材料の名前(日本語・外国語)

日本語では「上白糖(じょうはくとう)」と呼ばれ、一般家庭で「砂糖」と言えばまずこれを指す。スーパーの棚に並ぶ白い砂糖の代表格であり、「白砂糖」という表記で販売されていることもある。

英語圏では “white soft sugar” という名称が日本標準商品分類における公式な訳語として使われている。辞書によっては “caster sugar”(イギリス英語)や “superfine sugar”(アメリカ英語)と訳されるケースもあるが、これらは厳密には上白糖と同一ではない。海外には上白糖と完全に一致する砂糖が存在しないため、”Japanese white soft sugar” と補足的に説明されることもある。

中国語では「白砂糖(バイシャータン)」が近い存在だが、製法が異なるため同じものとは言い切れない。上白糖は日本独自の砂糖であるという認識が正確だろう。

特徴

上白糖の最大の特徴は、そのしっとりとした質感とコクのある甘みにある。

製造工程を見ると、まずサトウキビやてん菜(ビート)から抽出した糖液を精製し、ショ糖の結晶を取り出す。ここまではグラニュー糖と同じ工程である。上白糖の場合は、取り出した結晶に「ビスコ」と呼ばれる転化糖液を振りかける。転化糖とは、ショ糖をブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解したものの混合液であり、この糖液で結晶の表面がコーティングされることで、独特のしっとり感が生まれる。

成分的には、ショ糖が約97.8%を占め、転化糖が約1.3%、水分が約0.7%含まれている。100gあたりのエネルギーは384〜391kcal程度で、たんぱく質や脂質はほぼ含まれていない。ミネラル類も精製の過程でほとんど除去されるため、微量のカルシウムやカリウムが確認できる程度にとどまる。

グラニュー糖との大きな違いは甘みの質にある。グラニュー糖はショ糖分がほぼ100%に近い純度であり、すっきりとしたクリアな甘さが持ち味だ。一方、上白糖は転化糖由来のまろやかさが加わり、口に含んだときに広がるような複雑な甘みを感じる。また、結晶が細かくしっとりしているため、生地や液体への溶けやすさにも優れている。

もうひとつ見逃せないのが、加熱時の焼き色の付きやすさだ。上白糖に含まれるブドウ糖や果糖は、アミノ酸と反応してメイラード反応を起こしやすい。そのため、グラニュー糖を使った場合よりも、焼き菓子やパンなどの表面に濃い焼き色が付く傾向がある。これが風味の面でプラスに働くこともあれば、色味を淡く仕上げたい場合には不向きになることもある。

さらに、保水性が高い点も特徴のひとつだ。お菓子の生地に上白糖を使うと、焼き上がりがしっとりしやすく、時間が経っても水分が抜けにくい。和菓子やカステラなど、しっとり感が求められる日本のお菓子には、この性質がうまく活かされている。

用途

お菓子作りにおいて、上白糖は非常に幅広い場面で活用されている。

和菓子の世界では、あんこの炊き上げから求肥、練り切りに至るまで、上白糖が基本の甘味料として使われる場面が多い。前述の保水性がもたらすしっとり感は、和菓子のなめらかな食感と相性がよい。

洋菓子でも、スポンジケーキやバターケーキの生地に用いれば、ふんわりとした食感としっとり感を両立できる。ただし、焼き色が付きやすい性質があるため、純白に近い仕上がりを求めるメレンゲやアイシングにはグラニュー糖のほうが適している。フィナンシェやマドレーヌのように適度な焼き色が求められる焼き菓子には、上白糖がよく合う。

お菓子作り以外にも、上白糖は日常の料理に欠かせない。煮物の甘味付け、照り焼きのたれ、卵焼き、漬物など、日本の家庭料理の多くで上白糖が使われている。コクのある甘みが醤油や味噌との相性に優れ、料理の味に奥行きを加えてくれる。

