材料の名前(日本語・外国語)
日本語では「マカダミアナッツ」と表記されるのが最も一般的ですが、「マカデミアナッツ」と呼ばれることもあります。英語圏では “Macadamia nut” と書き、発音は「マカデイミア」に近いのが実情です。学名は主に食用として流通する2種があり、殻の表面が滑らかな Macadamia integrifolia(スムースシェル・マカダミア)と、殻の表面がざらついた Macadamia tetraphylla(ラフシェル・マカダミア)です。商業的に広く栽培されているのは前者の integrifolia で、後者は一部の地域で栽培されるにとどまります。分類上はヤマモガシ科(Proteaceae)マカダミア属に属する常緑樹の種実です。
別名として「クイーンズランドナッツ(Queensland nut)」「バウプルナッツ(Bauple nut)」「ブッシュナッツ(Bush nut)」などの英名があり、原産地であるオーストラリア・クイーンズランド州に由来する呼び名が多く残っています。中国語圏では「夏威夷果(シャーウェイイーグオ、ハワイの実の意)」あるいは「澳洲堅果(オーストラリアナッツの意)」と呼ばれています。
特徴
マカダミアナッツの最大の特徴は、全ナッツ類のなかで最も高い脂質含有率を誇る点にあります。生のマカダミアナッツ100gあたりの脂質は約75.8gにも達し、そのうち一価不飽和脂肪酸が約58.9gと全体の約78%を占めます。この一価不飽和脂肪酸の主成分はオレイン酸(約43.8g)とパルミトレイン酸(約13.0g)です。パルミトレイン酸をこれほど豊富に含む食品は珍しく、ナッツの中ではマカダミアナッツが群を抜いています。パルミトレイン酸は「若さの脂肪酸」とも称され、肌のうるおいや血行促進への寄与が注目されています。コレステロールを含まないことも特筆すべき点です。
見た目は直径約1.5〜2cmの球形で、乳白色からクリーム色をしています。非常に硬い殻に覆われており、「世界一硬い殻を持つナッツ」とも表現されます。殻は3層構造をしており、専用の殻割機でなければ割ることが困難です。食感はバターのようにリッチでクリーミーであり、口の中でほろりと崩れるような独特の柔らかさがあります。味わいは上品で淡白ながら、ほのかな甘みとコクがあり、「ナッツの王様」「ナッツの女王」と呼ばれる所以です。
栄養面ではビタミンB1の含有量が突出しており、100gあたり約1.2mgと、ナッツ類のなかでもトップクラスです。そのほかマグネシウム、マンガン、銅、鉄分、食物繊維なども豊富に含まれ、少量でも高い栄養価を摂取できる食材として知られています。
用途
お菓子づくりにおけるマカダミアナッツの用途は非常に多彩です。
まず、最も代表的な使い方が「チョコレートとの組み合わせ」です。丸ごとローストしたマカダミアナッツをミルクチョコレートやダークチョコレートでコーティングした「マカダミアナッツチョコレート」は、ハワイ土産の定番として世界的に知られています。クリーミーなナッツの食感と、なめらかなチョコレートの口どけが絶妙にマッチします。
クッキーやビスコッティの生地に砕いたマカダミアナッツを練りこむ使い方も定番です。ホワイトチョコレートチップと刻みマカダミアナッツを組み合わせた「ホワイトチョコマカダミアクッキー」は、欧米のベーカリーではとりわけ人気の高いフレーバーのひとつです。バターリッチな生地とナッツのコクが見事に調和します。
ケーキやタルトのトッピング、フィリング材としても利用されています。刻んだマカダミアナッツをキャラメリゼしてケーキの上に散らしたり、ペースト状に加工してプラリネやガナッシュに混ぜ込む手法もあります。製菓材料メーカーからは「マカダミアナッツペースト」「マカダミアナッツプラリネ」といった業務用製品も販売されており、パティシエが使いやすい形態で流通しています。
また、アイスクリームのミックスインとしても人気があり、バニラアイスやマカダミアナッツフレーバーのアイスに砕いたナッツを混ぜ込む製品が多数あります。ブリトルやヌガー、プラリネといった砂糖菓子の材料としても使われます。
