お菓子の名前(日本語)
ゆべし(柚餅子)
お菓子の名前(外国語)
Yubeshi(英語表記)
お菓子の分類
和菓子(餅菓子・蒸し菓子)/珍味
※地域や製法によって「餅菓子」「蒸し菓子」「珍味」に分類が異なる
どんなお菓子
ゆべし(柚餅子)とは、柚子やくるみを用いた日本の伝統的な加工食品・和菓子の総称である。「ゆべし」と一口に言っても、その姿は地域によって驚くほど多彩だ。大きく分けると、柚子を丸ごと使った「丸柚餅子」、柚子の風味を活かした餅菓子タイプ、東北地方で発展したくるみを主役にした「くるみゆべし」、そして酒の肴として食される珍味タイプの四つに分類できる。
西日本では柚子の香りが際立つ上品な菓子として知られる一方、東北地方では醤油や黒砂糖で味付けした素朴なくるみ餅菓子として広く親しまれている。現代のお土産売り場で「ゆべし」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、福島県や宮城県を中心に製造されるくるみゆべしかもしれない。もちもちとした生地にくるみの香ばしさと醤油の風味が調和する、滋味深い味わいの和菓子である。
一方、柚子を丸ごとくり抜いて中に餅や味噌を詰め、数か月かけて乾燥させる丸柚餅子は、石川県や愛媛県、岡山県などで今もなお伝統製法が守られている高級和菓子だ。ひとつ仕上げるのに数か月を要するため、手間と時間のかかる貴重な逸品として珍重される。
このように、同じ「ゆべし」という名前でありながら、見た目も味わいも製法もまったく異なるバリエーションが日本各地に息づいているのが、この菓子の最大の魅力である。
お菓子の名前の由来
「ゆべし」という名前は、漢字で「柚餅子」と書く。文字通り「柚子の餅菓子」を意味し、もともとは柚子を原料とした食品であったことがその名の由来である。柚子の実をくり抜いて中に味噌や餅粉などの具材を詰めた食品が原型であり、柚子を使った餅=「柚餅子」として名前が定着した。
ただし、地域によって名前の由来には別の伝承もある。山形県では、割れた米を粉にして砂糖や醤油を混ぜ、「指で押して」成形した餅を「ゆべし」と呼ぶ伝統がある。この場合、「指で押す」という動作に由来するとされ、柚子とは無関係の語源を持つ。また、秋田県では「恵比須(えびす)」という祝い菓子の名前が次第に「ゆべし」へと変化していったという説もある。
このように、「ゆべし」の語源は一つではなく、各地の食文化や方言が交差するなかで複数の由来が並存しているのが実情である。しかし最も広く知られているのは、やはり「柚餅子」=柚子を使った餅菓子という、もともとの漢字表記に基づく由来だろう。
お菓子の歴史
ゆべしの歴史は非常に古く、その起源は800年以上前、源平時代(12世紀頃)にまで遡るとされる。当時のゆべしは現在のような甘い菓子ではなく、武士が戦場に携帯する保存食・携行食としての性格が強かった。柚子の実をくり抜き、中に味噌や山椒、木の実などを詰めて蒸し、長期間乾燥させることで保存性を高めたものだったと伝わる。
熊本県菊池市では、南北朝時代に栄えた菊池一族がゆべしの保存性に目を付け、兵糧として用いていたという伝承がある。柚子の皮に含まれる精油成分には防腐作用があり、味噌と合わせることでさらに日持ちが良くなったことから、合戦の携帯食として重宝されたのだろう。
江戸時代になると、ゆべしは保存食から高級珍味・菓子へと変貌を遂げる。江戸時代の料理書『料理物語』(1643年)には、酒肴としてのゆべしの製法が記されている。柚子の中に味噌や胡桃などを詰めて乾燥させた珍味は、大名への献上品としても扱われるようになった。徳川家に献じられた記録も残っており、当時の上流階層から高い評価を受けていたことがわかる。
また、「雪の朝、豊臣秀吉が千利休の草庵を訪ねた際、利休が庭の柚子を取り、中身をくり抜いて味噌を入れ、炉端で温めて茶の菓子とした」という有名な故事がある。この逸話は、ゆべしが茶の湯の世界とも深い関わりを持っていたことを示している。
