材料の名前

日本語では「カシューナッツ」と表記し、和名は「カシューナットノキ(勾玉の木)」の種子を指す。英語では cashew nut(キャッシュー・ナット)、ポルトガル語では caju(カジュー)、スペイン語圏ではmarañón(マラニョン)とも呼ばれる。学名は Anacardium occidentale で、ウルシ科カシューナットノキ属に分類される常緑高木の種子にあたる。「cashew」の語源をたどると、ブラジルの先住民族トゥピ族が使っていたトゥピ語の「acajú(ゥカジュー)」に行き着く。これは「自ら実をつける木の実」を意味し、16世紀にブラジルへ進出したポルトガル人がこの呼び名を聞き取り、ポルトガル語で「caju」と表記したのが始まりだ。その後、英語圏へ伝わる過程で綴りが「cashew」へと変化し、世界に広まった。日本では種子の形が古代日本の装飾品「勾玉(まがたま)」に似ていることから、別名「マガタマノキ」とも呼ばれている。

特徴

カシューナッツの最大の特徴は、ほかのナッツ類にはないやわらかな歯ごたえと、クリーミーでほんのり甘い風味にある。アーモンドやクルミと比べると硬さが控えめで、かみしめるとじんわりとコクが広がる。脂質の約60%をオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)が占めており、ナッツ特有のしつこさが少なく、後味がすっきりしている点も魅力だ。

栄養面を見ると、100gあたりのエネルギーは約553kcal。タンパク質が約18g、脂質が約44g、炭水化物が約30g含まれている。ミネラルが豊富で、とくに亜鉛(約5.8mg)、鉄分(約6.7mg)、銅(約2.2mg)、マグネシウム(約292mg)の含有量が多い。ビタミンではB1(約0.42mg)やB6(約0.42mg)、ビタミンK(約34µg)が目立つ。これらの数値はUSDA(米国農務省)の栄養データベースに基づく生のカシューナッツの値であり、ローストや味付けの加工によって変動する点には注意が必要だ。

植物としてのユニークな特徴も見逃せない。カシューナッツは「カシューアップル」と呼ばれる洋梨型の果柄(偽果)の先端に、灰緑色の殻に包まれた状態でぶら下がるように実る。一つの果柄に対して種子はたった一つしかつかない。そのため、収穫には手間がかかり、加えて殻と種子の間にはカシューナッツシェルリキッド(CNSL)と呼ばれる腐食性の液体が含まれている。これはウルシ科の植物らしくかぶれを引き起こす成分を持っており、生の状態では食べることができない。加熱処理で毒性を取り除いてから殻を割り、中の種子を取り出すという工程を経て、ようやく食用のカシューナッツとなる。市場に出回っているカシューナッツが必ず加熱済みなのは、こうした理由による。

なお、日本ではアレルギー表示の「特定原材料に準ずるもの」にカシューナッツが指定されている。アレルギー体質の方が摂取する際は十分な注意が求められる。

用途

お菓子づくりにおいて、カシューナッツは幅広い場面で活躍する。代表的な使い方をいくつか紹介しよう。

まず、もっとも定番なのがチョコレートとの組み合わせだ。ローストしたカシューナッツをチョコレートでコーティングした「カシューナッツチョコ」は、やわらかなナッツの食感とチョコレートの甘さが絶妙に調和する。トリュフチョコの中に砕いたカシューナッツを混ぜ込む手法もあり、ザクザクとした食感のアクセントになる。

焼き菓子にもよく使われる。クッキーやスノーボール(ブールドネージュ)の生地に粗く砕いたカシューナッツを加えると、サクサクの生地にナッツの風味が加わって奥行きのある味わいが生まれる。フィナンシェやパウンドケーキのトッピングとしてホールのまま載せれば、見た目の華やかさも増す。

ペースト状に加工した「カシューナッツペースト」も、製菓の現場では重宝されている。カシューナッツをすり潰してなめらかなペーストにしたもので、タルトやボンボンショコラのフィリング(中身の詰め物)として使用される。アーモンドやヘーゼルナッツのプラリネ(ナッツをキャラメリゼしてペーストにしたもの)と同様に、カシューナッツでプラリネを作るパティシエも増えている。カシューナッツ特有のまろやかさが、ほかのナッツにはない独特の味わいを生み出すからだ。

キャラメリゼもカシューナッツの定番の使い方だ。砂糖を煮詰めたカラメルをナッツにまとわせるキャラメルナッツは、そのまま食べてもおいしいし、砕いてアイスクリームやパフェのトッピングにしても映える。

