材料の名前

日本語での正式な呼び名は「グリーンスプリットピー」あるいは「グリーンスプリットピース」。製菓・製パン材料の専門店では「グリーンスプリット」と省略されて棚に並ぶことも多い。原材料表示上の名称は「乾燥グリーンピース」または「えんどう豆」と記載される。

英語では “Green Split Peas” と表記し、split は「割る」を意味する。つまり「緑色の、半分に割ったえんどう豆」がそのまま名前になっている。フランス語では “Pois cassés verts”、ヒンディー語圏では “Hara Matar Dal” と呼ばれ、いずれも「割った緑の豆」というニュアンスを含む。学名は Pisum sativum で、マメ科エンドウ属に分類される植物の完熟種子が原料となっている。

日本の和菓子業界では「青えんどう」という呼び名のほうがなじみ深い。青えんどうを皮付きのまま乾燥させたものと、グリーンスプリットピーのように皮をむいて半割りにしたものとでは、用途も食感もかなり異なるため、購入時には区別して選ぶ必要がある。

特徴

グリーンスプリットピーは、完熟した青えんどう豆を収穫・乾燥させたのち、外皮を取り除き、子葉を二つに割った加工品である。見た目は鮮やかな黄緑色で、直径7~8mm程度の半球形をしている。

最大の特徴は、調理の手軽さにある。通常の乾燥豆は一晩(8~12時間)の浸水が必要だが、グリーンスプリットピーはあらかじめ皮が除去されて半分に割られているため、浸水なしでそのまま鍋に入れて煮ることができる。沸騰した湯に入れれば15~30分ほどで柔らかくなり、さらに煮込めば自然に崩れてペースト状やピューレ状にまとまる。この「煮崩れやすさ」が、あん(餡)やスープの素材として重宝される理由である。

栄養面も見逃せない。富澤商店が販売するカナダ産グリーンスプリットピースの栄養成分表示(100gあたり)によれば、エネルギーは352kcal、たんぱく質21.7g、脂質2.3g、炭水化物60.4gとなっている。炭水化物のうちかなりの割合を食物繊維が占めており、たんぱく質は同量の白米(6.1g)の約3.5倍にのぼる。脂質が少なく、高たんぱく・高食物繊維という組成は、近年注目されるプラントベース(植物性)食品の文脈でも評価が高い。

色味に関しては、加熱するとやや落ち着いたモスグリーンに変化する。長時間煮込むと黄色みが増して茶色がかることもあるため、和菓子の餡に使う場合は煮すぎないよう火加減を調整したい。

用途

グリーンスプリットピーの用途は、和洋を問わず幅広い。お菓子づくりの観点から、主な使い方を整理してみよう。

まず和菓子では、うぐいす餡(鶯餡)の原料として欠かせない存在である。うぐいす餡は、青えんどう豆を煮てつぶし、砂糖で甘みをつけた緑色の漉し餡のこと。うぐいす餅やうぐいすあんパンの中身として古くから親しまれてきた。通常は丸粒の青えんどうから炊くが、グリーンスプリットピーを使えば浸水時間を省略でき、煮上がりも早い。家庭で少量のうぐいす餡を仕込みたいときには、この手軽さが重宝する。

甘納豆の材料としても活用される。皮がない分、砂糖の含浸が早く、仕上がりも口当たりが滑らかになるという特徴がある。また、落雁や干菓子の生地に練り込むことで、ほのかな緑色と豆の風味を加える試みもある。

洋菓子の領域では、ヨーロッパやアジア各地でスプリットピーを甘く煮たデザートが存在する。中華圏では、スプリットピーを砂糖水で柔らかく煮て冷やした甘味(豆沙糖水)が夏場の定番として知られる。イギリスでは、ローストしたスプリットピーにチョコレートをコーティングしたスナック菓子も登場しており、植物性たんぱく質を手軽にとれるヘルシースナックとして人気を集めている。

お菓子以外の用途にも触れておくと、スープが世界的に最もポピュラーな食べ方である。北欧やイギリスでは「ピーアンドハムスープ(Pea & Ham Soup)」が伝統的な家庭料理の一つとして親しまれ、インド料理では「ダル(Dal)」と呼ばれる豆の煮込みにも使われる。サラダやカレーの具材、炊き込みごはんの彩りなど、日常の食卓でも汎用性が高い食材である。

