材料の名前(日本語・外国語)

日本語では「しぼり豆(絞り豆)」と表記し、「豆しぼり」「豆絞り」と呼ばれることもある。商品名としては「黒豆しぼり」「しぼり黒豆」「黒豆しぼり豆」など、使用する豆の名前を冠した呼び方が一般的に用いられている。

英語圏では定訳が確立されておらず、日本レトルトフーズ株式会社の商品紹介動画では「Black soy beans glacé」と英訳されている。フランス菓子の技法であるグラッセ(glacé=砂糖漬け・糖衣がけ)になぞらえた表現であり、海外向けの説明では「Dried sweetened black soybeans」「Shibori-mame」といったローマ字表記が併用されるケースもみられる。

特徴

しぼり豆は、甘納豆の製法をベースにしながら、仕上げに独自の「乾燥」工程を加えた豆菓子である。名前の由来は、熱風の中で「しぼるように」水分を飛ばすことにある。通常の甘納豆では、豆を炊き上げたのち、糖度の異なる糖蜜に複数回漬け込み、表面に砂糖をまぶしてしっとりとした状態で仕上げる。一方、しぼり豆は糖蜜への漬け込みを控えめにし、専用の乾燥機や天日で長時間かけて水分を飛ばすため、甘さが穏やかで、パリッとした皮と中身のやわらかさが共存する独特の食感に仕上がる。

原材料はきわめてシンプルで、基本は豆と砂糖、塩のみ。着色料や保存料を使わない商品が多く、黒豆そのものの風味やコクが前面に出る。表面に白い粉が浮くことがあるが、これは砂糖や、丹波黒大豆特有の「ろう粉」(蝋粉)と呼ばれる天然成分であり、品質には問題がない。

甘納豆と比べて水分が少ないことから、保存性にも優れている。一般的な賞味期限は製造日から120日前後。常温保存ができるため、手土産や贈答品としても重宝される。

用途

しぼり豆はそのまま茶菓子として食べるのが最もポピュラーな楽しみ方だが、お菓子づくりの材料としても幅広く活用されている。具体的には、次のような用途がある。

まず、和菓子のトッピングや練り込みの材料として使われることがある。たとえば、パウンドケーキの生地にしぼり豆を加えて黒豆パウンドケーキにしたり、蒸しパンやどら焼きの具材として使うケースは少なくない。洋菓子との相性もよく、バニラアイスクリームに添えたり、パンケーキにトッピングしたりする食べ方も広がっている。

また、パン生地に練り込んで黒豆パンに仕上げることも可能で、レシピサイトでは抹茶パウダーと組み合わせた「抹茶黒豆しぼりパン」なども紹介されている。

食事の場面では、おこわやご飯に混ぜ込む使い方がある。富山県のメーカー「つり甘なっと」は、しぼり黒豆を使ったおこわの調理提案を行っており、甘すぎない味わいが料理とも馴染む点が支持されている。

お茶席の菓子として懐紙に載せて供する使い方もあり、日本茶だけでなくコーヒーや紅茶とも合わせやすいことから、幅広い場面で利用されている。

主な原産国と産地

しぼり豆は日本独自の豆菓子であり、使用される原料豆も国産品が主流となっている。

原料として最も高い評価を受けているのが、兵庫県丹波篠山市を中心とした丹波地方で栽培される「丹波黒」(丹波黒大豆)である。丹波黒は一般的な大豆の百粒重が約30グラムであるのに対し、約80グラム前後にもなる極大粒の品種で、粘りのあるもっちりとした食感と独特の甘みをもつ。表皮に白いろう粉がつくのも丹波黒の特徴のひとつだ。丹波黒大豆は天候の影響を受けやすく、栽培に手間がかかるため希少性が高い。

丹波黒に次いで広く使われているのが、北海道産の黒大豆「光黒(ひかりくろ)」である。光黒は表面に光沢があり、粒もそろいやすいことから、しぼり豆の量産品に適している。佐賀県の光武製菓をはじめ、北海道産光黒を使用するメーカーは多い。

このほか、白いんげん豆や金時豆をしぼり豆にした商品も存在するが、「しぼり豆」という名前で流通する商品の大半は黒大豆が原料である。大豆の栽培自体は日本全国で行われているものの、しぼり豆向けの黒大豆産地としては兵庫県(丹波地方)と北海道が二大産地といえる。

選び方とポイント

しぼり豆を選ぶ際に最初に確認したいのは、使用されている豆の品種と産地である。兵庫県産の丹波黒大豆を100%使用した商品は風味・食感ともに格別で、高級品として贈答用にも適している。一方、北海道産の光黒を使った商品は比較的手頃な価格で手に入り、日常のおやつやお菓子づくりの材料として使いやすい。用途と予算に応じて使い分けるとよいだろう。

次に、原材料表示をチェックする。良質なしぼり豆は、黒大豆・砂糖・食塩だけで作られていることが多い。着色料や保存料が無添加であるかどうかは、ひとつの目安になる。ただし、一部のメーカーでは重曹(膨張剤)や硫酸第一鉄(黒豆の色を安定させるための食品添加物)を使用しているケースがあるので、気になる場合はラベルの確認を忘れずに。

粒の大きさも選ぶ際のポイントとなる。丹波黒大豆のしぼり豆は2L~3Lサイズの大粒が多く、一粒で食べごたえがある。小田垣商店では職人が一粒ずつ手作業で選別しており、割れや皮むけのない粒ぞろいのものが正規品として出荷されている。逆に、割れや皮むけが混じった「訳あり品」は味に遜色がないにもかかわらず価格が抑えられているので、自家用やお菓子づくりの材料には訳あり品を選ぶのも賢い方法だ。