さらに、マカダミアナッツを圧搾して採取した「マカダミアナッツオイル」は、製菓用のオイルとしても高い評価を受けています。酸化しにくく、風味がまろやかなため、焼き菓子やドレッシングに上品なコクを加えることができます。
主な原産国・生産国
マカダミアナッツの原産地はオーストラリアのクイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州北東部にかけての熱帯雨林地帯です。この地域ではおよそ6万年以上前から自生していたとされています。
現在の主な生産国は、南アフリカ共和国、オーストラリア、中国、ケニアの4カ国が上位を占めています。南アフリカは近年急速に生産量を拡大し、世界最大のマカダミアナッツ生産国となっています。かつては1997年頃までハワイ(アメリカ合衆国)が世界最大の生産地でしたが、その後オーストラリアに首位の座を奪われ、さらに近年は南アフリカの台頭が著しい状況です。
そのほか、グアテマラ、ブラジル、ベトナム、マラウイなどでも栽培が広がっています。マカダミアの木は亜熱帯から温帯の温暖な気候を好み、霜や強風に弱い性質があるため、栽培可能な地域は限られます。木を植えてから本格的に実をつけるまで7〜10年を要するため、「長期投資型」の農作物としての性格を持っています。
日本への輸入は主にオーストラリア産とアメリカ(ハワイ)産が多くを占めますが、南アフリカ産やケニア産も増加傾向にあります。
選び方とポイント
マカダミアナッツを選ぶ際にはいくつかの重要なポイントがあります。
第一に「鮮度」です。マカダミアナッツは脂質含有率が非常に高いため、酸化しやすいという弱点があります。酸化すると油っぽい不快な臭いがしたり、苦味が出たりします。購入時にはパッケージの賞味期限を確認し、できるだけ新しいものを選びましょう。真空パック包装のものが最も鮮度を保ちやすく推奨されます。
第二に「加工方法」です。製菓用途であれば「素焼き(ロースト・無塩)」のものが汎用性が高く使いやすいでしょう。塩味付きのものはおつまみには最適ですが、お菓子に使う場合は味のバランスを崩す可能性があります。生(ロー)のマカダミアナッツは、自分で好みの具合にローストできる利点がありますが、保存期間が短い点に注意が必要です。
第三に「粒の形状とサイズ」です。業務用では「ホール(丸粒)」「ハーフ(半割)」「ピース(砕き)」「ダイス(小さめのカット)」など、用途に応じたサイズが販売されています。チョコレートコーティングにはホールやハーフ、クッキーやケーキの生地に練りこむにはピースやダイスが適しています。
第四に「色と外観」です。良質なマカダミアナッツは全体的に均一な乳白色からクリーム色をしており、表面にツヤがあります。茶色く変色していたり、黒い斑点があるものは劣化している可能性があるため避けたほうがよいでしょう。
保存に関しては、開封後は密閉容器に入れて冷暗所で保管するのが基本です。長期保存する場合は冷凍庫での保管も有効で、適切に保存すれば数ヶ月間は品質を維持できます。
メジャーな製品とメーカー名
マカダミアナッツを使ったお菓子製品は数多く存在しますが、特に代表的なものを挙げます。
ハワイアンホースト(Hawaiian Host) は、世界で初めてマカダミアナッツチョコレートを商品化したメーカーとして知られています。マウイ島出身の日系3世であるマモル・タキタニ氏が、1927年創業のホノルルの菓子店を1960年に買収し、独自のドライロースト製法でマカダミアナッツチョコレートを完成させました。「ハワイアンホースト マカダミアナッツチョコレート TIKI」は、ハワイ土産の代名詞といえる製品です。
マウナロア(Mauna Loa) は、ハワイ島に本拠を置くマカダミアナッツブランドで、ハワイアンシーソルト味やハニーロースト味など多彩なフレーバーのマカダミアナッツ製品を展開しています。もともとハーシーズ傘下でしたが、現在はハワイアンホースト・ジャパンのグループ企業として運営されています。