岡山県矢掛町では、山陽道の宿場町として栄えた江戸時代に、参勤交代の大名たちにゆべしが銘菓として供されていた。同地に宿泊した天璋院(篤姫)もゆべしを好み、大量に食したという記録が岡山県立博物館で発見された宿帳に記されている。また、近代の作家・武者小路実篤も矢掛の丸ゆべしを好んだという。
東北地方では、柚子の栽培が盛んでなかったため、代わりにくるみを用いた「くるみゆべし」が独自に発展した。くるみは古くから貴重な蛋白源・脂肪源であり、東北の厳しい冬を乗り越えるための栄養食として重宝されていた。醤油や味噌、黒砂糖で味付けした餅生地にくるみを練り込む製法は、各地の餅文化と融合しながら進化し、現在のような多彩なくるみゆべしの世界を築き上げた。
愛媛県西条市の「星加のゆべし」は慶応3年(1867年)の創業であり、柚子を用いた棒ゆべし(竹皮ゆべし)の伝統を今に伝える老舗として知られる。岡山県高梁市では、備中松山城下に居住した茶人・小堀遠州がゆべしを考案したとの伝承もあり、西日本における柚子ゆべしの歴史の深さがうかがえる。
こうして見ると、ゆべしは「兵糧」→「珍味・酒肴」→「茶菓子・和菓子」と時代とともに変化しながら、各地の風土や食文化を吸収して多様な姿に発展してきた、まさに日本の食の歴史を映し出す菓子であるといえる。
発祥の地
ゆべしの明確な発祥の地を一つに特定することは難しい。源平時代の保存食として全国各地に広まったとされており、特定の一地域から誕生したというよりも、柚子が採れる地域で自然発生的に各地で作られるようになったと考えるのが妥当だろう。
主な産地・ゆかりの深い地域としては以下が挙げられる。
東北地方(福島県、宮城県、山形県、岩手県、秋田県)はくるみゆべしの一大産地であり、特に福島県は「かんのや」「三万石」「柏屋」「大黒屋」「みよし堂」「長門屋」など多数の有名メーカーがひしめくゆべし激戦区である。石川県、愛媛県西条市、岡山県(高梁市・矢掛町)は柚子を用いた伝統的なゆべしの産地として名高い。熊本県菊池市・人吉球磨地区では柚子と味噌を使う独自のゆべしが郷土料理として受け継がれている。奈良県十津川村では、珍味タイプの「十津川ゆべし」が古来からの製法を今に残している。長野県天龍村では、柚子を丸ごと使った素朴なゆべしが「スローフード」として注目されている。
有名な商品
全国には数多くのゆべしメーカーが存在する。以下に代表的な商品を紹介する(価格は税込み、時期により変動の可能性あり)。
かんのや(福島県郡山市)
家伝ゆべし 福島県を代表するゆべしの老舗。1860年(万延元年)創業。看板商品「家伝ゆべし」は、鶴が翼を広げた姿に見立てた独特の三角形で、中にこしあんが入っている。表面にまぶされたケシの実の食感がアクセント。6個入り713円、12個入り1,836円ほど。くるみ入りの「家伝くるみゆべし」(5個入り540円)も人気が高い。賞味期限は製造日より7日(家伝ゆべし)、16日(家伝くるみゆべし)。
三万石(福島県郡山市)
「ままどおる」で全国的に知られる三万石が手がけるくるみゆべし。一口サイズで食べやすく、もちもちとした食感が特徴。10個入り1,210円、20個入り1,690円。賞味期限は製造日翌日から8日。
柏屋(福島県郡山市)
1852年(嘉永5年)創業の老舗。「薄皮饅頭」で有名な柏屋が作るくるみゆべしは「もちずり」の名で親しまれる。柔らかめの生地にくるみの香ばしさが絶妙にマッチする。5個入り540円、10個入り1,188円。賞味期限は製造日より15日。
長門屋(福島県会津若松市)
嘉永元年(1848年)創業の会津の老舗菓子処。「花雪」は雪深い会津の空を花びらのように舞う雪を表した商品名。5個入り720円、10個入り1,450円。金ごまゆべし「月舟」も人気。
大黒屋(福島県郡山市)
くるみゆべし 厳選したもち米とくるみを使用し、無添加にこだわる。本醸造醤油の香ばしさが特徴。5個入り540円、8個入り898円、10個入り1,070円。賞味期限は製造日より14日。
