「クリーム」と表示できる製品には、植物性脂肪はもちろん、乳化剤や安定剤などの添加物も一切加えることが許されていないという点です。パッケージには**「種類別:クリーム」**と記載されており、これが正真正銘の「生クリーム」の証です。一般に「純生クリーム」や「フレッシュクリーム」と呼ばれることもありますが、法令上の正式名称は「クリーム」です。

ホイップクリーム(「乳等を主要原料とする食品」等)

一方、広く「ホイップクリーム」と呼ばれている製品は、法令上は種類別「クリーム」には該当しません。パッケージには**「名称:乳等を主要原料とする食品」あるいは「名称:植物性脂肪」**などと記載されています。これらの製品には、植物性脂肪や乳化剤、安定剤といった添加物が使用されており、乳脂肪のみで作られた「クリーム」とは明確に区別されます。

なお、「ホイップ(whip)」という言葉は本来「泡立てる」という意味であり、泡立てたクリーム全般を指す英語表現です。しかし日本の食品業界では、植物性脂肪や添加物を含むクリーム類の商品名として定着しています。

クリーム類の4つの分類

市場に流通しているクリーム類は、原材料の違いによって大きく4つに分類されます。

生クリーム(純生クリーム)

原材料は乳脂肪のみで、添加物を一切含みません。種類別表示は「クリーム」となります。生乳や牛乳を遠心分離機にかけて脂肪分を濃縮し、殺菌・均質化・エージング(脂肪球の結晶化)を経て製造されます。ミルク本来の濃厚な風味とコク、なめらかな口溶けが最大の特徴です。

純乳脂肪クリーム

原材料は乳脂肪ですが、乳化剤や安定剤などの添加物が加えられています。名称は「乳等を主要原料とする食品」となり、種類別「クリーム」とは表示できません。生クリームの風味を活かしつつ、分離しにくく安定性に優れているため、扱いやすさを求める場面で重宝されます。

コンパウンドクリーム

「コンパウンド(compound)」は「混合」を意味し、乳脂肪と植物性脂肪(ヤシ油、パーム油、大豆油など)を組み合わせて作られたクリームです。乳脂肪と植物性脂肪の配合比率は商品によって異なり、乳脂肪の割合が多いほど生クリームに近い風味になり、植物性脂肪の割合が多いほどさっぱりとした味わいになります。両者の「いいとこ取り」ができる点が魅力です。

植物性クリーム

乳脂肪をすべて植物性脂肪(パーム油、ヤシ油、なたね油など)に置き換えたクリームです。乳脂肪由来の風味やコクはありませんが、軽くさっぱりとした味わいで、真っ白な仕上がりが得られます。安定性が高く泡立て後もボソつきにくいため、デコレーション初心者にも扱いやすいクリームです。

日本の市場で「ホイップクリーム」として販売されている製品の多くは、上記の(2)~(4)のいずれかに該当します。

原材料の違い

生クリームの原材料は極めてシンプルで、**「クリーム(乳製品)」**のみです。つまり、牛乳から分離した乳脂肪だけで構成されています。

対して、ホイップクリーム(植物性クリームの場合)の原材料には、植物油脂(パーム核油、なたね油、ヤシ油など)、乳製品、砂糖、乳化剤(レシチンなど)、安定剤(増粘多糖類など)、香料(バニラフレーバーなど)、カロテン色素といった複数の成分が含まれています。植物性油脂を乳化剤の力で水中に分散させ、クリーム状に加工しているのです。

この原材料の違いが、後述する風味・食感・栄養成分・価格・保存性の差となってあらわれます。

風味・食感・色の違い

風味

生クリームはミルクそのものの濃厚な風味とコクが際立ちます。乳脂肪ならではの芳醇な香りと、舌の上でとろけるようなリッチな後味が特徴で、素材の味をダイレクトに楽しめます。

ホイップクリームは植物性脂肪がベースとなるため、乳脂肪のコクは控えめで、軽くさっぱりとした味わいになります。バニラなどの香料で風味が補われている製品も多く、生クリームとは異なる穏やかな甘さが感じられます。

食感

生クリームは口溶けがなめらかで、体温でスッと溶ける感覚があります。特に乳脂肪分の高い(45%前後)ものは、しっかりとした重厚感のある食感になります。

ホイップクリームは安定剤の効果もあってクリームの形がしっかり保たれ、やや軽い食感です。口溶けは生クリームほどなめらかではありませんが、安定感があり長時間形を保ちやすいという利点があります。

色

生クリームは乳脂肪に由来するわずかな黄色味を帯びた白色をしています。乳脂肪分が高いほどこの黄色味は強くなります。

ホイップクリーム(特に植物性クリーム)は乳脂肪を含まないため、純白に仕上がります。白さを活かしたデコレーションケーキを作りたい場合には、ホイップクリームのほうが適しています。

栄養成分の違い

カロリー

生クリーム(乳脂肪分45%)は100gあたり約404〜430kcal程度、ホイップクリーム(植物性脂肪)は100gあたり約353〜390kcal程度とされており、ホイップクリームのほうがやや低カロリーです。ただし、製品の脂肪分によって数値は変動するため、一概にどちらが低いとは言い切れません。

コレステロール

生クリームは動物性の乳脂肪を主成分としているため、100gあたり約120mgのコレステロールを含みます。一方、植物性のホイップクリームのコレステロール値は100gあたり約4mgと圧倒的に低く、コレステロールを気にされる方にとっては大きな違いとなります。