さらに近年は、ヴィーガン(完全菜食)スイーツの材料としても注目を集めている。水に浸したカシューナッツをミキサーで撹拌すると、クリームチーズに似たなめらかなテクスチャーが得られる。この「カシュークリーム」を使えば、乳製品を使わないチーズケーキやティラミスをつくることも可能だ。植物性の食生活を選ぶ人が増えるなかで、カシューナッツの存在感はますます高まっている。

料理の分野では、中華料理の「鶏肉とカシューナッツの炒め物(腰果鶏丁)」やタイ料理、インド料理のカレーのとろみ付けなど、多国籍な場面で親しまれている。お菓子に限らず、その汎用性の高さがカシューナッツの大きな強みと言えるだろう。

主な原産国と生産国

カシューナッツの原産地は南米ブラジルの北東部にある熱帯雨林地帯とされている。16世紀にポルトガル人がブラジルから持ち出し、東アフリカやインドのゴア地方をはじめとする世界各地の熱帯地域に防風林として植林したのが栽培の始まりだ。ポルトガルによる最初のカシューナッツ輸出は1550年代にさかのぼるとされ、1560年から1565年頃にはインドのゴアにも持ち込まれた記録が残っている。

現在の生産状況を見ると、FAO(国連食糧農業機関)の統計に基づく2022年の数値では、コートジボワール(象牙海岸)が約97万トンを生産し、世界最大のカシューナッツ生産国となっている。続いてインドが約78万トン、ベトナムが約35万トンと続く。コートジボワールを筆頭に、ベナン、タンザニアなどアフリカ勢が原料ナッツの生産では大きなシェアを占めている。アフリカ全体で世界の生産量の60%以上を担っているとされ、西アフリカを中心に小規模農家による栽培が盛んだ。

一方、加工・輸出の面ではベトナムとインドが圧倒的な存在感を示している。ベトナムは世界最大のカシューナッツ加工・輸出国で、アフリカから原料のナッツを輸入して殻を除去・選別し、カーネル(仁)の状態で再輸出するビジネスモデルを確立している。世界のカシューナッツ輸出量の60%以上をベトナムが占めるとも言われており、加工技術と物流網の強さが際立つ。インドは生産国であると同時に世界最大の消費国でもあり、国内需要が旺盛なため、輸出に回る量は限られている。

日本が輸入するカシューナッツは、インド産とベトナム産が中心だ。共立食品の製品にはインド産が使われており、東洋ナッツ食品やサンナッツ食品もベトナム産やインド産を主に取り扱っている。

選び方とポイント

カシューナッツを選ぶ際に知っておきたいのが、国際的なグレード規格だ。カシューナッツのカーネル(仁)は大きさと形状によってグレード分けされており、W(Whole=ホール、割れていない粒)のあとに数字が付く。この数字は1ポンド(約454g)あたりに含まれる粒数を示しており、数字が小さいほど一粒が大きく高品質とされる。

最上級の「WW180」は1ポンドあたり170~180粒、つまり一粒が大きくふっくらとしたもので「キング・オブ・カシュー」とも呼ばれる。一般に流通量が多いのは「W320」(1ポンドあたり300~320粒)で、家庭用のおつまみや製菓材料として広く使われている。「W240」はW320より一回り大きく、贈答品やプレミアム商品に使われることが多い。

お菓子づくりに使う場合は、用途に合わせたサイズ選びが大切になる。ホールのまま飾りに使うなら大粒のW240やW180が見栄えよく仕上がるし、生地に混ぜ込んだりトッピングに砕いて使うなら、W320や割れ粒(ブロークン)で十分だ。ブロークンはホールに比べて価格も手頃なため、コストを抑えたいときの選択肢になる。

鮮度の見極めもポイントになる。カシューナッツは脂質が多いため、古くなると酸化して独特の嫌な臭いが出る。購入時には賞味期限を確認するのはもちろんのこと、色味が白っぽく均一でツヤがあるもの、割れや欠けの少ないものを選ぶとよい。保存は高温多湿を避け、開封後は密閉容器に入れて冷暗所か冷蔵庫で保管するのが望ましい。酸化が進むと風味が落ちるだけでなく、お菓子全体の味わいにも影響するので、早めに使い切ることを心がけたい。

「素焼き」か「味付き」かも用途によって使い分ける必要がある。製菓用には食塩や油を使っていない素焼き(無塩・無油)タイプが適している。味付きのものは塩分や油分がお菓子の仕上がりに影響してしまうため、基本的には避けたほうが無難だ。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内でカシューナッツを取り扱う主要メーカーと、代表的な製品を紹介する。

東洋ナッツ食品(TON’S)は、1959年創業の日本初のナッツ専門メーカーだ。神戸市に本社を置き、「TON’S」ブランドで素焼きカシューナッツや素焼きミックスナッツを展開している。「焦がしキャラメルナッツ カシューナッツ」はキャラメルコーティングされたカシューナッツで、おやつやおつまみとして人気がある。

