材料の名前

日本語では「ホワイトソルガム」または「白高きび(しろたかきび)」と呼ばれる。英語表記は「White Sorghum」で、学名は Sorghum bicolor(L.)Moench。世界各地で異なる名前を持ち、西アフリカでは「グレート・ミレット(Great Millet)」や「ギニア・コーン(Guinea Corn)」、インドでは「ジョワー(Jowar)」、中国では「高粱(コーリャン)」、スペインでは「ミロ(Millo)」と呼ばれている。日本では古くから「たかきび」「モロコシ」の名で親しまれ、飼料用途では「マイロ」、農業用種子としては「ソルゴー」という呼び名も使われてきた。

お菓子の材料として流通する際は、製粉した「ホワイトソルガム粉(White Sorghum Flour)」の形態が一般的である。富澤商店では「ホワイトソルガムパウダー(白高きび)」、中野産業では「なかのソルガム ホワイトソルガム粉」といった商品名で販売されている。

特徴

ホワイトソルガムはイネ科モロコシ属に分類される穀物で、数あるソルガムの品種のなかでもタンニンの含有量が少なく、種皮に色がついていない白い品種群を指す。1990年代にアメリカで品種改良が進み、従来の有色品種が持つ雑穀特有の苦みやえぐみ、色の強さをほぼ取り除くことに成功した。その結果、ほとんど無味無臭で料理やお菓子に幅広く使いやすい穀物粉となった。

お菓子づくりの視点から見た最大の特徴は、グルテンを含まない点にある。小麦粉の代替として使えるグルテンフリーの穀物粉はいくつかあるが、そのなかでもホワイトソルガム粉は小麦粉にもっとも近い風味と食感が得られるとされ、さっくりと軽い焼き上がりになる。米粉と比較しても粉自体が軽く、クッキーやパンケーキ、マフィンなどで「ふんわり」「サクッ」とした仕上がりを出しやすい。揚げ菓子の衣に使うと吸油率が低いため、カラッと揚がるのも特長である。

栄養面も見逃せない。アメリカ穀物協会が公表する栄養成分比較によると、ホワイトソルガム全粒粉は小麦粉と比べて食物繊維が約3.8倍、鉄分が約6倍、マグネシウムが約13倍含まれる。中野産業の比較データでは、米粉と比較してマグネシウムが約6.5倍、鉄分が約19倍という数値も示されている。さらにナイアシンやビタミンB6といったビタミン群、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)も含まれており、2018年の日本栄養・食糧学会での発表では、このレジスタントスターチが腸内環境を整える働きを持つことが動物実験で確認されている。

遺伝子組み換え作物ではなく、乾燥や高温に強い性質を持つため農薬の使用量を抑えて栽培できる。環境負荷が低いことから「ミラクル・グレイン(奇跡の穀物)」とも称され、2017年のワシントンポスト紙や2014年のTIMES誌でも、その栄養価と持続可能性が取り上げられた。

用途

お菓子づくりにおける活用範囲は広い。代表的な用途をいくつか紹介する。

焼き菓子全般に対応できる点が、製菓の現場で重宝される理由だろう。クッキーに使うとホロホロと口の中でほどけるような食感になり、バターとの相性も申し分ない。パンケーキやワッフルでは、ふんわり軽い焼き上がりで、小麦粉の代替品であることを感じさせにくい仕上がりになる。マフィンやカップケーキ、パウンドケーキなど、しっとりさせたい焼き菓子にも向いている。保水性がやや高いため、焼き上がり後もパサつきにくいという利点がある。

ただし、グルテンを含まない以上、単体では生地にまとまりが出にくい場面もある。そのため、キサンタンガムやサイリウムハスク(オオバコ種皮)などのバインダーを少量加えたり、米粉やタピオカ粉とブレンドして使うケースが多い。Bob’s Red Millの公式サイトでも、ソルガム粉を他のグルテンフリー粉とミックスして使うことを推奨している。

お菓子以外では、天ぷらやフライの衣、ホワイトソース、お好み焼きなど、料理の場面でも小麦粉の代わりとして幅広く使える。粒タイプは茹でてサラダに加えたり、白米に混ぜて炊飯したり、ひき肉のような食感を活かしてハンバーグの代用食材にしたりと、食卓での出番は多岐にわたる。