星加のゆべし(愛媛県西条市)
慶応3年(1867年)創業。柚子を丸ごと使った伝統的な「まるゆべし」は1個1,620円(木箱入り)と高級品。手軽に楽しめる「一口ゆべし」は3個入り420円。竹の皮に包まれた棒ゆべしの伝統を守り続けている。
みよし堂(福島県郡山市)
大正時代創業。昭和末期に独自製法を編み出し、くるみ・ごま・抹茶・ゆず・あん入りなど8種類のゆべしを展開。4個入り475円、お試しセット1,280円。賞味期限は製造日より10日。
味や食感などの特徴
ゆべしの味と食感は、タイプによって大きく異なる。
くるみゆべし(東北地方)の最大の特徴は、もちもちとした生地とくるみのザクザクとした食感のコントラストにある。味付けは醤油ベースのものが多く、甘さの中にほんのりと塩気や香ばしさが漂う独特の風味を持つ。黒砂糖を使うものはコクのある深い甘みが加わり、水飴を多用するものは生地がとろりと柔らかくなる。全体として「素朴で懐かしい味わい」と表現されることが多く、日本茶との相性が抜群である。
生地の食感はメーカーによってさまざまで、弾力が強くプリッとした噛み応えのあるもの、ふにゃりと柔らかく口の中でとろけるようなもの、餅そのもののようにどっしりとした重量感のあるものなど、個性豊かだ。くるみの大きさや量もメーカーごとに異なり、大ぶりのくるみがゴロゴロと入ったものから、細かく刻んで生地に均一に練り込んだものまでバリエーションに富んでいる。
柚子ゆべし(西日本)は、柚子の爽やかな香りが前面に出る上品な味わいが持ち味。餅粉をベースにした生地に柚子の皮や果汁が練り込まれ、噛むたびに柚子の芳香が口いっぱいに広がる。甘さは控えめから中程度のものが多く、お茶請けとしても、食後の口直しとしても楽しめる。
丸柚餅子は、数か月の乾燥工程を経ることで柚子の風味が凝縮され、濃厚で複雑な味わいを持つ。餅の食感はねっとりと濃密で、噛みしめるほどに柚子と味噌の風味が混然一体となって広がる。薄く切って酒の肴にしたり、茶席の菓子として供されたりする格調高い一品である。
珍味タイプは甘みよりも塩気や味噌の旨味が主役で、酒の肴やご飯のおともとして楽しまれる。柚子の香りが味噌や山椒のスパイシーさと調和し、奥深い味わいを生む。
どんな場面やどんな人におすすめ
ゆべしは、その多様な姿から幅広いシーンで活躍するお菓子である。
旅行やビジネス出張のお土産として、特に東北地方を訪れた際のお土産にくるみゆべしは最適だ。個包装のものが多く配りやすいうえ、日持ちも比較的良い(7日〜20日程度)。福島県や宮城県の定番土産として、多くの人に喜ばれる。
お茶の時間のお供として、日本茶はもちろん、ほうじ茶や抹茶との相性が抜群。もちもちとした食感と上品な甘さは、ゆったりとしたお茶の時間にぴったりだ。和菓子好きな方へのギフトや、茶道の席でのお茶菓子としてもふさわしい。
年配の方へのギフトとして、昔ながらの素朴な味わいは、特に年配の方に懐かしく喜ばれることが多い。柔らかい生地のものを選べば、歯が弱い方でも楽しんでいただける。
甘いものが苦手な方にも、くるみゆべしは醤油の風味が効いた甘じょっぱい味わいが特徴で、甘すぎるお菓子が苦手な方にも受け入れられやすい。珍味タイプであれば、甘さはほとんどなく、お酒好きな方への手土産に最適だ。
健康志向の方に、くるみにはオメガ3脂肪酸やビタミンEなどの栄養素が豊富に含まれており、和菓子は洋菓子に比べて脂質が少ない傾向にある。間食としてもヘルシーな選択肢のひとつとなりうる。
子どもから大人まで、素朴な味わいで添加物を使わないメーカーも多く、子どものおやつにも安心して与えられる。もちもちとした食感は子どもにも人気が高い(ただし、餅のように粘りがあるため、小さなお子さんには小さく切って与えるなど注意が必要)。
材料
ゆべしの材料はタイプによって異なるが、代表的なものを以下にまとめる。