飲み物に入れる場合は、結晶が細かいためコーヒーや紅茶にもさっと溶けるが、飲み物本来の香りを楽しみたいときは、風味にクセのないグラニュー糖を選ぶ人も多い。用途に合わせて使い分けるのがおすすめだ。

主な原産国

上白糖そのものは日本国内の精製糖工場で製造される日本固有の糖種である。ただし、原料となる粗糖(原料糖)は海外から輸入されるものが多い。

日本で消費される砂糖のうち、国産原料由来は全体の約4割にとどまり、残りの約6割は海外から粗糖として輸入されている。主な輸入先はタイとオーストラリアで、この2か国で輸入量の大部分を占める。近年はオーストラリア産の比率が上昇傾向にある。このほか、南アフリカやグアテマラなどからも一部輸入されている。

国内の砂糖原料は、北海道で栽培されるてん菜(ビート)と、鹿児島県の南西諸島および沖縄県で栽培されるサトウキビが二本柱だ。日本国内の砂糖生産量のうち、てん菜糖が約8割を占め、残りの約2割がサトウキビ由来となっている。

世界規模で見ると、砂糖の原料となるサトウキビの生産量はブラジルとインドが突出しており、世界の甘蔗糖(サトウキビ由来の砂糖)の二大生産国となっている。てん菜糖については、EU諸国(フランス、ドイツなど)やロシアが主要な生産地域だ。

ただし繰り返しになるが、転化糖液をかけて仕上げる「上白糖」という糖種は日本独自のものであり、海外で一般的に流通するグラニュー糖やソフトシュガーとは区別される存在である。

選び方とポイント

上白糖は精製度が高く、メーカーによる品質差がそれほど大きくない。とはいえ、いくつかのポイントを押さえておくと、より満足のいく買い物ができる。

まず、原料の違いに注目してみるとよい。製品パッケージには「原料糖」と表記されていることが多く、その原料糖がサトウキビ由来なのか、てん菜(ビート)由来なのかで選ぶ人もいる。たとえば、日本甜菜製糖の「スズラン印 上白糖」は、北海道産てん菜を原料としたビート上白糖として知られ、国産原料にこだわりたい人に選ばれている。

次に、内容量と使い切りの目安を考えることも大切だ。上白糖は1kgパックが最も一般的だが、500gや300gの小容量タイプもある。開封後に長期間放置すると、湿気を吸って固まったり、逆に乾燥してカチカチになったりすることがある。家族の人数や使用頻度に合ったサイズを選ぶのが賢明だ。

保存については、砂糖の袋には通気用の微細な穴が開けられているため、未開封であっても密閉容器に移し替えて保存するのが望ましい。直射日光を避け、温度や湿度の変化が少ない場所で常温保存するのが基本である。においが移りやすい食材の近くに置かないことも忘れずに。なお、砂糖は食品表示法上、賞味期限の表示が省略できる食品に該当しており、適切に保存すれば長期間品質が保たれる。

固まってしまった場合は、霧吹きで少量の水分を含ませ、密閉容器に入れて数時間置くとほぐれやすくなる。逆にサラサラに戻したい場合は、食パンの一片を容器に入れておくと、パンの水分が砂糖に移って適度な湿度を取り戻す方法がある。

メジャーな製品とメーカー名

日本の製糖業界にはいくつかの大手メーカーがあり、それぞれブランドマークを冠した上白糖を販売している。

DM三井製糖が手がける「スプーン印 上白糖」は、赤いスプーンのマークでおなじみの定番商品だ。スーパーの砂糖売場で目にする機会がもっとも多い製品のひとつであり、売上ランキングでも常に上位に入る。同じくDM三井製糖グループの大日本明治製糖からは「ばら印 上白糖」も展開されている。

ウェルネオシュガー(旧・日新製糖と伊藤忠製糖が経営統合して誕生した会社)が展開する「カップ印 白砂糖」もロングセラーの人気商品だ。パッケージに「白砂糖」と表記されているが、中身は上白糖である。「クルルマーク 上白糖」は旧・伊藤忠製糖のブランドで、こちらも引き続き販売されている。