保育園や幼稚園の給食においても、小麦アレルギーの子どもへの代替食材として導入されるケースが増えている。ほぼ無味無臭で味付けの邪魔をしないため、既存のレシピにそのまま置き換えやすい利便性が評価されている。

主な原産国

ソルガムの原産地はアフリカで、紀元前8000年頃からエジプトやエチオピア高地を中心に栽培が始まったとされる。その後インド、中国、オーストラリアへと広がり、現在では世界各地で生産されている。

USDA(アメリカ合衆国農務省)の2025/2026年度データによると、世界のソルガム生産量トップはアメリカ合衆国で約1,110万トン(世界シェア約18%)。次いでナイジェリアが約650万トン(約10%)、ブラジルが約520万トン(約8%)、インドが約430万トン(約7%)と続く。このほかメキシコ、エチオピア、中国、スーダンなども主要な生産国である。

お菓子用の原料として日本に輸入されるホワイトソルガムは、おもにアメリカ産が中心となっている。アメリカではカンザス州、テキサス州、オクラホマ州、コロラド州など中南部の乾燥地帯で盛んに栽培されており、食品グレードの品質管理体制が整っていることが輸入先として選ばれる理由のひとつだろう。

近年は国産ソルガムへの注目も高まっている。長野県を中心に「信州産ソルガム」の栽培・普及が進められており、AKEBONO株式会社が信州産ホワイトソルガムの全粒粉を製造・販売している。国産ならではのフードマイレージの短さや、生産者の顔が見える安心感を求める消費者に支持されつつある。

選び方とポイント

ホワイトソルガム粉を選ぶ際に確認しておきたいポイントをまとめる。

まず、「粉」「全粒粉」「粒」など形態の違いを把握しておくことが大切だ。お菓子づくりに使うなら、胚乳部分を粉末状にした「粉(こな)」タイプがもっとも扱いやすい。小麦粉のような感覚で計量・混合できるため、初めて使う人にも取り組みやすい。一方、表皮・胚芽部を含む「全粒粉」タイプは栄養価が高く、香ばしい風味をお菓子に加えたいときに向いている。ただし、焼き色がやや濃くなり、食感も重めに仕上がる傾向がある。

次にアレルギー対応の表示をしっかり確認してほしい。ホワイトソルガム自体はアレルギー特定原材料等28品目を含まないが、製造ラインが他の穀物と共有されていれば、微量のコンタミネーション(混入)が起きる可能性はゼロではない。小麦アレルギーやセリアック病の方は、専用ラインで製造されている旨の記載がある製品を選ぶと安心だ。中野産業の「なかのソルガム」シリーズは、アレルギー特定原材料を持ち込まない専用工場で製造されている点を公表している。

産地の記載も選定基準のひとつになる。前述のとおりアメリカ産が主流だが、信州産などの国産品も流通している。残留農薬検査や品質管理体制について、メーカーがどの程度情報を開示しているかも参考になるだろう。

保存面では、高温多湿を避け、開封後は密閉容器に移して冷暗所で保管するのが基本。全粒粉タイプは脂質を含む胚芽部分があるため、精白タイプよりも酸化しやすい。早めに使い切るか、冷蔵保存を検討するとよい。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内でホワイトソルガム製品を手に取りやすいメーカーと製品を紹介する。

中野産業株式会社(香川県高松市)は、日本におけるホワイトソルガムのパイオニアといえる存在である。1877年(明治10年)創業の穀物加工・倉庫業を営む老舗で、1999年にアメリカからホワイトソルガムを日本で初めて輸入した。「なかのソルガム」ブランドで、ホワイトソルガム粉(500g)、全粒粉、粒タイプ、お米タイプのほか、お菓子ミックス粉、料理用ミックス粉、「パックde蒸しパン」など加工度の高い商品も展開している。2023年には、腸内のビフィズス菌を増やし食後血糖値の上昇を抑える機能性表示食品の蒸しパンも発売し、日本経済新聞に取り上げられた。