くるみゆべし(東北タイプ)の主な材料
もち粉(または白玉粉・上新粉)、くるみ、砂糖(上白糖・黒砂糖・三温糖など)、醤油、水飴、水、片栗粉(打ち粉用)。メーカーによって味噌やみりんを加えることもある。
柚子ゆべし(西日本タイプ)の主な材料
もち粉(または上新粉)、柚子(皮・果汁)、砂糖、水飴、白味噌。
丸柚餅子の主な材料
柚子(丸ごと)、もち米粉、砂糖、味噌、山椒、くるみなどの木の実。
珍味タイプの主な材料
柚子(丸ごと)、味噌(白味噌・赤味噌)、山椒、くるみ、鰹節、醤油、酒。
レシピ(くるみゆべしの基本レシピ・家庭向け)
家庭でも比較的簡単に作れるくるみゆべしのレシピを紹介する。電子レンジを使えば15〜20分ほどで完成する。
材料(約12個分)
もち粉(または白玉粉)100g、くるみ 40g、きび砂糖(または黒砂糖)80g、醤油 大さじ1、水 150ml、片栗粉(打ち粉用)適量。
作り方
- 第一の工程として、くるみの下準備を行う。くるみをフライパンで中火にかけ、香ばしい匂いがするまで乾煎りする。粗熱が取れたら、粗みじん切りにしておく。
- シロップを作る。小鍋にきび砂糖、醤油、水を入れて中火にかけ、砂糖が完全に溶けるまで混ぜながら加熱する。沸騰させる必要はなく、40〜50℃程度で十分に溶ける。
- 生地を作る。耐熱ボウルにもち粉を入れ、第二の工程で作ったシロップを少しずつ加えながらゴムベラでよく混ぜる。ダマにならないよう少量ずつ加えるのがポイント。均一な生地になったら、ふんわりとラップをかける。
- 加熱である。電子レンジ(600W)で2分加熱し、一度取り出してゴムベラでよく混ぜる。再び2分加熱し、またよく混ぜる。生地に透明感が出て、粘りが強くなれば加熱完了。この段階で炒ったくるみを加え、手早く混ぜ込む。
- 成形と冷却を行う。バットやまな板に片栗粉をたっぷりとふり、熱い生地を流し入れる。上面にも片栗粉をまぶし、手で均一な厚さ(2cm程度)に整える。粗熱が取れたら冷蔵庫で1〜2時間冷やす。
- 好みの大きさに切り分けて完成。
包丁に片栗粉をつけると切りやすい。
ポイント
黒砂糖を使うとコクが出て本格的な味わいに近づく。水飴を砂糖の半量程度加えると、しっとり柔らかい食感になる。醤油の量を増やすと「甘じょっぱさ」が強くなり、好みで調整できる。
販売温度帯
ゆべしの販売温度帯は、商品の種類や季節によって異なる。
くるみゆべし(東北タイプ)は、常温販売が基本である。直射日光や高温多湿を避けた常温保存で、7日〜20日程度の賞味期限が設定されているものが一般的。夏季のみ「要冷蔵」と表記するメーカーもある。
丸柚餅子・珍味タイプは、冬場は常温、夏場は要冷蔵としているメーカーが多い。保存性は比較的高いが、開封後はラップなどで密閉して冷蔵保存が推奨される。
冷凍販売も一部のメーカーや通販では行われており、解凍後に常温で食べるスタイルも広まりつつある。冷凍することで賞味期限を大幅に延ばせるメリットがある。
主な流通形態
ゆべしは主に以下の形態で流通している。
駅構内の土産店、空港売店、高速道路SA・PA、百貨店の銘菓コーナー
最も一般的なのは個包装による箱入りで、お土産・ギフト用として駅構内の土産店、空港売店、高速道路SA・PA、百貨店の銘菓コーナーなどで販売されている。5個入り〜20個入り程度の箱入りが中心で、のし紙対応の贈答用パッケージも用意されていることが多い。
メーカーの直営店舗や本店
バラ売りやカット販売(切り落としなど)が行われていることもある。岩手県の千秋堂による「くるみゆべし切り落とし」のように、リーズナブルなパック詰め商品も人気がある。
ネット通販
近年は楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazon、メーカー公式オンラインショップなど通販での流通が活発化しており、全国どこからでも各地の銘品ゆべしを取り寄せることが可能になっている。
百貨店の物産展・催事
