お菓子の名前(日本語)
上用饅頭(じょうようまんじゅう)
※別名:薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)
お菓子の名前(外国語)
英語:Jōyō Manju / Joyo Manju(Steamed yam bun with sweet bean paste filling)
お菓子の分類
和菓子 > 生菓子 > 蒸し物(蒸し菓子) > 饅頭類 > 薯蕷饅頭
上生菓子にも分類される格式高い和菓子
どんなお菓子
上用饅頭とは、すりおろした山芋(大和芋やつくね芋など)を米粉(上用粉)・砂糖と合わせて練り上げた生地で、小豆のこし餡を包み、蒸し上げた日本の伝統的な和菓子です。純白で丸みを帯びた美しい外観が特徴で、しっとりとしたきめ細やかな皮と、上品な甘さの餡が調和した、和菓子の中でも特に格式が高い一品として知られています。
小麦粉ベースの一般的な饅頭と異なり、膨張剤(ベーキングパウダー等)を一切使用せず、山芋が持つ天然の粘りと弾力だけで生地をふっくらと膨らませるのが最大の特徴です。そのため、素材の品質や職人の技量がそのまま仕上がりに現れ、「薯蕷饅頭を食べればその店のレベルがわかる」とまで言われます。シンプルな材料構成であるがゆえにごまかしがきかず、和菓子職人にとっては基本にして究極の菓子といえるでしょう。
古くから茶席の主菓子としてはもちろん、婚礼の引き出物、出産・入学の内祝い、法事の返礼品など、冠婚葬祭の場面で幅広く用いられてきました。紅白に染めた上用饅頭は「紅白饅頭」として慶事に欠かせない存在であり、白一色あるいは青白の上用饅頭は弔事の場面で配られます。日本人の人生の節目を彩る和菓子として、今なお深く生活に根付いています。
お菓子の名前の由来
上用饅頭という名前の由来には、主に二つの説があります。
第一の説は「上に用いる饅頭」という意味に由来するものです。砂糖や小豆がきわめて高価だった時代、甘い饅頭は一般庶民にはとうてい口にできない贅沢品であり、貴族など身分の高い人だけが食べることを許されたものでした。そこから「上(位の高い人)に用いる饅頭」、すなわち「上用饅頭」と名付けられたとする説です。この説は広く知られており、多くの和菓子店でもこの由来が紹介されています。
第二の説は、本来の名称「薯蕷(じょうよ)饅頭」が転じたとするものです。「薯蕷」とは山芋の漢名であり、この山芋をすりおろして皮に用いた饅頭を「薯蕷饅頭」と呼んでいました。「じょうよ」の音が「じょうよう」に変化し、それに「上用」という漢字が当てられるようになったという説です。
さらに第三の説として、生地に使う米粉「上用粉」(うるち米を細かく挽いた粉)を用いて作ることから「上用饅頭」と呼ばれるようになったとする解釈もあります。
いずれの説も定説とまでは言い切れませんが、歴史的経緯を考えると、これら複数の由来が複合的に重なり合って「上用饅頭」という呼称が定着していったものと考えられています。現在では「薯蕷饅頭」と「上用饅頭」は実質的に同義語として使われており、地域や店舗によって呼び方が異なります。関西では「薯蕷饅頭」、関東では「上用饅頭」と呼ぶ傾向がやや強いとされますが、厳密な区分ではありません。
お菓子の歴史
上用饅頭の歴史を語るうえで、まず日本における饅頭そのものの伝来から紐解く必要があります。
日本の饅頭の起源は、南北朝時代の貞和5年(1349年)に遡ります。中国(元)の浙江省出身の林浄因(りんじょういん)という人物が、留学先の元から帰国する建仁寺の僧・龍山徳見(りゅうざんとくけん)に随行して来日し、奈良に居を定めました。当時の中国では肉を入れた饅頭(肉まんの原型)が一般的でしたが、肉食を禁じられていた日本の禅僧のために、林浄因は甘葛煎(あまづらせん)という植物由来の甘味料で小豆を煮詰めて餡を作り、これを皮で包んだ「甘い餡入り饅頭」を日本で初めて考案しました。この画期的な饅頭は寺院に集う上流階級の人々の間で評判を呼び、やがて宮中に献上されるまでになりました。
