材料の名前
日本語では「十八穀」あるいは「十八穀米」と呼ばれる。十八種類の穀物をブレンドした雑穀ミックスの総称であり、特定の一種類の穀物を指す名前ではない。英語では「18 Multigrain Rice」もしくは「Eighteen Grain Rice Blend」と表記されることが多い。フランス語圏のカナダなどでは「Riz de 18 multigrains」というラベルが使われている例もある。中国語では「十八穀米」とそのまま漢字表記される場合がほとんどだ。
日本雑穀協会の定義によると、「雑穀」とは「主食以外に日本人が利用している穀物の総称」とされている。イネ科のヒエ・アワ・キビといった狭義の雑穀だけでなく、豆類やゴマ、擬穀(アマランサスやキヌアなど)まで含めた広い概念として捉えられており、十八穀米はその範囲のなかから十八種類を選び出してブレンドしたものにあたる。
特徴
十八穀米の最大の特徴は、たった一袋で十八種類もの穀物の栄養を同時に摂取できる点にある。製品ごとにブレンド内容は異なるものの、代表的な構成穀物としては、押麦(大麦)、もち麦、黒米、赤米、もちきび、もちあわ、たかきび(モロコシ)、うるちひえ、はとむぎ、とうもろこし、発芽玄米、アマランサス、キヌア、カニワ、オーツ麦、白ごま、黒ごま、小豆や黒豆などの豆類が挙げられる。
食感は「もちもち」「プチプチ」と表現されることが多い。もち性の穀物(もちあわ、もちきび、もち麦など)が含まれていると粘りが出て、弾力のある噛み応えが生まれる。一方、アマランサスやキヌアのような極小粒の穀物が、口のなかで弾けるようなプチプチした食感を加えてくれる。
色合いも魅力のひとつだ。黒米や赤米に含まれるアントシアニンの色素が炊飯時に溶け出し、白米がほんのり紫がかった美しい色に染まる。見た目の華やかさは料理の彩りとしても優秀で、お菓子やスイーツに取り入れた際にも存在感を発揮する。
栄養面では、白米だけでは不足しがちなビタミンB群、鉄分、マグネシウム、カルシウム、食物繊維をバランスよく補えるとされている。はくばくの公式情報によれば、同社の雑穀ブレンドには白米と比較して食物繊維やミネラルが豊富に含まれている。穀物ごとに得意な栄養素が異なるため、種類を多くブレンドすることで栄養の偏りが小さくなる仕組みだ。
用途
十八穀米は主食として白米に混ぜて炊く使い方がもっとも一般的だが、お菓子づくりの素材としても幅広く活用されている。
お菓子への代表的な使い方のひとつが、クッキーやビスコッティへの練り込みだ。炊いた十八穀米、あるいは炒った雑穀を生地に混ぜ込むと、ザクザクとした独特の歯ごたえが加わり、素朴で香ばしい風味が楽しめる。バターや砂糖を控えめにしても穀物そのものの甘みがあるため、ヘルシー志向の焼き菓子との相性がよい。
おはぎやだんごといった和菓子にもよく合う。炊いた雑穀米の粘りを活かして成形し、きなこやあんこをまぶせば、白いもち米で作るおはぎとはひと味違う、雑穀ならではの香りと噛み応えが楽しめるスイーツに仕上がる。砂糖を使わず、穀物と小豆の自然な甘さだけで仕上げるレシピも人気がある。
パンケーキやマフィンの生地に加えるのも定番だ。炊いた十八穀米を少量混ぜ込むだけで、もっちりとした食感が生まれ、栄養価も底上げできる。グラノーラバーの材料に使ったり、パウンドケーキに散らして焼き上げたりと、洋菓子系のレシピにも応用が効く。
お菓子以外では、サラダのトッピング、スープの具材、リゾットのベースなど、料理全般への展開も見られる。炊いた雑穀米を冷凍しておけば、必要なときに解凍してすぐ使えるので、日々の食事にもお菓子づくりにも取り入れやすい。
主な原産国
十八穀米はブレンド製品であるため、含まれる穀物ごとに原産国が異なる。はくばくの公式サイトに掲載されている産地情報を参考にすると、おおまかな傾向がつかめる。