東北物産展や全国銘菓展などで多くのゆべしメーカーが出店している。
価格帯
ゆべしの価格帯は種類と品質によって幅広い。
くるみゆべし(東北タイプ)は最も手頃で、バラ売りで1個100円〜150円程度、箱入りで5個入り500円〜700円、10個入り1,000円〜1,600円程度が目安。切り落としタイプであれば1パック300円前後から購入できるものもある。
柚子ゆべし(西日本タイプ)は一口サイズのもので3個入り400円程度から、棒状のものは1本500円〜800円程度。
丸柚餅子は最も高価で、1個1,620円〜3,000円程度。数か月かけて手作業で仕上げる手間を反映した価格設定となっている。2個入りで3,400円前後、3個入りで5,000円前後のものもある。
珍味タイプは真空パック70g入りで500円〜1,000円程度が相場。
全体として、日常のおやつから高級贈答品まで、幅広い価格帯をカバーしているのがゆべしの特徴といえる。
日持ち
ゆべしの日持ちは種類によって大きく異なる。
くるみゆべし(東北タイプ)は製造日から7日〜20日程度が一般的。かんのやの「家伝ゆべし」は製造日より7日、「家伝くるみゆべし」は16日。柏屋の「もちずり」は15日。三万石の「くるみ柚餅子」は製造日翌日から8日。杵屋本店の「やまがたゆべし」は20日。千秋堂の「くるみゆべし切り落とし」は30日と比較的長い。
丸柚餅子・珍味タイプは保存性が高く、真空パックのものは3か月程度日持ちするものもある。ただし開封後は冷蔵保存で早めに食べきることが推奨される。
柚子の皮の佃煮タイプ(壱岐ゆべしなど)は、瓶詰めや真空パックで数か月の保存が可能。
いずれの場合も、直射日光・高温多湿を避けた保存が基本であり、夏季は冷蔵保存が望ましい。餅菓子タイプは時間が経つと硬くなる傾向があるため、できるだけ早めに食べるのが美味しく楽しむコツである。
アレンジ・バリエーション
ゆべしは伝統的な和菓子でありながら、現代ではさまざまなアレンジやバリエーションが生まれている。
味のバリエーション
定番のくるみゆべしに加え、ごまゆべし(黒ごまや金ごまを練り込んだもの)、抹茶ゆべし、柚子ゆべし、しそゆべし、黒糖ゆべし、ずんだゆべし(宮城県)など、多彩なフレーバーが展開されている。福島県のみよし堂は8種類ものゆべしを製造しており、食べ比べセットも人気が高い。
あんこ入りゆべし
福島県を中心に発展したバリエーション。かんのやの「家伝ゆべし」のようにこしあんを包んだものや、みよし堂の「あんくるみ丸ゆべし」のように自家製あんをくるみゆべし生地で包んだものがある。
形状のバリエーション
福島県では鶴を模した三角型(かんのや)、小判型、棒状を切り分けたもの、丸型など多彩な形状が共存している。秋田県にはロールケーキのように巻いたゆべしもある。山形県では一つひとつ手作業で丸く成形する伝統的な製法が守られている。
食べ方のアレンジ
冷蔵庫でしっかり冷やすとより弾力が増してきゅっとした食感に、逆にトースターやレンジで軽く温めるととろりと柔らかくなり、また違った味わいが楽しめる。バニラアイスクリームを添えて食べる和洋折衷のアレンジも人気がある。薄く切った丸柚餅子にクリームチーズを合わせるのは、ワインのおつまみとして通好みの楽しみ方。
季節限定商品
苺ゆべし、栗ゆべしなど、旬のフルーツや食材を取り入れた季節限定品を発売するメーカーも増えている。
自家製アレンジ
家庭で作る際にはチョコレートチップを加えたチョコゆべし、きな粉をまぶしたきな粉ゆべし、ピーナッツやアーモンドなど別のナッツを使ったアレンジも試されている。生地にココアパウダーを加えると、洋風の見た目と味わいになり、子どもにも好評だという。
このように、ゆべしは800年以上の歴史を持ちながらも、現代の食文化のなかで新たな進化を続けている。伝統を大切にしつつ、新しい味わいやスタイルを生み出し続けるゆべしの世界は、和菓子の奥深さと可能性を教えてくれる存在である。