林浄因の子孫は奈良で饅頭づくりを続け、その後「塩瀬」を名乗るようになります。特に7代目の林紹絆(りんしょうはん)は饅頭研究のために中国に留学し、宮廷料理に着想を得て山芋を用いた「薯蕷饅頭」を考案したとされています。これが現在の上用饅頭の直接的な原型です。室町時代の将軍・足利義政は塩瀬の饅頭を大いに気に入り、「日本第一番饅頭所 林氏塩瀬」と記した看板を直筆で下賜したと伝えられています。
室町時代から江戸時代にかけて、薯蕷饅頭は「薬饅頭」とも呼ばれ、山芋のことを「薬薯(くすりいも)」と称したことに由来します。この時期の薯蕷饅頭は非常に高価なもので、ごく限られた上流階級や茶人だけが口にできる特別な存在でした。
転機が訪れたのは明治時代です。上白糖が豊富に流通するようになり、京都を中心に一般の人々も薯蕷饅頭を食べられるようになりました。一方、戦前の関東では丸薯(山芋の一種)の入手が困難であったため、薯蕷饅頭を製造する店はごく一部に限られていたといいます。
現在では全国の和菓子店で広く作られており、茶道の世界では最も正式な主菓子のひとつとして、また冠婚葬祭の贈答品として、日本の食文化に深く根付いた存在となっています。奈良市の漢國神社(かんごうじんじゃ)境内にある林神社では、毎年4月19日に「饅頭祭」が執り行われ、菓子業界の繁栄が祈願されています。林浄因は「饅頭の祖神」として祀られ、全国の菓子業者が参拝に訪れます。
発祥の地
上用饅頭(薯蕷饅頭)の歴史的な発祥地は日本・奈良県奈良市です。1349年に中国から渡来した林浄因が奈良に住み、日本で初めての餡入り饅頭を作ったことが始まりとされています。林浄因が住んだ場所は現在の奈良市林小路町付近と伝えられています。
ただし、現在の薯蕷饅頭の形(山芋を皮に使う製法)が確立されたのは、塩瀬7代目・林紹絆の時代であり、その後京都の茶の湯文化とともに洗練されていきました。現在では京都が薯蕷饅頭の名産地として特に知られていますが、東京・大阪をはじめ全国各地に優れた薯蕷饅頭を作る和菓子店が存在します。
有名な商品(メーカー名と商品名と販売価格)
上用饅頭は全国各地の和菓子店で製造・販売されていますが、特に有名な商品をいくつか紹介します。なお、価格は変動する場合がありますので、購入時は各店舗の最新情報をご確認ください。
塩瀬総本家(東京都中央区)「志ほせ饅頭」
日本における饅頭の元祖・林浄因の子孫が営む創業1349年の超老舗です。「志ほせ饅頭」は大和芋と米粉の皮で甘さ控えめのこし餡を包んだ一口サイズの薯蕷饅頭で、日本三大饅頭のひとつに数えられています。9個入り1,760円(税込)、20個入り3,240円(税込)程度で販売されており、賞味期限は常温で約10〜14日です。純白の美しい饅頭に「志ほせ」の焼印が押された上品な佇まいは、贈答品として高い人気を誇ります。
たねや(滋賀県近江八幡市)「薯蕷饅頭(慶事用)」
京都産のつくね薯(いも)をすりおろして作ったきめ細かな生地に、北海道産小豆のこし餡と白餡の二重餡を包んだ紅白の上用饅頭です。小サイズ2個入り1,188円(税込)、大サイズ2個入り2,160円(税込)で販売されています。店舗限定・要予約(5日前まで)の商品で、配送には対応していません。日保ちは2日と非常に短く、まさに作りたてのおいしさを味わう贅沢な一品です。
鶴屋吉信(京都市上京区)「薯蕷饅頭 紅白」
享和3年(1803年)創業の京都・西陣の老舗和菓子店が手がける薯蕷饅頭です。丹波産のつくね芋と上用粉を職人が力強く練り上げて仕立てた皮は、柔らかく粘りがあり、素材そのものの風味が生きています。紅白2個入り1,080円(税込)、5個入り2,160円(税込)で、製造日より3日の日保ちです。こちらも店舗限定の予約商品となっています。
くり屋南陽軒(岐阜県中津川市)「じょうよ饅頭」
北海道産小豆を使用した上品な薯蕷饅頭で、6個箱入り980円(税込)、15個箱入り2,450円(税込)とやや手頃な価格設定が魅力です。通販にも対応しており、自宅用や気軽な贈り物として利用しやすい商品です。
如水庵(福岡県福岡市)「薯蕷饅頭」
九州を代表する和菓子店が手がける薯蕷饅頭で、茶席菓子や慶弔菓子として店頭予約販売されています。すりおろしたつくね芋の風味を活かした、ふっくらとした仕上がりが特徴です。
味や食感などの特徴
上用饅頭の最大の魅力は、山芋由来のしっとりとした皮の食感にあります。口に含むと、まず皮の滑らかでもっちりとした弾力が感じられ、続いて中のこし餡のなめらかな甘みが広がります。小麦粉の饅頭とはまったく異なるきめ細やかな質感で、口当たりは非常に上品かつ繊細です。
