材料の名前
日本語では「十五穀米」と書き、読みは「じゅうごこくまい」。15種類の穀物をブレンドした雑穀ミックスの総称で、広義には「雑穀米」のカテゴリーに属する。英語では “fifteen-grain rice” や “rice with fifteen kinds of grain” と訳されることが多い。海外の食品販売サイトでも “15 Grains Rice” あるいは “Millet for Rice 15 grains” といった表記が見られる。フランス語やドイツ語での定まった呼称は確認できないが、「mélange de 15 céréales(仏)」「15-Korn-Mischung(独)」のように穀物の数を冠した説明的な表現が用いられるケースがある。
なお、「十五穀米」という名前は商標や法的な規格名ではなく、各メーカーがそれぞれ独自に15種の穀物を選んで配合したブレンド雑穀を指す商品名ないし通称である。そのため、含まれる穀物の組み合わせはメーカーごとに異なる。
特徴
十五穀米の最大の特徴は、1つのブレンドに15種類もの穀物が詰まっている点にある。白米だけでは摂りにくいビタミンB群、ミネラル(鉄分・マグネシウム・カルシウムなど)、食物繊維、ポリフェノールといった栄養素を幅広く補えるのが強みだ。
代表的な構成穀物としては、大麦(押し麦・白麦)、黒米、赤米、もちあわ、もちきび、もち米、発芽玄米、ひえ、たかきび(ソルガム)、はと麦、とうもろこし、大豆、アマランサス、キヌア、ごま(黒・白)などが挙げられる。ただし前述のとおり、メーカーによってはそば米や小豆、黒豆、緑豆、ホワイトソルガムなどを採用しており、内容は一律ではない。
食感の面では、もちあわやもちきびが生み出すもちもちとした粘り、大麦やはと麦のぷちぷちとした歯ごたえ、ごまの香ばしさなどが折り重なり、白米とは異なる奥行きのある味わいが楽しめる。黒米や赤米が含まれるブレンドでは、炊き上がりが淡い紫色や桜色に色づき、見た目にも華やかになる。
栄養面をもう少し具体的に見ると、はくばくの「十五穀ごはん」の場合、100gあたりのエネルギーは約349kcal、たんぱく質8.1g、食物繊維7.0g、脂質4.1gと表示されている。白米の100gあたりの食物繊維が0.5g程度であることを考えると、食物繊維の含有量は際立って多い。もちろん、十五穀米は白米に少量混ぜて炊飯するのが一般的なので、実際に口にする一杯あたりの数値は白米で希釈されるものの、それでも食物繊維やミネラルの底上げに貢献してくれる。
味の特徴としては、穀物由来のほのかな甘みと香ばしさがあり、噛むほどに旨みが広がる。クセが強すぎないため、初めて雑穀米に挑戦する人にも比較的取り入れやすいブレンド数だと言える。十六穀や二十一穀といったさらに種類の多い商品と比べると、やや軽めの風味に仕上がる傾向がある。
用途
十五穀米はごはんとして炊飯するのが最も一般的な食べ方だが、お菓子づくりの素材としても活用の幅は広い。
炊いた十五穀米をおはぎや大福の生地に練り込めば、もちもち感が増すだけでなく、雑穀のぷちぷちした食感がアクセントになる。黒米や赤米の色素が自然な色づきを生むので、着色料なしでも見栄えの良い和菓子に仕上がる。
洋菓子の分野でも活躍の場がある。乾燥状態の十五穀米をフライパンで軽く空煎りし、クッキーやビスコッティの生地に混ぜ込むと、ナッツのような香ばしさとザクザクした歯ごたえが加わる。グラノーラに雑穀を足してオーブンで焼き上げるレシピも、健康志向の層を中心に人気が高い。
パン生地に混ぜ込む使い方もある。十五穀米を炊飯してからパン生地に加える方法と、乾燥のまま水に浸した穀物を生地に練り込む方法の二通りがあり、前者はしっとりもちもち、後者はぷちぷちとした噛み応えに仕上がる。雑穀パンは一般的なパン屋でも定番商品として見かける機会が増えた。
さらに、十五穀米をゆでてサラダやスープのトッピングに使う方法もあり、スイーツに限らず幅広い料理に応用できる食材である。パンケーキの生地に混ぜたり、マフィンやスコーンに加えたりと、ホットケーキミックスとの相性も悪くない。
製菓の現場では、素材そのものの味が淡泊なため、チョコレートやきな粉、黒糖、抹茶など和洋問わず多様なフレーバーと組み合わせやすいのも利点と言える。