共立食品は家庭用の製菓材料やナッツ製品で知られるメーカーで、インド産カシューナッツを使った「カシューナッツ」(45g)をスーパーやドラッグストアで広く販売している。手に取りやすいサイズ感と、全国的な流通網が強みだ。

サンナッツ食品は業務用ナッツの大手で、インドやベトナム、インドネシアなどから仕入れたカシューナッツを加工・販売している。製菓・製パン業界への供給にも力を入れており、ペースト加工やダイスカットなど製菓用途に合わせた製品ラインナップが充実している。

タバタ(株式会社タバタ)は製菓食品用ナッツの総合輸入加工会社で、ホールだけでなくペースト状に加工したカシューナッツも取り扱っている。お菓子のフィリング用やチョコレート生地への混ぜ込み用として、プロのパティシエからの需要が高い。

お菓子の完成品としては、亀田製菓が「亀田の柿の種 クラフトMIX カシューナッツ」を販売していた実績がある(現在は製造終了)。トリュフ塩をまぶしたカシューナッツと素焼き柿の種を組み合わせた商品で、おつまみ需要を取り込んだユニークな製品だった。

ロイズ(ROYCE’)はチョコレートサブレにアーモンドとカシューナッツを組み合わせた製品を展開しており、北海道土産としても知られている。

小島屋はナッツ専門の小売店で、インドのゴア産など産地にこだわった高品質なカシューナッツを販売している。素焼きからフレーバー付きまでバリエーションが豊富で、ナッツ好きの間で評価が高い。

歴史・由来

カシューナッツの歴史は、南米ブラジル北東部の熱帯雨林にさかのぼる。ヨーロッパ人が到来するはるか以前から、ブラジルの先住民族トゥピ族はカシューの実を食料として利用していた。彼らはカシューアップル(偽果)を生のまま食べたり、果汁を発酵させて飲み物をつくったりしていたほか、殻に含まれる腐食性の液体を矢毒や虫除けに活用していたとも伝えられている。

大航海時代の16世紀、ブラジルに到達したポルトガル人がカシューの木に目をつけた。1550年代にはブラジルからカシューナッツの輸出が始まり、1560年代にはポルトガル領インドのゴアに苗木が持ち込まれた。ポルトガル人がカシューの木をアフリカやアジアの植民地に広めた理由の一つは、防風林としての実用性だった。カシューの木は乾燥に強く成長が早いため、沿岸部の砂地でも育ち、風から農地を守る役割を果たした。結果として、食用のナッツを生産しながら土地を保全するという一石二鳥の植物として、熱帯地域の各地に広まっていった。

インドにおけるカシューナッツの商業的な栽培が本格化したのは19世紀後半から20世紀にかけてのことだ。スリランカ出身のロッシュ・ヴィクトリアという実業家がインドで初めてカシューナッツの商業加工を手がけたと伝えられており、20世紀初頭にはインドからの輸出が始まった。以降、インドは長年にわたって世界最大のカシューナッツ生産国・加工国として君臨した。

20世紀後半に入ると、ベトナムがカシューナッツ産業に参入する。ベトナム戦争後の1980年代から栽培面積を拡大し、1990年代には加工技術の近代化を進めた。2000年代にはインドを抜いて世界最大のカシューナッツ加工・輸出国となり、現在もその地位を維持している。

アフリカにおいても、コートジボワールが2010年代半ばにインドを抜いて世界最大の原料カシューナッツ生産国に躍り出た。2022年には約97万トンを生産し、2023年には約104万トンを記録。コートジボワール政府は2025年の生産量を130万トンに引き上げる見通しを示しており、さらなる拡大が見込まれている。ただし、アフリカ産の原料ナッツの多くはベトナムやインドに輸出されて加工されるため、「原料はアフリカ、加工はアジア」という国際分業体制がカシューナッツ産業の特徴になっている。

日本でカシューナッツが一般的に知られるようになったのは、戦後の高度経済成長期以降のことだ。輸入ナッツの流通が増えるとともに、おつまみやお菓子の材料として家庭にも浸透していった。近年はナッツの健康効果が注目されるなかで、カシューナッツの消費量も堅調に推移している。

500年近い歴史のなかで、ブラジルの先住民の食べ物からポルトガルの植民地政策を経て世界の食卓へと広がったカシューナッツ。その背景には、自然の恵みと人間の移動、そして各地の加工技術の発展という壮大な物語がある。一粒のナッツに宿る歴史に思いをはせながら、お菓子づくりに活用してみてはいかがだろうか。

免責事項

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