皮の部分はすりおろした山芋の力で膨らんでいるため、ふっくらと軽やかでありながら、しっとりとした水分感があります。山芋のほのかな風味が感じられることも特徴のひとつで、この風味が餡の甘さと絶妙に調和しています。膨張剤を使用していないため、蒸し上がりの自然な風味と、素材そのものの味わいを堪能できます。
中に包まれる餡は、一般的にはこし餡が使われます。上質な小豆を丁寧に裏ごしして作ったなめらかなこし餡は、甘さが控えめで上品な風味です。店舗によっては粒餡や白餡を使う場合もあり、たねやのように「こし餡と白餡の二重餡」を用いて奥行きのある味わいを生み出している商品もあります。
関東と関西では微妙な食感の違いがあることも興味深い点です。関東では大和芋を使い、上用粉と砂糖を先に混ぜ合わせてからすりおろした芋を加えるため、表面のキメが細かくつやのある美しい仕上がりになります。一方、関西ではつくね芋を使い、すりおろした芋に砂糖を加えてから上用粉を混ぜる順番で作るため、表面の美しさでは関東にやや劣るものの、中身はよりしっとりふわふわとした食感に仕上がります。
できたてのほんのり温かい状態が最もおいしいとされ、蒸したてを提供する和菓子店では、職人自身も「この味をお客様に直接お届けできないのが悔しい」と語るほどです。ただし、常温に戻した状態でも十分にその魅力は味わえます。
どんな場面やどんな人におすすめ
上用饅頭は、日本の冠婚葬祭のあらゆる場面に適した万能の和菓子です。具体的にどのような場面で活躍するのかを見ていきましょう。
慶事の場面では、結婚式の引き出物や出産内祝い、入学・卒業のお祝い、七五三、還暦・古希などの長寿祝い、新築祝い、開店祝いなどで紅白の上用饅頭が贈答品として選ばれます。丸い形には「円満な家庭を築けるように」という願いが込められており、紅白の色合いはおめでたい席にふさわしい華やかさを添えます。
弔事の場面では、葬儀・法事の返礼品や香典返しとして白一色、または青白の上用饅頭が配られます。葬儀で饅頭を配る風習には、故人が現金を手放して高価な饅頭を参列者に分け与える「財施」を行うことで成仏しやすくなるという仏教的な考え方が背景にあるとされています。
茶道の場面では、薄茶席・濃茶席を問わず主菓子として用いられます。シンプルで上品な味わいが抹茶との相性に優れており、季節を問わず通年使える点も重宝されます。焼印や色付けで季節感を表現することもできるため、茶人にとって非常に使い勝手のよい菓子です。
人としては、目上の方への手土産や贈り物を探している方に特におすすめです。上用饅頭の格式高い佇まいと老舗の伝統が、敬意と感謝の気持ちを伝えるのにふさわしいでしょう。また、甘いものが好きだけれど上品な味わいを好む方、小麦アレルギーのある方(ただし山芋アレルギーがないことが条件で、店舗によっては小麦粉を併用する場合もあるため確認が必要です)、日本の伝統的な和菓子に興味がある外国の方への贈り物としても喜ばれます。
材料
上用饅頭の材料は非常にシンプルで、基本的には以下の素材で構成されています。
皮の材料は、山芋(大和芋、つくね芋、伊勢芋などの粘りの強い品種)、上白糖、上用粉(うるち米を細かく挽いた米粉)の三つです。山芋はすりおろして使用し、この山芋が持つ天然の粘りが皮をふっくりと膨らませる役割を果たします。上用粉は一般的な米粉よりもきめが細かく、滑らかな生地を作るために欠かせません。砂糖は上白糖が基本ですが、店舗によってはグラニュー糖を使う場合もあります。
餡の材料は、小豆(主に北海道産のエリモショウズなどの上質品種)と砂糖(ざらめ糖や上白糖)です。一般的にはこし餡が使われますが、粒餡や白餡(白いんげん豆ベース)を使う場合もあります。
そのほか、紅白饅頭にする場合は食紅(赤色着色料)を少量使用します。焼印を入れる場合もありますが、これは仕上げの装飾であり材料には含まれません。
注目すべきは、小麦粉や膨張剤を一切使用しないという点です。一般的な饅頭の多くが小麦粉とベーキングパウダー(重曹)で生地を作るのに対し、上用饅頭は山芋の力だけで膨らみを出します。この点が上用饅頭を他の饅頭と一線を画す存在にしています。ただし、店舗によっては小麦粉を少量加えるレシピを採用している場合もあるため、アレルギーのある方は事前に確認することをおすすめします。