富澤商店(TOMIZ)は、製菓・製パン材料の専門店として全国に店舗とオンラインショップを展開している。「ホワイトソルガムパウダー(白高きび)200g」と「ホワイトソルガム(白高きび)粒 300g」を取り扱っており、グルテンフリーのお菓子レシピとあわせて提案している点が特徴的だ。手軽に少量から購入できるため、家庭での製菓に初挑戦する人にとって入り口になりやすい。

AKEBONO株式会社(長野県長野市)は、信州産ソルガムの栽培・加工・販売を手がけている。国産のホワイト系ソルガム品種を全粒粉にした「信州産ホワイトソルガム粉 200g」を販売しており、小麦の取り扱いのない製粉工場で加工されている点がアレルギー対応として評価されている。業務用の1kgパックや5kgパックも展開し、製菓・製パン事業者への供給にも対応する。

海外製品では、Bob’s Red Mill(アメリカ・オレゴン州)の「Sorghum Flour(ソルガムフラワー)」が世界的に知られている。全粒ソルガムを石臼で挽いたもので、マイルドな甘みがグルテンフリーの焼き菓子によく合う。日本ではiHerbや楽天市場、Amazonなどの通販サイトを通じて購入可能で、輸入食品を扱う実店舗でも見かけることがある。624g(22オンス)入りが定番サイズだ。

このほか、アメリカ穀物協会がソルガムきびの普及を目的に日本国内での認知拡大活動を行っており、赤ちゃん本舗などでもホワイトソルガム関連商品が取り扱われるなど、入手チャネルは徐々に広がっている。

歴史・由来

ソルガムは人類がもっとも古くから栽培してきた穀物のひとつである。アメリカ穀物協会の資料によれば、紀元前8000年頃にアフリカ(現在のエジプトやエチオピア高地周辺)で栽培化が始まった。雨量が少なく、他の穀物が育ちにくい厳しい土地でも耐えられる生命力が、アフリカの人々にとって貴重な食料源となった。

アフリカ大陸全土に広まったソルガムは、やがてインド、中国へと伝播した。インドでは「ジョワー」として日常的な主食のひとつとなり、ロティ(薄焼きパン)やポリッジ(粥)の材料に使われてきた。中国では「高粱(コーリャン)」の名で知られ、白酒(バイジュウ)と呼ばれる蒸留酒の原料としても古くから用いられている。

日本には室町時代(14世紀頃)に中国から「高きび」の一種として伝来したとされる。日本の食文化のなかでは、たかきびとして雑穀ご飯に混ぜたり、だんごやもちの材料に使われたりしてきた。ただし、小麦や米に比べると存在感は控えめで、一般の家庭で日常的に使われる場面は限られていた。

転機は1990年代のアメリカで訪れた。テキサスA&M大学などの研究機関が中心となり、タンニンを含まず種皮が白い品種の開発が進んだ。これがホワイトソルガムの誕生である。雑穀の苦みやえぐみ、色の強さが解消されたことで、食品用途が一気に広がった。アメリカでは「とうもろこし、大豆、小麦に続く第4の穀物」として注目を集め、グルテンフリーブームの高まりとともに需要が拡大していった。

日本にホワイトソルガムが本格的に紹介されたのは1999年のこと。中野産業の中野宏一氏がアメリカでホワイトソルガムと出会い、その可能性に着目して日本初の輸入に踏み切った。当初はグルテンフリー食品への認知度自体が低く、販路開拓には苦労があったと伝えられている。しかし2000年代以降、食物アレルギーへの社会的関心が高まるなかで、小麦の代替食材としてのホワイトソルガムの存在が少しずつ知られるようになった。

「ソルガムきび」という日本語名称は、アメリカ穀物協会が日本市場向けに考案したものである。古来なじみのある雑穀「きび」の仲間であることを直感的に伝え、親しみやすさを高める狙いが込められている。

2010年代からは健康志向やグルテンフリーダイエットの浸透、ヴィーガン食の拡大を背景に、ホワイトソルガムへの注目度は着実に上昇している。お菓子の分野でも、米粉とブレンドしたグルテンフリーミックス粉にホワイトソルガムを配合する商品が登場するなど、製菓材料としての地位を確立しつつある。世界的にも持続可能な農業の観点から「未来穀物(Grain of the Future)」と期待され、その評価は今後さらに高まっていくだろう。

免責事項

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購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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