材料の名前(日本語・外国語)

ピスタチオは、植物学上の学名を「Pistacia vera(ピスタキア・ヴェラ)」といい、ウルシ科カイノキ属に分類される落葉亜高木、およびその種子(ナッツ)を指します。日本語の和名としては古くは「ふすだしゅう」と呼ばれていましたが、現在はほぼ使われず「ピスタチオ」の呼称が定着しています。

各国の言語では次のように呼ばれています。英語では “pistachio”(ピスタシオ/ピスタチオ)、フランス語では “pistache”(ピスタッシュ)、イタリア語では “pistacchio”(ピスタッキオ)、スペイン語では “pistacho”(ピスタチョ)、ドイツ語では “Pistazie”(ピスタツィエ)と表記されます。また、中国語では「開心果(カイシングオ)」と呼ばれ、これは成熟した殻が片側から裂けて口を開けたように見える形状にちなんだ名称で、「笑顔の果実」という意味合いがあります。ペルシャ語では “peste”(ペステ)と呼ばれ、これが各国の名称の語源とされています。アラビア語では “فستق”(フストク)と呼ばれます。

特徴

ピスタチオは「ナッツの女王」という美称を持ち、その最大の特徴は何といっても鮮やかな緑色です。この緑色はクロロフィル(葉緑素)に由来し、「ピスタチオグリーン」と呼ばれる独特の色合いは、菓子の装飾やデコレーションにおいて他のナッツでは再現できない華やかさをもたらします。この色彩の美しさから「緑の宝石」とも称されています。

風味の面では、濃厚でコクのある独特の甘みと芳香があり、軽いローストを施すとさらに香ばしさが増します。他のナッツ類と比較して脂肪分がやや控えめでありながら、不飽和脂肪酸(特にオレイン酸やリノール酸)を多く含むため、ヘルシー志向のお菓子にも適しています。

栄養価も非常に優れており、100gあたりのエネルギーは約562kcal(生の場合)で、タンパク質が約20g、食物繊維が約10g含まれます。ビタミンB6の含有量はナッツ類の中でもトップクラスであり、カリウム、リン、マグネシウム、鉄分といったミネラル類も豊富です。さらにβ-カロテンやルテインなどの抗酸化物質も含んでおり、栄養学的に見ても非常に価値の高い食材です。

ピスタチオの木は雌雄異株で、雄木と雌木が別々に存在します。受粉の良し悪しが収穫量を大きく左右し、成熟した果実は殻が片側から自然に裂け開く「裂開果」という独特の形状を持ちます。木は乾燥した気候に適応し、一定程度の塩害がある土地でも生育できますが、十分な日照と排水の良い土壌が必要です。樹高は約10メートルほどに成長し、寿命は非常に長く、300年以上生きる個体もあるとされています。

用途

製菓分野においてピスタチオは極めて幅広い用途を持ちます。

まず、最も基本的な使い方は「ホールナッツ」としてそのまま使用する方法です。焼き菓子やチョコレートの上にトッピングとして飾れば、緑と紫がかった外皮のコントラストが美しいアクセントとなります。砕いた「クラッシュ」や粗く刻んだ「ダイス」の状態では、クッキーやパウンドケーキ、ブラウニーなどの生地に混ぜ込んだり、仕上げに散らしたりして食感と風味の両方を加えます。

「ピスタチオペースト」は、製菓において最も重要な加工形態のひとつです。生またはローストしたピスタチオを細かくすり潰してペースト状にしたもので、ジェラート、ムース、バタークリーム、ガナッシュなどに練り込むことで、ピスタチオの風味と美しい緑色を菓子全体に行き渡らせることができます。特にイタリアのシチリア島ブロンテ産のピスタチオを用いたペーストは最高級品とされ、世界中のパティシエに愛用されています。

「ピスタチオプードル(パウダー)」は、微粉末に加工したもので、マカロンやフィナンシェ、ダコワーズなど、アーモンドプードルの代わりや補助として使用されます。ピスタチオの風味とグリーンの色合いが加わり、繊細で上品な仕上がりとなります。

また、「ピスタチオバター」として、ピーナッツバターのように食パンやクレープに塗る使い方も広まっています。チョコレートとの相性は抜群で、ホワイトチョコレートやミルクチョコレートとの組み合わせは定番中の定番です。