日本国内で生産されるものとしては、発芽玄米、黒米、赤米、大麦(押麦・もち麦)などがある。とくに黒米と赤米は国産原料を使っているメーカーが多い。
もちきびの産地は中国やアメリカが中心で、もちあわも中国産が多い。はとむぎはタイやラオスなど東南アジアからの輸入が目立つ。とうもろこしはアメリカ産が一般的だ。
スーパーフードとして注目されるアマランサスは、主にペルー、ボリビア、インドが産地として挙げられる。同じく南米原産のキヌアも、ペルーやボリビアのアンデス山脈周辺で栽培されたものが流通している。カニワもアンデス原産の穀物で、キヌアの近縁種にあたる。
白ごまはグアテマラやパラグアイなど中南米産、黒ごまはミャンマーなど東南アジア産の原料が使われるケースが報告されている。
このように、十八穀米は世界各地から集まった穀物で構成されている。近年は「全穀物国産」を売りにした製品も増えており、国産にこだわりたい消費者の選択肢も広がっている。
選び方とポイント
十八穀米を選ぶ際には、いくつかの観点から比較すると失敗しにくい。
まず確認したいのは、ブレンドされている穀物の内訳だ。「十八穀」と名乗っていても、製品ごとに使われる穀物の種類や比率は異なる。豆類が入っているタイプと入っていないタイプがあり、豆特有の食感や風味が苦手な場合は「豆なし」を選ぶとよい。旭食品の「贅沢穀類 十八穀ごはん」は豆を含まないブレンドで、雑穀感がありながらクセのない味わいに仕上がっている。
次に、原料の産地にも目を向けたい。国産原料のみで構成された製品は、安心感を求める消費者から支持されている。パッケージの裏面に原料ごとの産地が記載されている製品を選ぶと、透明性が高く信頼できる。
包装形態も重要な比較ポイントだ。一回分ずつ小分けになった個包装タイプは、計量の手間が省けるうえ、酸化や虫害を防ぎやすい。大容量パックはコストパフォーマンスに優れるが、開封後は密閉容器に移して冷暗所で保管する必要がある。
粒の状態も確認しておきたい。粒がそろっていて、欠けたり割れたりしていないものほど鮮度が高い傾向にある。虫食いや変色が見られるものは古くなっている可能性があるため避けるのが無難だ。
炊飯時に浸水が必要かどうかも、製品によって異なる。浸水不要でそのまま白米と混ぜて炊ける製品は手軽さの点で優れている。忙しい日常のなかで無理なく続けるには、この手軽さが案外大切な判断材料になる。
メジャーな製品とメーカー名
十八穀米に限らず、雑穀米市場には多くのメーカーが参入しているが、なかでも知名度と流通量の面で存在感のあるブランドを挙げる。
はくばく(株式会社はくばく)は、山梨県に本社を置く穀物加工メーカーで、雑穀米カテゴリーでは国内屈指の存在だ。「おいしさ味わう十六穀ごはん」をはじめとするシリーズを展開しており、西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」の「混ぜて炊くだけ 十八穀ごはんのもと」も、はくばくが製造を担当している。この製品は雑誌「LDK」の雑穀米比較テストでベストバイに選ばれた実績がある。
旭食品(旭食品株式会社)は「贅沢穀類 十八穀ごはん」を販売しており、豆を使わないブレンドが特徴的だ。押麦、黒米、もち麦、もちきび、アマランサス、キヌアなど十八種類の穀物を配合し、クセのない味わいに仕上げている。
やずや(株式会社やずや)の「発芽十六雑穀」は、2004年の発売以来、愛用者が175万人を超えたとされるロングセラー商品だ。十六穀だが、全穀物を発芽させてから使用するという独自の製法が支持を集めている。日本雑穀アワードでも受賞歴がある。
タマチャンショップ(九南サービス株式会社)は宮崎県に拠点を持つ通販ブランドで、「三十雑穀」が楽天市場の食品部門で上位にランクインするなど、オンライン市場で強い人気を誇る。もともとは「未来雑穀21」として販売していた商品を、三十種類の穀物にリニューアルした経緯がある。