主な原産国
十五穀米はブレンド製品であるため、個々の穀物によって産地が異なる。はくばくの「十五穀ごはん」の原料産地情報を例に取ると、以下のような地域から調達されている。
大麦(白麦)や黒米、赤米、発芽玄米、もち米、大豆は日本国産が中心。もちあわの産地は中国、もちきびは中国やアメリカ。とうもろこし(挽割)はアメリカ産が多い。ごま類は産地が広範で、黒煎りごまはミャンマー・パラグアイ・ボリビアなど、白煎りごまはグアテマラ・パラグアイ・ボリビアなどが使用される可能性がある。たかきび(ソルガム)は中国やオーストラリア、アマランサスはペルー・ボリビア・インド、キヌアはペルー・ボリビア、はと麦はタイやラオスが主な調達先として挙げられている。
このように、十五穀米は日本国内だけでなく、南米、東南アジア、アフリカ大陸に隣接する地域など世界各地の穀物が一袋に集まった「地球の恵みのブレンド」とも言える商品だ。国産100%にこだわった商品も一部のメーカーから販売されており、穀物の蔵(穀の蔵)が展開する国内産十五穀米などがその代表例である。
選び方とポイント
十五穀米を選ぶ際には、いくつかの観点をチェックしておくと失敗が少ない。
まず確認したいのは、穀物の種類と配合バランスだ。同じ「十五穀」でも、もち種の穀物(もちあわ、もちきび、もち米など)の割合が多い商品はもちもち食感が強く出る。反対に、大麦やはと麦など「うるち種」の穀物が多い場合は、さらっとした食感に仕上がりやすい。お菓子に使う場合は、もち種が多い方が生地への馴染みが良く、和菓子や餅菓子との相性に優れる。
次に産地の確認。国産穀物のみで構成された商品は価格がやや高めだが、残留農薬やポストハーベスト処理に対する不安を減らしたい場合は選択肢に入る。海外産の穀物を含む商品であっても、はくばくのように残留農薬検査を自社で実施しているメーカーもあるので、パッケージの表記や公式サイトで品質管理体制を確認するとよい。
アレルゲンへの配慮も欠かせない。十五穀米のブレンドにはごま、大豆、そばなどアレルギー特定原材料等に含まれる食品が入っている場合がある。特にそばは重篤なアレルギー反応を起こしうるため、原材料表示を必ず確認してほしい。ハウス食品の「元気な穀物 香ばし十五穀」にはそばが含まれているが、はくばくの「十五穀ごはん」には含まれていないなど、製品ごとに違いがある。
保存性と使い勝手の面では、小分けパック(1回分ずつ個包装されたタイプ)は計量の手間が省け、酸化も防ぎやすい。業務用の大容量パック(500g~1kgなど)は単価が抑えられるが、開封後は密閉容器に移して冷暗所で保管し、早めに使い切るのが望ましい。高温多湿な場所に長く置くと、穀物の脂質が酸化して風味が落ちる原因になる。
お菓子に使う目的で選ぶなら、あらかじめ焙煎されたタイプ(煎りごまや焙煎大豆を含むものなど)の方が、加熱なしでもそのまま生地に加えられて便利だ。炊飯用に加工されていない生の雑穀は、水に浸けてから煮るか蒸す工程が別途必要になるため、レシピの手順と照らし合わせて選ぶとよいだろう。
メジャーな製品とメーカー名
十五穀米を取り扱う主要メーカーと代表製品を紹介する。
はくばく(株式会社はくばく)は、山梨県中央市に本社を置く穀物食品の大手メーカー。1999年にブレンド雑穀商品の第一弾「穀物専科」を発売して以来、国内の雑穀ミックス市場でトップシェアを維持してきた。十五穀米としては「十五穀ごはん」(300g入り)や業務用の「十五穀ごはん もち麦ブレンド」(1kg入り)などを展開している。同社の看板商品は「十六穀ごはん」だが、十五穀もラインナップとして根強い人気がある。
ハウス食品は、カレーやシチューで知られる総合食品メーカーだが、雑穀米の分野でも「元気な穀物 香ばし十五穀」(180g/30g×6袋)を販売している。もち米、黒米、とうもろこし、小豆、大麦、そば、はと麦、黒豆、黒ごま、白ごま、発芽玄米、ホワイトソルガム、もちあわ、もちきび、アマランサスの15種で構成されており、香ばしさを前面に出した味わいが特徴だ。小分け包装で使い切りやすく、スーパーマーケットでの入手性も高い。