伝統的な中東菓子においても、ピスタチオは欠かせない存在です。トルコの「バクラヴァ」はフィロ生地の間にピスタチオを挟んで焼き、シロップを浸したもので、ピスタチオ菓子の代名詞ともいえます。イランの「ガズ」(ヌガー)、アラブ菓子の「マアムール」、トルコの「ロクム(ターキッシュ・ディライト)」など、中東・地中海地域の伝統菓子にはピスタチオが不可欠です。

近年ではドバイチョコレート(カダイフと呼ばれる極細の麺状生地にピスタチオクリームを合わせたチョコレート)がSNSを中心に世界的なブームとなり、ピスタチオの注目度はますます高まっています。

主な原産国

ピスタチオの原産地はイランからアフガニスタンにかけての中央アジア地域とされています。現在の主要生産国は以下の通りです。

アメリカ合衆国は近年の生産量で世界トップクラスを誇ります。FAO統計(2023年分)によれば、アメリカ、イラン、トルコの上位3カ国で世界生産量の約89%を占めています。アメリカでは主にカリフォルニア州のセントラルバレーで大規模栽培が行われており、大粒で風味が穏やかなのが特徴です。品種としては「カーマン(Kerman)」が主流です。

イランはピスタチオ発祥の地であり、長い栽培の歴史を持ちます。イラン産ピスタチオは独特の甘みとコクの強さ、香ばしさが特徴で、品種も「アクバリ」「アーマドアガイ」「カレグーチ」「ファンダギ」など多様です。ケルマン州やラフサンジャン地区が主産地として知られています。

トルコは世界第3位の生産国で、南東部のガジアンテプ県やシャンルウルファ県が中心産地です。トルコ産は小粒ながら風味が濃厚で、特にバクラヴァをはじめとするトルコ菓子に使われます。

このほか、中国(新疆ウイグル自治区)、シリアが続き、上位5カ国で世界生産量の約98%を占めるという、産地が極めて限られた作物です。

ヨーロッパではイタリア・シチリア島のブロンテが特別な存在です。エトナ山の麓に位置するブロンテで生産されるピスタチオは、DOP(原産地呼称保護)の認定を受けた「ブロンテ・グリーンピスタチオ」として世界最高品質と評され、「食べるエメラルド」「緑の金」と呼ばれます。2年に1度の奇数年にのみ収穫される大変希少なもので、鮮やかな緑色と芳醇な風味は製菓用として別格の評価を得ています。

日本で流通しているピスタチオは主にアメリカ産とイラン産が中心です。

選び方とポイント

お菓子づくりに使うピスタチオを選ぶ際には、用途と品質の見極めが重要です。

色の鮮やかさは品質を見分ける最も重要な指標です。良質なピスタチオは内部まで鮮やかな緑色をしており、黒ずみや変色が少ないものが上等品とされます。緑色が濃いほどクロロフィルが豊富であり、風味も豊かである傾向があります。製菓用として美しい緑色を出したい場合は特にこの点に注意が必要です。

殻付きか殻なしかも選択のポイントとなります。殻は鮮度を守る「天然のカプセル」の役割を果たしているため、殻付きのものは酸化や湿気から守られ、保存性が高くなります。一方、製菓用途では殻をむいた「シェル(剥き身)」が使いやすく、ピスタチオペースト、ダイス、プードルなどの加工品はそのまま使用できる利便性があります。

産地による風味の違いを理解することも大切です。アメリカ産は穏やかなコクとクセの少ない味わいで汎用性が高く、イラン産は甘みとコクが強く香ばしさが際立ちます。イタリア・ブロンテ産は最も芳醇で風味が濃厚ですが、価格も最も高級です。お菓子の方向性に合わせて選び分けましょう。

鮮度と保存状態も重要です。ピスタチオは脂肪分が多いため酸化しやすく、古くなると風味が落ちて油焼けした臭いが出ます。購入時には賞味期限を確認し、開封後は密封容器に入れて冷暗所(できれば冷蔵庫や冷凍庫)で保存することが推奨されます。

製菓用ペーストの選び方としては、砂糖や油脂を加えていない「ピュアペースト(100%)」と、砂糖入りの「甘口ペースト」があります。風味の濃さやレシピとの相性を考慮して選択しましょう。業務用ではマルッロ社(イタリア)のブロンテ産ピスタチオペーストが定番で、1kgで1万円以上する高級品ですが、風味は格別です。ブランカ社(イタリア)のシチリア産ペーストも製菓・製パン業界で広く使われています。

