材料の名前(日本語・外国語)

「加糖卵黄」は読んで字のごとく、卵黄に砂糖を加えた製品を指す。正式な商品名としては「加糖凍結卵黄」と表記されることが多く、製菓・製パン業界では日常的に使われる業務用の卵素材である。

英語では「Sweetened Egg Yolk」または「Sugared Egg Yolk」と呼ばれ、凍結タイプのものは「Frozen Sweetened Egg Yolk」と表記される。フランス菓子の現場でも「Jaune d’œuf sucré(ジョーヌ・ドゥフ・スュクレ)」という表現で通じる。業界の発注書や食品表示では「加糖凍結卵黄20」のように、砂糖の配合割合を数字で付記するのが一般的だ。

食品表示の原材料欄には「加糖卵黄」とそのまま記載されることもあれば、「卵黄(卵を含む)、砂糖」のように分けて書かれる場合もある。アイスクリームやプリン、焼き菓子のパッケージ裏をよく見ると、この表記に出合う機会は少なくない。

特徴

加糖卵黄とは、新鮮な鶏卵から卵黄だけを機械的に分離(セパレート)し、そこに砂糖を20%加えたうえで殺菌・凍結した製品である。卵黄と砂糖の配合割合は「卵黄80%:砂糖20%」、つまり4対1。100gの加糖卵黄には、80gの卵黄と20gの砂糖が含まれている計算になる。

では、なぜわざわざ砂糖を加えるのか。これには科学的な理由がある。

卵黄をそのまま冷凍すると、解凍したときにゴムのように固くなり、もとの滑らかな液状に戻らなくなる。この現象は「ゲル化」と呼ばれ、卵黄中のプラズマに含まれる低密度リポタンパク質(LDL)が凍結によって構造変化を起こすことが主な原因だとされている。ゲル化した卵黄はお菓子づくりにはまったく使えない。そこで、あらかじめ砂糖を溶かし込んでおくことでLDLの凍結変性を抑制し、解凍後もなめらかな状態を保てるようにしている。塩を加えた「加塩卵黄」も同じ原理で、料理用途にはそちらが使われる。

殺菌処理も重要なポイントだ。一般的な加糖卵黄は64~65℃で3.5分から30分ほど加熱殺菌されており、サルモネラ菌などの食中毒リスクを大幅に低減している。殻付き卵の場合、割卵時に殻の破片が混入する可能性があるが、工場でセパレートされた加糖卵黄にはそうしたリスクがない。

解凍後の見た目は、割ったばかりの卵黄に砂糖を混ぜたものとほぼ変わらない。鮮やかな黄色で、粘度もある。パティシエのなかには「殻付き卵の卵黄と比べて起泡性や風味がやや劣る」と感じる人もいるが、「安定した品質で使いやすく、実用上の差はほとんどない」と評価する専門家も多い。

保存は-18℃以下の冷凍状態で行い、賞味期限は製造日から1年半~2年程度に設定されている製品が多い。解凍は流水解凍か冷蔵庫解凍が推奨されており、室温での自然解凍は腐敗のおそれがあるため避けるべきとされている。

用途

加糖卵黄は、その名のとおり甘みが加わっているため、主に製菓・製パン分野で活躍する。

まず挙げられるのがカスタードクリームだ。プリンやシュークリーム、クレームブリュレなど、卵黄をたっぷり使うお菓子は多い。加糖卵黄を使えば、レシピに記載された砂糖の分量から、加糖卵黄にすでに含まれている砂糖分を差し引くだけで簡単に置き換えられる。具体的には、レシピの卵黄量に1.25をかければ、必要な加糖卵黄の量が算出できる。たとえば卵黄40gのレシピなら、加糖卵黄は50g。この50gのなかに砂糖10gが含まれているので、レシピの砂糖からその10gを引けばよい。

焼き菓子への利用も幅広い。サブレやクッキー、ガレットブルトンヌといったバター系の焼き菓子は卵黄のコクが決め手になるが、卵白は使わない。殻付き卵で作ると、余った卵白の使い道に困ることがある。加糖卵黄ならそもそも卵白が発生しないので、無駄がない。