レシピ
ここでは家庭でも挑戦できる基本的な上用饅頭のレシピを紹介します。約10個分の分量です。
材料(約10個分)
皮には山芋(大和芋)すりおろして35〜40g、上白糖65g、上用粉(米粉)40gを用意します。餡にはこし餡250g(1個あたり約25g)を使用します。また、手粉用に上用粉を適量、仕上げ用に霧吹きの水(酢をほんの少し加えると変色防止になります)を用意します。
準備
こし餡を10等分(各25g)にして丸めておきます。蒸し器に水を入れて火にかけ、蒸気が十分に上がる状態にしておきます。蒸し器の蓋には布巾を巻いて、水滴が饅頭に落ちるのを防ぎます。
作り方
- 山芋の皮をむいてすりおろし、すり鉢やボウルに入れてしっかりとすり混ぜ、空気を含ませるようにします。粘りが十分に出たら上白糖を2〜3回に分けて加え、そのたびによくすり混ぜて全体になじませます。砂糖が完全に溶けて生地に艶が出てきたら、上用粉をふるい入れ、切るように混ぜ合わせます。粉っぽさがなくなり、ひとまとまりになったら生地の完成です。こねすぎると生地が硬くなるので注意が必要です。
- 手粉をつけた手で生地を10等分し、一つずつ丸く伸ばして餡を包みます。生地を掌の上で薄く円形に広げ、中央に餡を置き、生地の端を少しずつ引き上げながら包み込みます。閉じ目をしっかりとつまんで閉じ、丸く成形します。
- 蒸し器にクッキングシートを敷いた上に饅頭を並べ(間隔を十分にあける)、霧吹きで軽く水をかけてから強火で約12〜15分蒸します。蒸し上がりの目安は、表面がふっくらと膨らんで割れる寸前の状態です。この「割れる直前」を見極めるのが職人技の真髄とされています。
- 蒸し上がったら蒸し器から取り出し、うちわなどで手早くあおいで粗熱を取ります。急速に冷ますことで、表面につやが出て美しく仕上がります。
コツと注意点
山芋は粘りの強い大和芋やつくね芋を使用することが重要です。長芋では水分が多すぎて生地がまとまりにくくなります。生地は作ったらすぐに使い切り、時間を置くと山芋が変色して仕上がりが悪くなります。蒸し器の蒸気は十分に上がった状態で入れること、そして強火で一気に蒸すことがふっくら仕上げるポイントです。
販売温度帯
上用饅頭は基本的に常温で販売されます。和菓子店の店頭では、当日製造したものを常温の状態でショーケースに並べるのが一般的です。
ただし、一部の商品では冷蔵販売される場合もあります。特に夏場や日持ちを少しでも延ばしたい場合には冷蔵保存が推奨されることがあります。通信販売の場合も、配送中の品質保持のために冷蔵便で届けられるケースがあります。
なお、自宅での保存においては冷凍保存も可能で、個別にラップで包んで冷凍すれば2〜3週間程度は風味を保つことができます。食べる際は自然解凍した後、蒸し器で軽く温め直すと、できたてに近いしっとりとした食感が蘇ります。
主な流通形態
上用饅頭の流通形態は大きく分けて以下のとおりです。
和菓子店での店頭販売
全国各地の和菓子専門店で製造・販売されており、特に慶弔用の紅白饅頭や青白饅頭は予約制で受け付けている店舗が多いです。たねやや鶴屋吉信など老舗では、5日前までの事前予約が必要な商品もあります。
百貨店・デパートの和菓子売り場
塩瀬総本家の志ほせ饅頭などは全国の主要百貨店で購入可能です。贈答用の箱入り商品が中心で、のし紙や包装の対応も充実しています。
通信販売(オンラインショップ)
塩瀬総本家やくり屋南陽軒などは自社オンラインショップのほか、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなどの通販モールでも販売しています。日持ちの長い商品(志ほせ饅頭の賞味期限は約10〜14日)は通販に向いていますが、日保ち2〜3日の生菓子タイプは店頭限定となる場合がほとんどです。
冠婚葬祭向けの注文販売
上用饅頭の需要として非常に大きな割合を占めます。結婚式場や葬儀社を通じて和菓子店に発注されるケースが多く、焼印入りのオリジナル商品や、個数・サイズの指定に応じた受注生産が行われています。
価格帯
