材料の名前

読みは「すだきとう」。大東製糖株式会社が製造・販売する含蜜糖の独自ブランドで、名前の由来は、さとうきび「素(材)」のもつミネラルと風味を大切に「焚」きあげたお砂「糖」という意味から来ている。英語圏では「Sudaki Tou Sugar」あるいは「Napines Sudaki Tou」と表記されることがあるものの、海外で広く通用する外国語名はなく、あくまで日本発の固有ブランド名である。砂糖全般を指す英語は「Sugar」、フランス語では「Le sucre」、ドイツ語では「Zucker」だが、素焚糖のような含蜜糖を英語で説明する場合は「whole cane sugar」や「unrefined cane sugar」といった表現が近いニュアンスにあたる。

特徴

素焚糖は、鹿児島県の奄美諸島で育ったさとうきびだけを原料とする含蜜糖(がんみつとう)である。含蜜糖とは、さとうきびの搾り汁に含まれる蜜分──カリウムやカルシウムなどのミネラル──を分離せず、残したまま仕上げる砂糖のこと。一般に流通している上白糖やグラニュー糖、三温糖は「分蜜糖(精製糖)」に分類され、蜜分を遠心分離機でほぼ完全に取り除いて精製される。一方、含蜜糖の代表格である黒糖は、蜜分を総量の10~15%ほどそのまま残すため、力強いコクと独特の香りが生まれる反面、クセが強く、料理やお菓子によっては使いにくい場面がある。

素焚糖は、この精製糖と黒糖のちょうど中間に位置する。蜜分の含有量はおよそ3%前後で、黒糖の風味のよさを生かしつつ、余計なクセを抑えたやさしい甘さに仕上がっている。粒子はサラサラの粉末状で、色合いはやわらかな茶褐色。口に含むと、ふわっと広がる香ばしい蜜の風味と、まろやかな甘みを感じる。「そのまま食べてもおいしいお砂糖」をコンセプトに開発された商品だけあって、精製糖のような鋭い甘さとは一線を画す味わいが持ち味だ。

栄養面では、三温糖と比較した場合、ミネラル含有量に大きな差が見られる。大東製糖の公表する分析値によると、100gあたりのカリウムは素焚糖が約247mgに対し三温糖は13mg、カルシウムは素焚糖が約44mgに対し三温糖は6mg。マグネシウムやナトリウムについても素焚糖のほうが上回る。エネルギー量は100gあたり約383~394kcalで、一般的な砂糖と大きくは変わらない。砂糖としての甘みはしっかりあるが、ミネラルによるほのかな苦みとコクが下支えすることで、素材の味を引き立てる奥行きのある甘さが生まれる。

加えて、動物由来の原料や骨炭(精製工程で使われることがある動物の骨を加工した炭)を使用していないため、ヴィーガン認証を取得した製品も展開されている。

用途

素焚糖は、お菓子作りから日常の料理まで幅広く活用できる砂糖である。

お菓子づくりでは、クッキーやマドレーヌ、パウンドケーキといった焼き菓子との相性がよい。素焚糖を使うと、上白糖やグラニュー糖で焼いたときにはない、ほのかな蜜の香りと深みのある甘さが加わる。米粉を使ったクッキーや、バター不使用の焼き菓子など、素材の個性を生かしたいレシピで使うと、その持ち味がいっそう際立つ。チョコレート専門店のなかには、カカオ豆と素焚糖だけでビーントゥバーチョコレートを仕上げるところもあり、精製糖では得られない風味の層を狙って採用される場面が増えている。

料理に使う場合、煮物や照り焼きに加えると、素焚糖のコクが味わいを深くしてくれる。金時豆の甘煮、ぶり大根、肉じゃがなど、甘みをしっかり含ませたい和食のおかずにもよく合う。紅茶やコーヒーに入れても、精製糖のように甘さだけが浮くことがなく、飲み物全体にまろやかさが加わる。大手コンビニチェーンが展開するカフェメニューのほうじ茶ラテに素焚糖が使われた例もあり、業務用途でも存在感を広げてきた。

サラサラした粉末状のため、上白糖と同じ分量・同じ感覚で置き換えられる点も、使い勝手のよさにつながっている。溶けやすく、ダマになりにくいので、お菓子の生地に混ぜ込むときもストレスが少ない。

主な原産国と原料の産地

素焚糖の原料は、100%国産のさとうきび由来の原料糖である。具体的な産地は鹿児島県の奄美諸島。奄美大島や徳之島など、鹿児島市から南へおよそ470kmに位置する島々で栽培されたさとうきびが使われている。亜熱帯の温暖な気候と豊かな降水量に恵まれた奄美諸島は、古くからさとうきびの栽培が盛んな地域だ。

製造は千葉県千葉市美浜区にある大東製糖の本社工場で行われる。奄美諸島の製糖工場でさとうきびから原料糖が作られ、その原料糖が千葉の工場に運ばれて、独自の焚き上げ工程を経て素焚糖に仕上がる。つまり、原料の栽培は奄美諸島、最終的な製品への加工は千葉県という二段階の工程を踏んでいる。

なお、大東製糖は「ブラウンシュガー」という別製品では豪州産の原料糖を使っているが、素焚糖に関しては奄美諸島産のさとうきび原料糖に限定しており、ここに国産原料へのこだわりが表れている。

