材料の名前

日本語では「粗糖(そとう)」と表記し、別名として「原料糖(げんりょうとう)」とも呼ばれる。英語では”Raw sugar”、フランス語では”Sucre brut”、ドイツ語では”Rohzucker”にあたる。いずれの言語でも「精製されていない、粗い状態の砂糖」というニュアンスが共通している。

なお、市販品には「洗双糖(せんそうとう)」や「粗製糖」という名前で売られているものもあり、これらは粗糖をさらに食用向けに調整したグレードの製品にあたる。上白糖やグラニュー糖のパッケージに記載されている原材料名「原料糖」は、この粗糖のことを指している。

特徴

粗糖は、サトウキビやてん菜(ビート)の搾り汁を煮詰め、ショ糖を結晶化させた段階の砂糖である。上白糖のように何度も精製を重ねていないため、結晶の表面にはサトウキビ由来の糖蜜がうっすらとまとわりついている。そのぶん薄い黄褐色をしていて、口に含むとまろやかなコクと、ほのかに蜜を思わせる風味が広がる。

粒の大きさはやや粗めで、しっとりとした質感がある。精製度が低いため、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルが白砂糖に比べて多く残っている点も見逃せない。ただし、主成分はショ糖であることに変わりはなく、カロリーは白砂糖とほぼ同じ(100gあたり約384kcal前後)であるため、健康目的であっても摂りすぎには注意が必要だ。

白砂糖が「純粋な甘さ」を追求した砂糖であるのに対し、粗糖は甘さの奥に複雑な風味を持つ砂糖と言える。黒糖ほどクセが強くないため、家庭料理はもちろん、製菓の現場でも使いやすいバランスのよさが魅力だ。

砂糖は製造方法によって「分蜜糖」と「含蜜糖」に大別されるが、粗糖はその中間的な存在と考えるとわかりやすい。上白糖やグラニュー糖は、糖蜜と結晶を遠心分離機で何度も分ける「分蜜糖」。黒砂糖は結晶と糖蜜を分離せずそのまま固めた「含蜜糖」。粗糖は一度だけ遠心分離をかけて蜜を大まかに除いた状態であり、結晶の周囲にはまだ蜜分が残っている。この「中間」の立ち位置こそが、程よいコクとクセの少なさを両立させている理由だ。

用途

お菓子づくりにおいて粗糖は幅広い場面で活躍する。

焼き菓子との相性がとりわけ優れている。クッキーやパウンドケーキ、マフィンに粗糖を使うと、焼成時に蜜分がキャラメルのように香ばしく色づき、仕上がりにコクと深みが加わる。生地がほんのり琥珀色に染まるため、素朴で温かみのある見た目になるのも利点だ。

和菓子の分野でも粗糖は重宝されている。餡を炊く際に粗糖を用いると、上白糖だけでは出しにくい奥行きのある甘さになる。かりんとうやカステラなど、昔ながらの菓子に使えば、懐かしさを感じさせるやさしい味わいに仕上がる。

一方で、真っ白なメレンゲや透明感のあるゼリーなど、色を白く仕上げたいお菓子には向かない。粗糖自体に色がついているため、完成品の見た目が茶色がかってしまう。また、繊細な風味を楽しむカスタードクリームやバニラアイスのような洋菓子では、粗糖のコクが素材の持ち味を覆い隠してしまう場合もある。こうした場面ではグラニュー糖や上白糖のほうが適している。

お菓子以外にも、煮物や佃煮、照り焼きのたれに粗糖を使うとコクが出る。飲み物に入れる場合は、温かいコーヒーや紅茶であれば問題なく溶けるが、冷たいドリンクでは結晶がやや溶けにくい点だけ覚えておきたい。

分量について補足すると、粗糖と白砂糖は主成分がどちらもショ糖なので、基本的に1対1で置き換えが可能だ。レシピに「砂糖大さじ2」とあれば、そのまま粗糖大さじ2に替えて構わない。ただし仕上がりの色味と風味が変化するため、試作して好みのバランスを探ると失敗が少ない。