製パンの分野ではブリオッシュが代表格だ。リッチな配合のパン生地に卵黄を加えると、しっとりとした食感と黄金色の焼き上がりが得られる。

アイスクリームやジェラートの製造にも欠かせない。卵黄の乳化作用がアイスのなめらかな口どけに寄与するため、業務用のアイスクリーム工場では加糖卵黄が日常的に使われている。

このほか、栗きんとんや黄身餡(きみあん)などの和菓子にも利用されることがあり、和洋を問わず幅広いジャンルで活躍する原材料といえる。

主な原産国と産地

加糖卵黄の原料となる鶏卵は、基本的に国産が中心だ。日本国内で流通する加糖卵黄の多くは「卵黄(国産)」と表記されている。

日本の鶏卵生産量は年間約250万トン前後で推移しており、そのうちおよそ2割が液卵・凍結卵・乾燥卵といった加工卵として出荷されている。鶏卵の主要産地としては茨城県、鹿児島県、千葉県、岡山県、広島県などが上位に並ぶ。

海外に目を向けると、アメリカやフランス、オランダなどの鶏卵生産大国でも、同様に凍結加糖卵黄(Frozen Sugared Egg Yolks)が製菓・食品加工用に流通している。アメリカでは大手鶏卵加工メーカーが冷凍卵黄製品を全米に供給しており、パン工場やアイスクリーム製造の現場で広く使われている。フランスでもCocotine社をはじめとするメーカーが殺菌済みの凍結加糖卵黄を製造し、パティスリーやブーランジェリーに届けている。

選び方とポイント

家庭用として加糖卵黄を購入する場合、まず確認したいのは砂糖の配合割合だ。現在流通している製品のほとんどは「20%加糖」で統一されているが、念のためパッケージの表記を確認しておくと安心である。

容量は業務用の1kg~2kgパックが主流だが、製菓材料の通販サイトでは500gサイズも取り扱われている。一度に使い切れない場合は、購入後すぐに冷凍庫から出して25~50gずつカットし、ラップで包んでフリーザーバッグに入れて再冷凍する方法が便利だ。凍った状態でも包丁でカットできるので、手早く作業するのがコツである。

解凍は必ず流水または冷蔵庫で行い、室温放置は避ける。少量なら冷蔵庫に入れて1~2時間で解凍できる。一度解凍した加糖卵黄は再冷凍せず、早めに使い切ることが望ましい。

選ぶ際のもうひとつのポイントは、殺菌方法の確認だ。製品によって「64℃・30分」や「65℃・3.5分」など殺菌条件が異なるが、いずれも安全基準を満たしている。気になる場合はメーカーの商品情報を参照するとよい。

また、レシピの卵黄を加糖卵黄に置き換える際は、卵黄と砂糖の比率(4:1)を頭に入れておくと配合ミスを防げる。砂糖が多いレシピほど置き換えの恩恵が大きいが、逆に砂糖をほとんど使わないレシピでは、加糖卵黄の砂糖分がレシピの砂糖量を上回ってしまう場合もあるため注意が必要だ。

メジャーな製品とメーカー名

加糖卵黄は業務用食材としての性格が強いため、スーパーの店頭に並ぶことはめったにない。購入は製菓材料の専門通販サイトや業務用食材店が主なチャネルとなる。代表的な製品とメーカーを以下に紹介する。

キユーピーは、日本における鶏卵加工の最大手として知られる存在だ。1961年に加熱殺菌済みの液卵を商品化して以来、卵の加工技術を磨き続けてきた。加糖卵黄の主力製品は「加糖凍結卵黄20」で、1kgパック(12本入りケース)と500gパックがある。業務用食材を扱う通販サイト「cotta(コッタ)」でも500gサイズが販売されており、個人のお菓子づくり愛好家にも手が届きやすい。