パールエースの「パールエース印 上白糖」は、業務用・家庭用ともに流通量が多く、しっとりとした品質に定評がある。

日本甜菜製糖の「スズラン印 上白糖」は、北海道産てん菜を原料とするビート上白糖として独自の立ち位置を確立している。国産原料へのこだわりや、てん菜糖ならではのやさしい甘みを好む消費者に支持されている。

このほか、フジ日本精糖の「さくらんぼ印 上白糖」や、北海道糖業の製品なども流通している。いずれも品質は安定しているため、購入時は価格や原料の好み、パッケージの使いやすさなどで選ぶとよい。

歴史・由来

上白糖の歴史を紐解くには、まず砂糖そのものが日本に伝わった経緯から触れなければならない。

日本に砂糖が伝来したのは、奈良時代(8世紀)のことだと考えられている。中国・唐の高僧である鑑真が渡来した際に砂糖を持ち込んだとする説や、遣唐使が中国から持ち帰ったとする説があり、正確な伝来時期は定かでない。ただ、正倉院に残る「種々薬帳」(756年)に「蔗糖」の文字が記録されていることから、奈良時代には砂糖が日本に存在していたことは間違いない。もっとも、当時の砂糖はきわめて貴重な品であり、食用ではなく薬として扱われていた。

戦国時代になると、ポルトガルやスペインの南蛮貿易を通じてカステラやコンペイトウなどの砂糖菓子が伝わり、砂糖は嗜好品としての側面を強めていく。しかし、依然として高価な輸入品であることに変わりはなかった。

江戸時代に入ると、国内での砂糖生産が本格化する。1623年に琉球の奄美大島で砂糖の生産が始まったとされ、やがて薩摩藩の支配のもとで産地が拡大した。八代将軍・徳川吉宗は砂糖の国産化を推し進め、1715年にはサトウキビの栽培を奨励している。その後、四国や九州の温暖な地域でもサトウキビ栽培が広がり、和三盆のような高品質の国産砂糖が作られるようになった。

「上白糖」という名前の由来は、まさにこの江戸時代にさかのぼる。当時、砂糖は品質によって等級分けされており、「中・白砂糖」を基準として、それより色が白く不純物が少ない上質なものを「上・白砂糖」、品質が劣るものを「次白」や「下白」と呼んで取引していた。農畜産業振興機構の資料によれば、この「上・白砂糖」が現在の「上白糖」という名称のルーツである。

現在の上白糖が確立されたのは、明治時代後期から大正時代にかけてのことだ。近代的な精製技術が日本に導入され、砂糖の結晶にビスコ(転化糖液)を振りかける製法が生まれた。この製法が生まれた背景には、和三盆のような繊細でしっとりした砂糖の風味を、近代的な精製糖で再現しようとした試みがあったという説や、砂糖の固結を防ぐために糖液を振りかけたところ、結果的にそのしっとりした食感が日本人の好みに合って広まったという説がある。

いずれにしても、味噌や醤油といった発酵調味料を駆使する日本料理の味付けに、上白糖のコクのある甘みが調和したことが普及の決め手だったのだろう。世界的にはグラニュー糖が主流であるなかで、日本の家庭における上白糖の使用量はグラニュー糖の6倍以上にのぼるという数字が、そのことを物語っている。

戦後は砂糖の配給制が1952年(昭和27年)まで続いたが、その後は経済成長とともに消費量が増加し、1973年(昭和48年)には国民一人あたりの年間消費量が約29kgのピークに達した。その後は健康志向の高まりや代替甘味料の台頭により消費量は減少傾向をたどり、近年は約20kg前後で推移している。

それでもなお、上白糖は日本の家庭やお菓子作りの現場で、最も身近で頼りになる甘味料であり続けている。

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