主な原産国

粗糖の原料となるサトウキビは、熱帯・亜熱帯の気候を好む作物である。世界の砂糖(粗糖)輸出量を見ると、2023年時点でブラジルが約3,130万トンと圧倒的な首位を占め、全体の約45%を占めている。次いでタイが約831万トン(約12%)、インドが約659万トン(約10%)と続く。オーストラリアやグアテマラも主要な輸出国にあたる。

日本が輸入する粗糖に限ると、オーストラリアとタイの2カ国でほぼ全量をまかなっている。農畜産業振興機構の統計によれば、2024年はオーストラリアが約90%、タイが約10%という割合であった。地理的に近く安定した品質を保てるオーストラリア産が長年にわたりメインの調達先となっている。

国内でのサトウキビ栽培は沖縄県と鹿児島県に限られている。鹿児島県では種子島、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島などの島しょ部で生産が盛んだ。国内のサトウキビ産地に隣接する形で製糖工場が点在しており、収穫直後のサトウキビを速やかに粗糖へ加工している。サトウキビは刈り取ると急速にショ糖分が分解されるため、収穫から加工までのスピードが品質に直結するからだ。

一方、北海道で栽培されるてん菜(サトウダイコン、ビート)からも粗糖は作られる。てん菜由来の砂糖はあっさりとした甘みが持ち味で、ヨーロッパでは砂糖の主原料として長い歴史を持つ。日本国内のてん菜生産は北海道のみに限定されている。

選び方とポイント

粗糖を購入する際に押さえておきたい点をいくつか挙げる。

まず原料の産地を確認したい。国産にこだわるなら、鹿児島県種子島産や喜界島産のサトウキビを100%使用した製品がある。産地が明記されていれば品質管理のトレーサビリティが高く、安心感がある。輸入原料を用いた製品のほうが価格は抑えられるので、用途やこだわりの度合いで選び分けるとよい。

次に粒の大きさと質感を見る。粗糖の粒度は製品ごとに差があり、細かいほど生地に溶けやすく、お菓子づくりに使いやすい。ザラメのように粒が大きいタイプは、煮物や漬物で存在感のある甘みを出したいときに向いている。パッケージの見た目や商品名だけでは粒度がわかりにくいので、口コミや商品説明を確認するのがおすすめだ。

色合いも判断材料になる。薄い黄褐色であれば蜜分が少なめで上品な甘み、濃いめの茶色であれば蜜分が多くコクが強い傾向にある。焼き菓子にコクを加えたければ色の濃い粗糖、普段使いで白砂糖からの切り替えを目的とするなら淡い色の粗糖が使いやすいだろう。

保存性も忘れてはならない。粗糖は吸湿しやすく、開封後に放置すると固まりやすい。密閉容器やジッパー付きの保存袋に入れ、直射日光の当たらない涼しい場所で保管するのが基本だ。梅雨から夏にかけての湿度が高い時期には、乾燥剤を一緒に入れておくと固結を防げる。

オーガニック認証の有無もチェックポイントの一つ。有機JASマークが付いた粗糖は、有機栽培されたサトウキビを原料とし、製造工程でも一定の基準を満たしていることを意味する。自然派志向の方にはこうした認証付き製品が選択肢になる。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内で流通している粗糖関連の製品とメーカーを紹介する。

創健社の「喜界島粗糖」は、鹿児島県喜界島産のサトウキビを100%使用した粗糖だ。まろやかな甘さとクセの少なさが評価されており、自然食品店を中心に長く定番として親しまれている。同社からは「さとうきび粗糖」(原料は鹿児島県産さとうきび)も販売されている。

ビオマーケット(ビオ・マルシェ)の「洗双糖」は、種子島産のサトウキビから作られた粗製糖で、商標登録もされた製品だ。白砂糖のようにクセがなく、黒糖ほど風味が強すぎないバランスが支持されている。オーガニック志向の消費者層から根強い人気がある。

大東製糖の「素焚糖(すだきとう)」は、奄美諸島産サトウキビ原料の含蜜糖で、同社の独自ブランドにあたる。蜜のような香ばしい風味とやさしい甘さが特徴で、上白糖の代わりに普段使いしやすい砂糖として認知が広がっている。スーパーの砂糖売り場でも見かけることが増えた。