上用饅頭の価格は、店舗の格、商品のサイズ、包装の仕様などによって幅があります。
1個あたりの価格の目安としては、一般的な和菓子店で150円〜300円程度、老舗の高級店では300円〜600円程度です。たねやの慶事用薯蕷饅頭(大サイズ)は1個あたり約1,000円と、特に高価な部類に入ります。
贈答用の箱入り商品としては、塩瀬総本家の志ほせ饅頭が9個入り1,760円(税込)、鶴屋吉信の薯蕷饅頭紅白が2個入り1,080円(税込)、くり屋南陽軒のじょうよ饅頭が6個入り980円(税込)といった価格設定です。
冠婚葬祭の引き出物として大量注文する場合は、1個あたりの単価が下がることが一般的で、1個100円〜200円程度で注文できる店舗もあります。全体として、上用饅頭は和菓子の中ではやや高価な部類に属しますが、その格式の高さと使用される素材の品質を考えれば、納得のいく価格帯といえるでしょう。
日持ち
上用饅頭は生菓子であり、日持ちは比較的短いお菓子です。
一般的な和菓子店の手作り上用饅頭の場合、常温での日持ちは2〜3日が目安です。山芋と米粉で作られた皮は時間の経過とともに硬くなりやすく、風味も落ちていくため、購入当日〜翌日に食べるのが最もおいしくいただけます。たねやの薯蕷饅頭(慶事用)は「日保ち2日」、鶴屋吉信の薯蕷饅頭紅白は「製造日より3日」と明記されています。
一方、塩瀬総本家の志ほせ饅頭のように、製法や包装の工夫によって常温で10〜14日の賞味期限を実現している商品もあります。通販での取り扱いが可能なのは、こうした比較的日持ちのする商品が中心です。
冷凍保存した場合は2〜3週間程度、風味を保つことが可能です。食べる際は自然解凍後、蒸し器で軽く蒸し直すと、しっとりとした食感が戻ります。電子レンジで温める方法もありますが、加熱しすぎると皮が硬くなるため、短時間(10〜20秒程度)にとどめるのがコツです。
いずれにしても、上用饅頭は鮮度が命の和菓子です。できる限り早めに食べることをおすすめします。
アレンジ・バリエーション
上用饅頭はシンプルな構成であるがゆえに、さまざまなアレンジやバリエーションが生まれています。
紅白饅頭
最も代表的なバリエーションで、白い皮と食紅で薄紅色に染めた皮の2種を一対にしたものです。慶事全般に用いられ、紅がこし餡、白が粒餡というのが一般的な組み合わせですが、店舗によって異なります。
青白饅頭
弔事用のバリエーションで、食紅の代わりに青色(緑がかった色)の着色を施した饅頭と白い饅頭を組み合わせたものです。葬儀や法事の返礼品として用いられます。
織部饅頭
薯蕷生地に抹茶を練り込んで緑色に仕上げたものです。茶道の大成者・古田織部にちなんで名付けられたとされ、茶席菓子として人気があります。抹茶のほろ苦さと餡の甘さの対比が楽しめます。
栗上用饅頭
餡の中に栗の甘露煮を入れたり、栗餡を使用したりするバリエーションです。秋の茶席菓子として特に好まれ、京都の「京みずは」の「天上天鼓」は蕎麦粉風味の薯蕷生地で栗入りこし餡を包んだ名品として知られています。
焼印入り上用饅頭
表面に「寿」「祝」「御礼」などの文字や、松竹梅・鶴亀などの慶事にふさわしい意匠の焼印を押したものです。企業の周年記念や学校行事などに合わせたオリジナル焼印にも対応する店舗が多く、鶴屋吉信では10周年から100周年まで各種の周年焼印に対応しています。
かるかん饅頭
九州地方で親しまれている山芋を使った蒸し菓子で、上用饅頭の親戚ともいえる存在です。上用粉の代わりにかるかん粉(米粉の一種)を用い、よりふわふわとした軽い食感に仕上げるのが特徴です。鹿児島県の銘菓として全国的に知られています。
季節の上用饅頭
春は桜の葉や桜餡を使った桜上用饅頭、夏は柚子や梅を取り入れたもの、秋は栗や紫芋を使ったもの、冬はゆず餡や黒糖を使ったものなど、四季折々の素材と組み合わせたバリエーションが各店舗で工夫されています。
近年では、従来の枠にとらわれない現代的なアレンジも登場しています。塩瀬総本家が発売した「LIN」シリーズは、伝統的な薯蕷饅頭の技法をベースにしながらも、現代的な感性でパッケージや味わいをリデザインした意欲的な商品です。このように、600年以上の歴史を持つ上用饅頭は、伝統を守りながらも常に進化を続けている和菓子なのです。