賞味期限にも注目したい。一般的に120日前後の商品が多いが、保存状態によって風味は変化する。直射日光・高温多湿を避け、28℃以下の冷暗所に保管するのが基本だ。

メジャーな製品とメーカー名

しぼり豆を製造・販売する代表的なメーカーと製品を紹介する。

まず挙げたいのが、京都・下鴨の「宝泉堂」が手がける「しぼり豆 丹波黒大寿」である。兵庫県産丹波黒大豆のなかでも特に大粒で品質の高いものだけを使い、ゆっくりと炊き上げてほんのりとした甘さに仕上げた一品で、京土産の定番として長年にわたり人気が高い。JR京都駅構内でも購入できるため、旅行者にも広く知られている。小袋タイプのほか、竹籠入りの贈答向けセットも販売されている。

兵庫県丹波篠山市に本店を構える「小田垣商店」は、享保19年(1734年)創業の老舗黒豆卸店で、「黒豆しぼり豆」は同店の看板商品のひとつ。兵庫県産の大粒丹波黒を100%使用し、熟練の職人がひと粒ずつ選別する丁寧な製造が特徴だ。高島屋などの百貨店や製菓材料専門店「富澤商店(TOMIZ)」でも取り扱いがある。

佐賀県に本社を置く「光武製菓」は、昭和初期から甘納豆を製造している老舗メーカーで、「黒豆しぼり」は北海道産光黒を原料としている。従来の甘納豆が糖蜜を3回に分けて漬け込むのに対し、同社の黒豆しぼりは1回の糖蜜漬けで仕上げ、専用の乾燥機で水分を飛ばす製法を採用している。袋入りと個包装の2タイプが展開されている。

富山県高岡市の「つり甘なっと」は、1958年創業の甘納豆専門メーカーで、北海道産黒大豆と砂糖だけで作る「しぼり黒豆」が看板商品である。仕込みから完成まで4日間をかける手間のかけた製法が特徴で、2000年の発売以来、全国各地からリピーターがつく人気ぶりだ。富山県で唯一残る甘納豆製造所としても知られている。

愛知県岡崎市の「日本レトルトフーズ」は、蒸し煮豆類のレトルト製品を得意とするメーカーで、「黒豆しぼり豆」シリーズとして、プレーンのほか抹茶味やきなこ味といったバリエーションを展開している。

兵庫県丹波篠山市の「丹波わらしべ屋」は、1992年に創業した小規模な加工業者で、化学合成農薬や化成肥料を使わない黒豆を原料にしたしぼり豆を製造している。バニラとブランデーで風味をつけた「洋菓子風」のしぼり豆が特徴的で、職人の手仕事に徹した少量生産を貫いている。

このほか、東京・上野の豆専門店「松葉屋」、「丹波やながわ」などもしぼり豆を取り扱っている。

歴史・由来

しぼり豆の歴史を語るには、まず母体となった「甘納豆」の成り立ちにふれておく必要がある。

甘納豆が誕生したのは江戸時代後期のことだ。安政5年(1858年)頃、東京・日本橋の老舗菓子店「榮太樓」の三代目・細田安兵衛がささげ豆を砂糖蜜で煮詰めて乾燥させた菓子を考案したとされている。浜納豆(大徳寺納豆などの乾燥納豆)に見た目が似ていたことから「甘名納糖(あまななっとう)」と名付けられ、後に「甘納豆」へと名前が定着した。以来、小豆・白いんげん・金時豆・そら豆など多彩な豆を使った甘納豆が全国に広まっていった。

甘納豆が広まった後、それをさらに乾燥させた「しぼり豆」が生まれたのは、比較的新しい出来事である。正確な発祥時期や発祥者を特定する文献資料は見当たらないが、丹波篠山市周辺の黒大豆加工業者のあいだで1980年代頃に商品化が始まったことを示す記録がいくつか残っている。丹波やながわの「しぼり豆 お福豆」は発売から約35年のロングセラーとされており、これを起点にすると1990年前後の発売と推定できる。また、1988年に兵庫県篠山市一帯で開催された地域イベント「ひょうご北摂・丹波の祭典 ホロンピア88」において、しぼり豆が本格的に販売され大きな反響を呼んだとの報道もある。

しぼり豆が広まった背景には、甘納豆に対する「甘すぎる」というイメージを刷新し、より豆本来の味わいを楽しめる菓子を求める消費者のニーズがあったと考えられる。通常の甘納豆は糖蜜に複数回漬け込み、仕上げに砂糖をまぶすため糖度が高い。これに対し、しぼり豆は漬け込み回数を減らし、乾燥によって水分を飛ばすことで、豆そのものの風味を前面に出す製法をとっている。甘さ控えめでありながら、噛むほどに豆の旨みが広がる味わいが支持を集め、お茶請けだけでなく、コーヒーや紅茶にも合うモダンな和菓子として定着していった。

丹波黒大豆そのものの歴史は、さらに古くまで遡る。享保15年(1730年)の料理書『料理網目調味抄』に「黒豆 丹州笹山よし」と記されていることから、丹波産の黒大豆は約300年の歴史をもつことになる。享保19年(1734年)に小田垣六左衛門が丹波篠山で創業した小田垣商店は、明治元年(1868年)に黒大豆の種子販売と集荷を開始し、丹波黒大豆のブランド化に大きく寄与した。2021年には、丹波篠山の黒大豆栽培が日本農業遺産に認定されている。

こうした丹波黒大豆の歩みと、甘納豆の伝統的な製法が結びつき、1980年代後半から「しぼり豆」という新たなカテゴリーが生まれた。現在では丹波地方のみならず、北海道産の黒大豆を使ったしぼり豆が全国各地で製造・販売されるまでに広がっている。

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