薩南製糖の「釜焚 島砂糖」や「島ザラメ」は、奄美産粗糖を100%使い、独自の製法で仕上げたシリーズ。さとうきび本来の風味が生きた上品な甘さで、業務用・家庭用の両方が展開されている。

NICHIGA(ニチガ)の「種子島産 粗糖」は、種子島のサトウキビ100%を使用した低精製の砂糖で、ネット通販を中心に販売されている。手頃な価格と入手のしやすさから、粗糖を初めて試す方の入門的な製品として選ばれることが多い。

このほかにも、DM三井製糖(スプーン印の砂糖で知られる業界最大手)が展開する「国産さとうきび糖」シリーズや、鹿北製油が販売する「洗双糖」など、粗糖やそれに近い低精製糖の製品は年々選択肢が増えている。

歴史・由来

粗糖の歴史をたどるには、まず砂糖そのものの起源を知る必要がある。

サトウキビの原産地は南太平洋の島々とされ、紀元前8000年頃にはニューギニアで栽培が始まっていたとする説がある。その後、東南アジアを経てインドへ伝わり、紀元前500年頃にはインドでサトウキビの搾り汁を煮詰めて糖蜜を採る技術が生まれた。やがて紀元1世紀頃、北インドで搾り汁を煮詰めて結晶化させる砂糖製造法が確立される。これが記録に残る最初の砂糖づくりであり、現代の粗糖製造の原型にあたる。

英語の”sugar”の語源は、古代インドの言語であるサンスクリット語の「シャルカラ(Sarkara)」とされている。この言葉が各地に伝わる過程で、アラビア語の”sukkar”、フランス語の”sucre”へと変化し、やがて英語の”sugar”になった。砂糖の発祥がインドであることは、この語源のつながりからもうかがえる。

インドで生まれた砂糖は、6世紀頃にはペルシャや中国にも伝わった。7世紀に入るとイスラム世界を通じて中東・北アフリカへ広がり、やがて十字軍の遠征(11~13世紀)をきっかけにヨーロッパ各地に知られるようになった。この時代、砂糖は「白い黄金」と呼ばれるほどの貴重品で、薬としても扱われていた。

日本に砂糖が伝来したのは奈良時代、8世紀のことである。754年(天平勝宝6年)に唐の僧・鑑真が来日した際の船荷の目録に「蔗糖」の記録があり、これが日本における砂糖の最初の記録とされている。遣唐使が持ち帰ったとする説もあるが、いずれにせよ中国からもたらされたのは確かで、当時は薬として用いられていた。

江戸時代に入ると、8代将軍の徳川吉宗がサトウキビの国産化を推進した。18世紀初め、輸入に頼っていた砂糖の自給をめざし、各藩にサトウキビの苗を配布して試験栽培を奨励した。その結果、四国の讃岐(現在の香川県)や鹿児島、沖縄などで砂糖生産が根づいていった。当時の製糖技術で作られていたのは、サトウキビの搾り汁を煮詰めて固めた黒砂糖や、それをやや精製した段階の砂糖、すなわち現在の粗糖に近いものだった。

近代に入り、明治期以降は欧米から近代的な製糖技術が導入された。サトウキビの産地で粗糖を製造し、消費地に近い工場で精製して上白糖やグラニュー糖に加工するという二段階の分業体制が確立された。この仕組みは現在もほぼそのまま受け継がれている。粗糖を一旦結晶にして輸送・保管する方法は、ショ糖の分解を抑えると同時に長距離の海上輸送を可能にした合理的な知恵であり、世界中の製糖産業で標準的に採用されている。

近年は健康志向や自然食ブームの流れから、精製度の低い砂糖への関心が高まっている。粗糖やきび砂糖がスーパーの棚に並ぶ頻度は以前に比べて明らかに増えた。「素材そのものの味を活かしたい」という考え方が広がったことで、お菓子づくりにおいても粗糖を積極的に取り入れる作り手が増えつつある。

免責事項

商品紹介等については、公式サイトおよび公開情報を基に作成しております。
記載内容は掲載時時点での参考値です。商品仕様は予告なく変更される場合があります。
購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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