味源(あじげん)は、香川県に本社を置くメーカーで、「もちもち十五穀米」(280g入り)を販売している。押し麦、ホワイトソルガム、もちきび、もちあわ、黒米、うるち玄米、ひえ、そば米、黒豆、黒ごま、とうもろこし、緑豆、アマランサス、キヌア、赤米という構成で、その名のとおりもちもちとした食感を強く打ち出した配合になっている。巣鴨の山年園や各種ECサイトなどで取り扱いがある。
このほか、穀の蔵(こくのくら)やベストアメニティ(福岡県久留米市)、やずやなども雑穀米のラインナップを幅広く持っており、穀物の数や国産比率の違いで複数の商品を展開している。ベストアメニティは「雑穀米」という商品名を日本で初めて打ち出した企業として知られ、同社の「十六雑穀米」は2009年にモンドセレクション金賞を受賞した実績を持つ。
歴史・由来
十五穀米の歴史を語るには、まずその土台となる「雑穀」の歴史をたどる必要がある。
雑穀の起源はユーラシア大陸とアフリカ大陸に求められ、粟(あわ)やきび、ひえなどは紀元前3000年よりさらに遡る時代から栽培されていたとされる。日本においても、稲作が伝わる以前から粟やひえの栽培が行われていた形跡があり、雑穀は日本人の食生活を最も長く支えてきた穀物群と言ってよい。
「古事記」には「稲、粟、麦、小豆、大豆」の五穀にまつわる起源神話が記されており、「日本書紀」ではこれに稗を加えた六穀が登場する。五穀豊穣という言葉が今も使われているように、穀物は古来より日本人の暮らしと信仰の中心にあった。
江戸時代中期(元禄期)になると、江戸をはじめとする都市部で白米食が広まった。しかし、精米によってビタミンB1が失われた白米ばかり食べることで脚気が蔓延し、「江戸患い」と呼ばれた。一方、地方の農村部では依然として粟やひえを白米に混ぜた雑穀飯が主食であり、皮肉にも脚気の被害は都市部より少なかったと伝えられている。
明治以降、白米の普及はさらに進み、雑穀は「貧しい食べ物」というイメージがつきまとうようになった。戦後の高度経済成長期を経て、日本人の主食はほぼ完全に白米へと移行し、雑穀は食卓からほとんど姿を消した。
転機が訪れたのは1990年代後半から2000年代にかけてのこと。健康情報誌やテレビ番組で雑穀の栄養価が取り上げられ始め、「白米よりも栄養が豊富」「食物繊維やミネラルが多い」といった情報が消費者に届くようになった。農林水産省の資料によれば、2000年頃から2003年頃の発芽玄米ブーム、2008年頃の雑穀ブームを経て、雑穀米の認知度と市場規模は大きく拡大した。やずやがテレビCMで「発芽十六雑穀」を精力的に訴求した2008年頃は、雑穀米ブームの象徴的な時期とされている。
こうした流れの中で、各メーカーは穀物の数を競うように商品を開発し、五穀米、十穀米、十五穀米、十六穀米、二十一穀米など多彩なブレンド商品が市場に並ぶようになった。十五穀米は、種類が多すぎず少なすぎない「ちょうどいいバランス」として一定の需要を獲得し、現在に至るまでスーパーマーケットやオンラインショップで定番の地位を維持している。
はくばくが1999年にブレンド雑穀の第一弾「穀物専科」を発売して以降、同社は雑穀ミックス市場で国内シェアの約6割を占めるまでに成長した。また、ベストアメニティの創業者・内田弘氏は、福岡県の契約農家から受け取った雑穀をブレンドして「雑穀米」という商品名で世に送り出した人物で、同社は「雑穀米の生みの親」を自認している。
さらに近年では、キヌアやアマランサスといった南米原産のスーパーフードが十五穀米のブレンドに加わるケースも増えた。キヌアは南米アンデス高地で7500年以上前から栽培されてきた穀物であり、アマランサスもインカやアステカ文明で主要な食料とされていた歴史を持つ。これらの穀物は2013年の国際キヌア年をきっかけに世界的に注目され、日本の雑穀ブレンドにも次々と取り入れられるようになった。
2018年頃には「もち麦」の人気が急上昇し、もち麦をブレンドに加えた十五穀米や十六穀米も登場した。白米離れや糖質制限の風潮が強まる中で、「主食をただ減らすのではなく、栄養価の高い穀物に置き換える」という選択肢として雑穀米が改めて脚光を浴びた。
このように十五穀米は、日本人が数千年にわたって育んできた雑穀食文化と、現代の健康志向、そして世界各地のスーパーフードが合流した産物である。単なる「ごはんに混ぜるもの」にとどまらず、お菓子やパンの素材としても可能性を広げ続けている。