メジャーな製品とメーカー名

ピスタチオを使ったお菓子は近年大きなブームとなっており、数多くの製品が市場に出回っています。

明治「ピスタチオチョコレート」は、丸ごとのピスタチオナッツをコク深いミルクチョコレートで包んだ製品で、2022年3月の発売以来、手軽に楽しめるナッツチョコレートとして人気を博しています。ピスタチオナッツペーストも使用されており、ピスタチオの風味を存分に味わえる一品です。

ロイズ(ROYCE’)は北海道を拠点とする洋菓子メーカーで、「ピスタチオチョコレート」「ピスタチオクランチチョコレート」「ピスターシュショコラ」など、ピスタチオを使った複数の人気商品を展開しています。カリフォルニア産のピスタチオを使用し、ロイズならではの上品なチョコレートとの組み合わせが特徴です。

PISTA & TOKYO(ピスタ アンド トーキョー)は、小樽洋菓子舗ルタオを運営するケイシイシイ社がプロデュースするピスタチオスイーツ専門店です。看板商品の「ピスタージュ」は東京駅限定スイーツランキング2024で第1位を獲得するなど高い人気を誇り、ピスタチオショコラやピスタチオサンドなど、専門店ならではのラインナップが魅力です。

リンツ(Lindt)はスイスの老舗チョコレートメーカーで、リンドールシリーズのピスタチオフレーバーは世界的に人気のある製品です。なめらかなチョコレートの中にピスタチオフィリングが入った贅沢な味わいが楽しめます。

製菓材料としては、前述のマルッロ社(イタリア)のシチリア・ブロンテ産ピスタチオペーストが業界のスタンダードで、パティスリーやジェラート店で広く使用されています。またブランカ社(イタリア)のシチリア産ピスタチオペーストも製菓・製パンメーカーやホテル・レストラン向けに展開されています。日本国内ではcottaTFOODSなどの製菓材料専門通販サイトで入手可能です。

歴史・由来

ピスタチオの歴史は極めて古く、考古学的な証拠に基づけば紀元前6500年頃にはすでに中央アジア(現在のイランからアフガニスタン地方)で食用にされていたとされ、人類が最も古くから利用してきた食材のひとつです。

古代ペルシャ(現在のイラン)ではピスタチオは権力と富の象徴とされ、王族や貴族の間で珍重されました。伝説によれば、シバの女王はピスタチオを大変好み、自国の領土で栽培されるピスタチオをすべて王室専用にしたといわれています。ペルシャ人はピスタチオを菓子だけでなく、すり潰してソースの増粘剤や風味付けにも活用し、料理文化においても重要な役割を果たしていました。

紀元前334年から323年にかけてのアレクサンドロス大王の東方遠征を通じてピスタチオは地中海世界に広まりました。紀元1世紀頃にはシリアからイタリア(ローマ帝国)に持ち込まれ、その後ヨーロッパ各地に伝播していきます。特にシチリア島のブロンテ地方では、この頃からピスタチオの栽培が始まったとされています。

アラブ世界ではピスタチオは「ナッツの中の笑う実」とも呼ばれ、殻が裂け開く様子が人が笑っているように見えることから、幸運や幸福の象徴とされてきました。前述の中国語名「開心果(開いた心の果実)」にも同様の発想が見られます。

アメリカにピスタチオが本格的に伝わったのは比較的新しく、19世紀後半に中東系の移民によって持ち込まれました。商業的な栽培が始まったのは1930年代からで、本格的な産業として発展したのは1970年代以降のことです。特にカリフォルニア州のセントラルバレーがアメリカ最大の産地として急成長し、現在ではイランと並ぶ世界最大級のピスタチオ生産国となっています。

日本においてピスタチオが一般的に知られるようになったのは比較的最近のことです。19世紀初頭に日本に伝わり1880年代に栽培が試みられましたが、気候風土が合わず定着しませんでした。長らくおつまみ用のローストナッツとして認知されていましたが、2010年代後半から製菓分野での注目度が急激に高まりました。ピスタチオの鮮やかな緑色がSNS映えすることもあり、ジェラート、マカロン、チョコレート、焼き菓子など多彩な製品が登場し、2020年代にはピスタチオスイーツ専門店が次々とオープンするなど、一大ブームとなっています。

免責事項

商品紹介等については、公式サイトおよび公開情報を基に作成しております。
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購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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