明治(meiji) の「マカダミアチョコレート」は、日本国内で最も知名度の高いマカダミアナッツチョコレートのひとつです。丁寧にローストされたマカダミアナッツをまろやかなミルクチョコレートで包んだ一口サイズの粒が特徴で、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで広く販売されています。
ロッテ(LOTTE) も同名の「マカダミアチョコレート」を製造しており、明治製品と並んで日本市場における二大定番商品となっています。ロッテの製品はマカダミアナッツがやや大きめにカットされていることで知られます。
ビッグアイランド・キャンディーズ(Big Island Candies) は、1977年にハワイ島ヒロで創業した高級菓子メーカーで、マカダミアナッツを使ったショートブレッドクッキーやチョコレートディップクッキーが看板商品です。
森永製菓 の「マカダミアナッツクッキー」や、ミスターイトウ(イトウ製菓) の「アメリカンソフトクッキー マカダミア」なども、日本の消費者にはなじみ深い製品です。
業務用製菓材料としては、共立食品、タバタ、東海ナッツ、ニダフジャパン などのメーカーが、ホール・ハーフ・ダイス・ペーストなど多様な形態のマカダミアナッツ原料を供給しています。
歴史・由来
マカダミアナッツの歴史は非常に古く、その起源はおよそ6万年以上前のオーストラリアにさかのぼります。クイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州北東部にかけての熱帯雨林に自生していたマカダミアの木の実は、オーストラリアの先住民アボリジニの人々にとって古くから貴重な食料源でした。アボリジニはこの木の実を「キンダルキンダル(Kindal Kindal)」などの名で呼び、部族間の交易品としても利用していたと伝えられています。
1857年、ドイツ出身のオーストラリア人植物学者フェルディナント・フォン・ミュラー(Ferdinand von Mueller)が、この木に学名を与えました。その際、友人であったスコットランド出身のオーストラリア人化学者・政治家ジョン・マカダム(John Macadam)の名にちなんで「Macadamia」と命名しました。これが「マカダミア」という名前の由来です。ジョン・マカダムはビクトリア哲学協会の名誉秘書を務めた人物でした。
1858年には、オーストラリアで最初のマカダミアの農園が設けられたと記録されています。しかし、商業的な大規模栽培への道が開けたのは、意外にもオーストラリアではなくハワイでした。1880年代、当時のハワイ王国でサトウキビ畑の防風林として利用する目的でマカダミアの木がオーストラリアから移植されました。1892年にはハワイに本格的に植樹され、1921年からはホノルル近郊のハワイ大学の研究施設で商業生産を目指した品種改良が始まりました。原種よりも甘みが強く脂肪分の豊かなナッツへと改良が進められ、1930年代にはハワイでの商業栽培が本格化します。
マカダミアナッツをお菓子として世界に広めた立役者が、先述のハワイアンホースト社です。日系3世のマモル・タキタニ氏は1960年代に、マカダミアナッツをチョコレートでコーティングするという画期的な製品を生み出しました。ハワイがアメリカ合衆国の50番目の州に昇格した1959年前後の観光ブームと相まって、マカダミアナッツチョコレートは「ハワイ土産の定番」としてのブランドを確立していきます。
ハワイは1997年頃まで世界最大のマカダミアナッツ生産地でしたが、その後オーストラリアが生産量で追い越し、さらに近年では南アフリカが急成長して世界最大の生産国となっています。中国やケニアでの生産も拡大しており、マカダミアナッツは「オーストラリア原産、ハワイ育ち、世界に展開」という独自の歴史をたどってきた食材といえるでしょう。
なお、世界で栽培されているマカダミアの多くが、19世紀のオーストラリア・クイーンズランド州南部にあった1本の木にDNAが遡れるという研究結果が2019年に発表されており、遺伝的多様性の狭さが今後の課題として指摘されています。