選び方とポイント

素焚糖を選ぶ際に押さえておきたいポイントを整理する。

まず容量の違いを確認しておきたい。家庭用としては200gのスタンドパックと500g(チャック付き袋)、600gの平袋が販売されている。はじめて使う場合は200gの小袋で味を確かめるのがよいだろう。日常的に上白糖の代わりとして使うなら、500gや600gが経済的で手に取りやすい。業務用には20kgのクラフト袋が用意されている。

次に、パッケージの表示を確認すること。素焚糖の原材料名は「原料糖(国内製造)」で、奄美諸島産さとうきび100%であることが記載されている。砂糖は法律上、長期保存しても品質に問題がないとされる食品のため、賞味期限の表示義務がない。素焚糖にも賞味期限は記載されていない。保存は直射日光を避けた常温が基本で、開封後はにおいの強いものの近くに置かないよう注意する。

また、似た外見を持つ「きび砂糖」との違いを理解しておくと選びやすい。きび砂糖は精製の途中段階で仕上げる砂糖で、分蜜糖に近い工程を経るため、含蜜糖である素焚糖とは製法が異なる。素焚糖のほうが蜜分の残り具合が多く、ミネラル含有量も高い傾向にある。さらに、てんさい糖はそもそも原料が甜菜(砂糖大根)であり、さとうきび由来の素焚糖とは風味の方向性が違う。甘さの質や香りの強さを比較して、自分の使い道に合った砂糖を選ぶのがよい。

メジャーな製品とメーカー名

素焚糖を製造しているのは大東製糖株式会社(本社:千葉県千葉市美浜区新港44番)。1952年(昭和27年)7月26日に東京都江東区大島で設立された含蜜糖メーカーで、2006年に現在の千葉市へ本社を移転した。精製糖と含蜜糖の両方を生産する数少ない砂糖メーカーであり、含蜜糖の国内生産量ではトップクラスの実績を持つ。

素焚糖の主な製品ラインナップは以下のとおり。

家庭用の「素焚糖」は、200g・500g・600gのパッケージで全国のスーパーや製菓材料店、ネット通販などで販売されている。ブランド名は「Napines(ナピネス)」で、パッケージにもこの名称が記されている。2021年の年間販売量は150万袋に達したと大東製糖が公表しており、発売以来、着実にファンを増やしてきた商品だ。

このほか、大東製糖は素焚糖の技術をベースにした関連製品も展開している。同じ奄美諸島産さとうきびを原料とする「素焚和糖(すだきわとう)」は1kgパックで販売されている。また、種子島産のさとうきびを原料とした「種扇糖(たねおうぎとう)」や、北海道産甜菜を原料とする「てんさいのお砂糖」など、素材の産地にこだわった含蜜糖のバリエーションも揃っている。

なお、2022年11月に大東製糖は塩水港精糖株式会社の筆頭株主となり、2023年6月には両社の業務提携が発表された。砂糖業界の再編が進むなかで、大東製糖はグループとしての商品力と販売網をさらに強化する方向に動いている。

歴史・由来

素焚糖が発売されたのは2002年。大東製糖が長年培ってきた含蜜糖の製造技術を生かし、「そのまま食べてもおいしい砂糖」という着想から開発された製品だ。上白糖やグラニュー糖といった精製糖が砂糖市場の95%以上を占めるなか、含蜜糖の新しい可能性を切り拓く商品として世に送り出された。

発売当初こそ知名度は限られていたが、2008年にモンドセレクションへ出品したところ、砂糖商品として世界で初めて金賞を受賞。この快挙は業界内外で注目を集め、素焚糖の認知度を一気に押し上げた。翌2009年、2010年にも連続して金賞を獲得し、砂糖としては世界初となる3年連続金賞受賞を達成。これによりインターナショナル・ハイクオリティ・トロフィーが授与された。その後も金賞受賞は続き、2022年時点で15年連続の金賞受賞という実績を積み重ねている。

素焚糖が生まれた背景には、大東製糖の創業以来の歩みがある。1952年に木村恵一氏が東京都江東区で含蜜糖工場として会社を立ち上げたのが始まりだ。以来70年以上にわたり、含蜜糖の製造にこだわり続けてきた。精製糖の大量生産が主流の砂糖業界にあって、蜜分を残した砂糖づくりに特化してきた技術の蓄積が、素焚糖という商品に結実したといえる。

名前の由来は前述のとおり、「素(材)」「焚(く)」「糖」の三文字を組み合わせた造語だ。さとうきびという素材がもつミネラルや風味をそのまま閉じ込めるように、じっくりと焚き上げるという製法の特長を端的に表現している。大東製糖のFacebook公式ページでも、「さとうきび原料のもつミネラルと風味・美味しさを≪素≫のままじっくり丁寧に≪焚≫きあげたお砂≪糖≫」と説明されている。

2002年の発売から20年以上が経過し、素焚糖は量販店や自然食品店、製菓材料の専門通販サイト、ふるさと納税の返礼品に至るまで、多様な販路に広がっている。年間販売量は発売以来、前年比130%というペースで伸び続けてきたと大東製糖は説明しており、健康志向や素材重視の流れと相まって、家庭の砂糖の選択肢として定着しつつある。

免責事項

商品紹介等については、公式サイトおよび公開情報を基に作成しております。
記載内容は掲載時時点での参考値です。商品仕様は予告なく変更される場合があります。
購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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