さらに近年は、えんどう豆を原料とした「ピープロテイン」が健康食品やスポーツ栄養の分野で注目を浴びている。乳製品や大豆にアレルギーをもつ人でも摂取しやすい植物性たんぱく源として需要が伸びており、プロテインバーやプロテインクッキーの原料としても広がりを見せている。

主な原産国

えんどう豆の乾燥豆(ドライピー)の生産量は、ロシアとカナダが世界の1位・2位を争う規模にある。日本豆類協会のデータによると、2024年の乾燥えんどう豆生産量はロシアが約325万トン、カナダが約300万トンで、この2か国だけで世界生産の大きな割合を占めている。

日本国内に流通するグリーンスプリットピーは、カナダ産とアメリカ産が大半を占める。富澤商店の製品はカナダ産、すずや穀物の製品はアメリカ産と、販売元によって原産国が異なるため、パッケージの表示を確認するとよい。イギリス産やフランス産もヨーロッパの市場には出回っているが、日本への輸入量はそれほど多くない。

カナダにおけるえんどう豆の主要産地は、サスカチュワン州やアルバータ州を中心としたプレーリー地帯(大平原地帯)である。冷涼で乾燥した気候と広大な農地が、えんどう豆の栽培に適している。カナダは長年にわたり世界最大のえんどう豆輸出国の地位を保ってきたが、近年はロシアが生産量を急速に伸ばしており、輸出先である中国市場ではロシア産がカナダ産を上回る場面も出てきている。

日本国内での青えんどう栽培は、北海道の上川地方を中心にごくわずかに行われている程度で、生産規模は数百ヘクタールにとどまる。国産品は流通量が限られるため、製菓用途で使用されるグリーンスプリットピーのほぼすべてが輸入品である。

選び方とポイント

グリーンスプリットピーを購入するとき、まず確認したいのは色合いである。鮮やかな黄緑色をしているものが新鮮で、くすんだ茶色や黒ずみが目立つものは古くなっている可能性がある。保管中に退色が進むと、炊き上がりの色も暗くなるため、とくにうぐいす餡のような見た目を重視する用途では色の鮮度が仕上がりを左右する。

粒の大きさや割れ方が均一であることも品質の目安になる。粉状に砕けた破片が多い場合、輸送中のダメージや古さを疑ったほうがよいだろう。口コミなどでも「すずやの豆は割れ・欠けがほとんどなく、粒が揃っている」といった評価が見られるように、粒の均一さは品質の指標となる。

購入先としては、製菓材料専門店が品質の安定感で優れている。富澤商店(TOMIZ)は200gの小袋から取り扱っており、少量だけ試したい場合に使いやすい。まとめ買いをする場合は、豆・雑穀の専門店であるすずや穀物や、上野アメ横の大津屋商店が1kg・5kg・10kgといった大容量パックを販売している。

保存は、直射日光と高温多湿を避け、冷暗所で行うのが基本となる。未開封であれば製造日から約1年間の賞味期限が設定されていることが多いが、開封後はチャック付き袋や密閉容器に移して早めに使い切りたい。乾燥豆は虫がつきやすい食品でもあるため、夏場は冷蔵庫での保管も検討するとよい。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内で手に入りやすいグリーンスプリットピーの製品を、取り扱いメーカー別に紹介する。

富澤商店(TOMIZ)は、製菓・製パン材料の総合専門店として知られる。カナダ産のグリーンスプリットピースを200gパックで販売しており、全国の実店舗のほか、自社オンラインショップやAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど各種ECサイトでも購入できる。少量から気軽に試せる点が家庭での製菓利用に向いている。

すずや穀物(株式会社すずや穀物)は、豆と雑穀に特化した専門メーカーで、アメリカ産のグリーンスプリットピースを1kgや5kgの業務用サイズで扱っている。自社通販サイトのほかAmazonでも購入が可能で、口コミでは粒の品質の高さが評価されている。

大津屋商店は、東京・上野アメ横に店舗を構えるスパイス・豆・雑穀の老舗。インド料理やスパイスカレー愛好者に支持される店で、グリーンスプリットを1kgや10kgといった単位で取り扱っている。業務用として使いたい場合や、コストを抑えてまとめ買いしたい場合に選択肢となる。

うぐいす餡の完成品としては、大阪の製餡メーカー茜丸が「うぐいすあん」を業務用1kgパックなどで製造販売している。茜丸は創業80年余りの歴史をもつあんこ専門メーカーで、青えんどう豆をたっぷり使ったうぐいすあんは、製パン・製菓業者にも広く採用されている。自分でグリーンスプリットピーから餡を炊く時間がない場合、こうした既製品を活用するのも実用的な選択肢である。