自然の館(株式会社についてのブランド名)からは「未来雑穀21+マンナン」が販売されており、こんにゃく由来のマンナンを加えることでカロリーコントロールを意識した設計になっている。
また、SL Creations(旧シュガーレディ)も「十八穀ご飯の素」を取り扱っており、全十八種の穀物を国産原料のみで構成している。
おめん京都(株式会社おめん京都)の「A・ZEN 日本の十八穀米」は、米・食味鑑定士が監修し、希少な古代米やGABA(ギャバ)を多く含む発芽米を配合した本格派の製品で、日本雑穀アワードの殿堂入りを果たしている。
歴史・由来
十八穀米の背景を理解するには、日本における雑穀文化の長い歴史をたどる必要がある。
日本で雑穀が食されるようになった時期は、はるか縄文時代にまでさかのぼる。一般社団法人日本雑穀協会および日本クリニック株式会社の情報によれば、縄文時代の遺跡からはアワやヒエ、大麦などの種子が出土しており、紀元前3000年よりも前から栽培が行われていたことがわかっている。
日本最古の歴史書「古事記」には、稲・粟・麦・小豆・大豆が「五穀」として記されている。「日本書紀」ではこれに稗(ひえ)を加えた「六穀」が登場しており、古代の日本人にとって雑穀がいかに身近な食料であったかがうかがえる。
江戸時代になると、元禄期を境に武士や江戸の町民の間で白米を食べる習慣が広まった。しかし、白米ばかりを食べることでビタミンB1が不足し、「江戸患い」とも呼ばれた脚気が流行した。経験的にソバや麦、小豆を食べると症状が和らぐことが知られており、白米偏重の弊害が早くから認識されていたともいえる。一方で、農村部の多くの人々は依然として白米にヒエやアワを混ぜた雑穀飯を日常的に食べていた。
明治以降の近代化、そして戦後の高度経済成長を経て、白米が主食の座を確固たるものにすると、雑穀は「貧しい時代の食べ物」というイメージと結びつくようになり、生産量も消費量も激減していった。
風向きが変わったのは、昭和60年代(1980年代後半)から平成初期にかけてだ。消費者の嗜好が多様化し、「本物志向」が広がるなかで、雑穀の栄養的な価値が再発見された。さらに2000年代に入ると、健康志向の高まりを受けて「雑穀ブーム」が本格化する。2004年にはやずやが「発芽十六雑穀」を発売し、テレビCMなどを通じて雑穀米の認知度が一気に広がった。スーパーの棚に雑穀コーナーが設けられるようになったのも、このころからだ。
十八穀米という形態が定着した正確な年を特定するのは難しいが、十六穀や二十穀など穀物数の異なるブレンド製品が次々と登場するなかで、「十八穀」もそのバリエーションのひとつとして市場に浸透していった。はくばくの「まいにちおいしい雑穀ごはん」は2009年に発売され、その後2023年にリニューアルされている。おめん京都の「A・ZEN 日本の十八穀米」は日本雑穀アワードで2014年から2016年にかけて受賞し殿堂入りしている。
なお、十八穀米に含まれるアマランサスやキヌアには、日本とは別の歴史がある。アマランサスの栽培の起源は紀元前5000年から3000年ごろの南米アンデス地域にさかのぼり、古代アステカ文明ではトウモロコシと並ぶ主要作物だった。キヌアも同じくアンデス山脈周辺が原産で、「穀物の母」と呼ばれ、インカ文明の時代から主食として大切にされてきた。これらのスーパーフードが日本の雑穀ブレンドに取り入れられるようになったのは比較的最近のことで、2010年代以降のスーパーフードブームの影響が大きい。
現在の日本では、健康志向やフードダイバーシティへの関心が高まり続けており、雑穀市場は成長基調にある。精麦・雑穀・玄米などの健康米市場は、ここ10年で約1.8倍に拡大したとの調査もある。十八穀米はそうした流れのなかで、手軽に多品目の穀物を摂取できる選択肢として、主食にもお菓子の素材にも活躍の場を広げている。