イフジ産業は、福岡県に本社を構える独立系液卵メーカーとして国内トップクラスのシェアを持つ企業だ。1972年の創業以来、液卵一筋で事業を展開してきた。「凍結20%加糖卵黄(殺菌)」は1kgパックで展開されており、殺菌条件は64℃・30分。原材料は卵黄(国産)と砂糖のみというシンプルな構成だ。同社はミニパック(1kg×6本)も用意しており、小規模なパティスリーや個人ユーザーにも対応している。

三州食品は、愛知県を拠点に養鶏から液卵・ゆでたまごの製造まで一貫体制で手がけるメーカーである。「PP20%加糖卵黄」は1kg×12本の業務用規格で、富澤商店の業務用サイトなどを通じて購入できる。殺菌条件は65℃・3.5分で、賞味期限は製造日から2年と長めに設定されている。

サンヨーエッグは千葉県に液卵工場を持ち、HACCP対応やISO22000認証を取得した衛生管理体制で知られる。「殺菌20%加糖冷凍卵黄」は1kg×12本入りで、賞味期限は未開封・冷凍保管で製造日起算18か月となっている。

歴史・由来

加糖卵黄の歴史を語るには、まず「加工卵」という概念の成り立ちから振り返る必要がある。

鶏卵を殻付きのまま流通させるのではなく、割卵して液状にした「液卵」や、それを凍結させた「凍結卵」として加工する技術は、欧米では19世紀後半から20世紀初頭にかけて発展した。大量の卵を使うパン工場や菓子工場にとって、割卵の手間を省き、衛生的に保存できる加工卵は画期的な存在だった。

日本における加工卵の歴史は、キユーピーの歩みと重なる部分が大きい。1925年にマヨネーズの製造・販売を開始したキユーピーは、製造過程で卵黄のみを使用するため、副産物として大量の卵白が発生した。この卵白を無駄にしないため、乾燥卵白として菓子やハムの材料に供給する事業を1935年頃から手がけるようになった。やがて卵白だけでなく、卵黄や全卵についても液状に加工して冷蔵・冷凍する技術が確立され、1961年には加熱殺菌済みの液卵が商品化されている。キユーピータマゴ株式会社はその後も卵の加工販売を担う中核企業として成長を遂げた。

一方、独立系の液卵メーカーも相次いで誕生した。イフジ産業は1964年に創業者の父が養鶏場を開いたことを起点とし、1972年に事業を卵一本に絞って液卵・冷凍卵の製造に乗り出した。卵が余剰になる時期に大量に買い付け、冷凍液卵として保存し、供給量が不足する冬場に安定供給するという需給調整の役割も果たしてきた。液卵は「食の半導体」とも呼ばれ、食品産業の安定稼働を支えるインフラ的な存在といえる。

凍結卵黄に砂糖を加えるという手法がいつ頃から始まったかについて、正確な年代を特定する資料は限られている。ただし、卵黄のゲル化を防止するために食塩やスクロース(ショ糖)を添加する方法は、凍結卵の保存技術が普及し始めた初期の段階から研究されてきたことが学術文献に記されている。酪農学園大学の研究論文でも、凍結卵黄のゲル化がプラズマの主要成分であるLDLに起因すること、スクロースの添加がこれを効果的に防止することが報告されている。

現在では、日本国内の鶏卵出荷量のおよそ2割が加工卵として流通しており、加糖卵黄はそのなかでも製菓用途を中心に安定した需要を持つ製品カテゴリーとなっている。近年は製菓材料の通販サイトが充実し、500gの小容量パックが個人でも手軽に購入できるようになったことで、家庭のお菓子づくりにも加糖卵黄が浸透しつつある。卵黄だけ使うレシピを作るたびに卵白の処理に悩んでいた人にとって、加糖卵黄の存在はまさに福音といえるだろう。

免責事項

商品紹介等については、公式サイトおよび公開情報を基に作成しております。
記載内容は掲載時時点での参考値です。商品仕様は予告なく変更される場合があります。
購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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