海外に目を向けると、イギリスのBRAVE Foods(ブレイブ・フーズ)が、イギリス産グリーンスプリットピーをローストしたスナック菓子「BRAVE Roasted Peas」を展開している。シーソルト味やパプリカ&チリ味などフレーバーのバリエーションがあり、高たんぱく・高食物繊維のヘルシースナックとしてSainsbury’sやHolland & Barrettなどの小売チェーンで販売されている。日本でも輸入食品を扱う店舗やオンラインショップで入手できることがある。

歴史・由来

グリーンスプリットピーの原料であるえんどう豆は、人類と最も長い付き合いをもつ豆のひとつである。起源はメソポタミア地方(現在のイラク周辺)と考えられており、紀元前7000年頃にはすでにオオムギやコムギとともに栽培されていたことが、考古学的な調査で明らかになっている。古代エジプトのツタンカーメン王の墓からもえんどう豆の種子が副葬品として発見されたという話は有名で、食用としてだけでなく、儀式的な意味合いでも重んじられていた可能性がある。

古代ギリシャやローマでも、えんどう豆は庶民の食卓を支える重要な食材だった。乾燥させた豆は保存性に優れ、長期航海や軍隊の兵糧としても活躍した。中世ヨーロッパでは、乾燥えんどう豆のスープやポリッジ(粥)が修道院や農民の食事の中心を担っていた。「スプリット」、つまり豆を半分に割って調理しやすくする加工法がいつ頃から始まったかについては、正確な記録は残っていないものの、乾燥豆を石臼で割って煮炊きする技術自体は相当古くから存在したと推測されている。

日本へのえんどう豆の伝来は、遣唐使によって9~10世紀頃にもたらされたとする説が有力である。平安時代の辞書『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には「乃良末女(のらまめ)」という名で記載されており、当時は「のらまめ」あるいは「のまめ」と呼ばれていた。室町時代には「園豆」と書いて「えんとう」と読ませ、安土・桃山時代に入って「豌豆(えんどう)」という表記と呼び方に落ち着いたとされる。「豌豆」の「豌」は、古代に豆類を中国へ輸出していた中央アジアの「大宛国(だいえんこく)」(現在のウズベキスタン・フェルガナ州付近)に由来するという説がある。

日本で本格的にえんどう豆の栽培が広がったのは明治時代以降で、欧米からさまざまな品種が導入された。昭和初期には北海道を中心に3万ヘクタールに及ぶ栽培面積を記録したが、その後は減少の一途をたどり、現在は数百ヘクタール規模にとどまっている。日本豆類協会の情報によれば、現在の乾燥豆の大半はカナダ、イギリス、中国などからの輸入品が占めている。

青えんどう豆から作るうぐいす餡が和菓子の世界で定着した時期は明確ではないが、春を象徴する鶯(うぐいす)の名を冠した緑色の餡は、少なくとも江戸時代には和菓子の素材として認知されていたと考えられている。グリーンスプリットピーという加工形態が日本の家庭や小規模な菓子工房に浸透したのは、輸入乾燥豆が安定的に流通するようになった20世紀後半以降のことだろう。浸水不要で煮崩れしやすいという利便性が、忙しい現代の台所事情にもよく合っており、オンラインレシピサイトなどでは「クイックうぐいす餡」の材料として紹介されることも増えている。

21世紀に入ると、植物性たんぱく質への関心の高まりがえんどう豆の新たな需要を生んだ。えんどう豆由来の「ピープロテイン」は、大豆アレルギーや乳アレルギーをもつ人にも適した代替プロテインとして世界的に市場が拡大している。こうしたトレンドは、グリーンスプリットピーを含むえんどう豆製品全体の認知度を押し上げる追い風になっている。

古代メソポタミアの畑から始まり、中世ヨーロッパの修道院を経て、日本の和菓子屋の釜にたどり着いたグリーンスプリットピー。目立たない脇役ではあるけれど、その歴史の奥深さと使い勝手のよさは、お菓子づくりの世界で長く愛され続ける十分な理由をもっている。

免責事項

商品紹介等については、公式サイトおよび公開情報を基に作成しております。
記載内容は掲載時時点での参考値です。商品仕様は予告なく変更される場合があります。
購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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