トランス脂肪酸について

かつては植物性ホイップクリームに含まれるトランス脂肪酸が健康上の懸念として指摘されていました。植物油脂を加工する過程(部分水素添加)でトランス脂肪酸が生成されるためです。ただし、近年の製品ではトランス脂肪酸の低減技術が進んでおり、多くのメーカーがトランス脂肪酸を大幅に削減した製品を販売しています。なお、動物性の生クリームにも天然由来のトランス脂肪酸が微量(乳脂肪40%の製品で約1.6%程度)含まれている点は知っておくとよいでしょう。

価格の違い

生クリームは乳脂肪のみで作られており、原料コストが高いため、ホイップクリームよりも価格が高めに設定されています。一般的なスーパーでの200mlパックの価格帯は、生クリーム(乳脂肪35〜47%)が300〜500円程度、ホイップクリーム(植物性脂肪)が150〜250円程度です。コンパウンドクリームはその中間に位置します。

大量にクリームを使用するお菓子を作る場合や、日常的な料理に手軽に使いたい場合には、コストパフォーマンスの良いホイップクリームが選ばれることが多いです。一方、ここぞという特別なお菓子には、味わいの豊かさを優先して生クリームが選ばれます。

賞味期限・保存性の違い

賞味期限の長さは、添加物の有無によって大きく異なります。

生クリーム(種類別「クリーム」)は添加物を一切含まないため、未開封でも約1週間〜10日程度と非常に短いのが特徴です。開封後は1〜2日以内に使い切ることが推奨されます。温度変化に敏感で、冷蔵庫のドアポケットや冷気の直接あたる場所は避け、5℃前後で安定した温度で保管する必要があります。

ホイップクリーム(植物性クリーム等)は乳化剤や安定剤などの添加物によって品質が安定しているため、未開封で約1〜3ヶ月と長めの賞味期限が設定されています。開封後も3〜5日程度は使用できるとされていますが、できるだけ早めに使い切ることが望ましいです。

お菓子作りにおける使い分け

泡立て(ホイップ)のしやすさ

生クリームの中でも乳脂肪分45%前後のものは泡立ちが非常に速く、200mlで約1分程度でデコレーションに使える硬さに達します。ただし、泡立てすぎると脂肪球が凝集してボソボソの状態(分離)になりやすいため、加減が重要です。乳脂肪分36%前後のものは泡立ちに約4分程度かかりますが、分離しにくくやや扱いやすいです。

ホイップクリーム(コンパウンドタイプ)は安定剤の効果で泡立てても分離しにくく、長時間触り続けてもボソつきにくいという特徴があります。泡立て時間は200mlで約2分程度と、両者の中間的な使いやすさです。

デコレーション(ナッペ・絞り)

ナッペ(パレットナイフでクリームを塗り広げる作業)やクリーム絞りでは、生クリーム(高脂肪)はエッジがくっきり出る一方、触りすぎるとすぐにザラついてきます。デコレーションに慣れた上級者向けといえるでしょう。

ホイップクリームは安定性が高く、パレットナイフで何度触ってもなめらかな状態を保ちやすいため、デコレーション初心者にも扱いやすいクリームです。白さが際立つ仕上がりになる点も特徴です。

プロのテクニック:ブレンド

乳脂肪分45%と36%の生クリームを半量ずつ混ぜ合わせると、おおむね40%程度の乳脂肪分になり、しっかり泡立ちながらもボソつきにくい、バランスの良いクリームに仕上がります。プロのパティシエも、用途に応じて異なる脂肪分のクリームをブレンドすることがあります。

料理での使い分け

泡立てずにそのまま使う料理(パスタソース、スープ、グラタンなど)には、ミルクの風味やコクをストレートに加えられる生クリームが適しています。植物性クリームは加熱すると分離しやすい傾向があるため、加熱調理には生クリームのほうが安定しています。ガナッシュ(生チョコレート)を作る際には、乳脂肪分36%程度の生クリームを使うとツヤのある美しい仕上がりになります。

生クリームとホイップクリームの比較まとめ

ここまでの内容を整理すると、生クリームとホイップクリームの主な違いは次のとおりです。

原材料について、生クリームは乳脂肪のみ(添加物なし)であるのに対し、ホイップクリームは植物性脂肪や乳化剤・安定剤などの添加物を含みます。法令上の分類では、生クリームは種類別「クリーム」、ホイップクリームは「乳等を主要原料とする食品」に該当します。風味は生クリームが濃厚でミルク感が豊か、ホイップクリームが軽くさっぱり。色は生クリームがやや黄色味を帯びた白色、ホイップクリームは純白。価格は生クリームが高め、ホイップクリームはお手頃。賞味期限は生クリームが未開封約1週間、ホイップクリームが未開封約1〜3ヶ月。扱いやすさは生クリームが分離しやすく上級者向き、ホイップクリームは安定性が高く初心者にも向いています。

おわりに

生クリームとホイップクリームは、一見すると似たような白いクリームですが、原材料から法令上の分類、風味、食感、栄養成分、価格、保存性まで、あらゆる面で異なる特徴を持っています。どちらが「良い・悪い」というものではなく、それぞれの特性を理解し、作りたいお菓子の目的や状況に合わせて選ぶことが大切です。

ミルクの濃厚な風味を存分に楽しみたい特別なお菓子には生クリームを、手軽さや扱いやすさを重視する日常のお菓子作りにはホイップクリームを、というように使い分けることで、お菓子作りの幅がぐっと広がるでしょう。

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