材料の名前

日本語では「プードルデコール」とカタカナ表記されることが一般的で、「泣かない粉糖」「溶けない粉糖」「デコレーション用粉糖」「飾り用粉砂糖」といった別名でも広く知られている。

フランス語での正式な表記は「Poudre Décor」。「Poudre(プードル)」は「粉」、「Décor(デコール)」は「飾り・装飾」を意味し、直訳すれば「飾りの粉」となる。英語圏では「Non-melting sugar」「Snow sugar」「Donut sugar」「Decorating powder」などと呼ばれ、同じ概念の製品がさまざまな名称で流通している。

特徴

プードルデコールの最大の特徴は、水分や油分に触れても溶けにくい「耐水性・耐油性」にある。通常の粉糖(純粉糖やコーンスターチ入り粉糖)は、ケーキやフルーツの水分、ドーナツの油分を吸い取ってあっという間に消えてしまう。一方、プードルデコールは粉糖の粒子一つひとつが油脂でコーティングされているため、水分を弾いて白い外観を長時間にわたって保ってくれる。

原材料の構成を見ると、一般的な粉糖がグラニュー糖(ショ糖)を主原料とするのに対し、プードルデコールはデキストローズ(ぶどう糖)を主原料としている点が異なる。たとえば日本国内で広く流通しているマルグリット社のプードルデコール(1kg)の原材料表示は、「ぶどう糖、とうもろこしでん粉、加工油脂/微粒二酸化ケイ素、リン酸Ca、香料」となっている。ぶどう糖を主体にし、とうもろこし澱粉と加工油脂で粒子をコーティングすることで、吸湿を防ぐ仕組みだ。微粒二酸化ケイ素やリン酸カルシウムは固結防止剤として配合され、サラサラの質感を保つ役割を果たしている。

栄養成分は100gあたりでエネルギー約393〜395kcal、たんぱく質0.1g、脂質4.8〜5.0g、炭水化物87.4g、食塩相当量0.01g(推定値)。脂質がやや含まれるのは油脂コーティングによるもので、通常の純粉糖(脂質ほぼゼロ)との違いが数値に表れている。

味わいに関しては、ショ糖ベースの粉糖と比べると甘さがやや控えめに感じられる。これはデキストローズの甘味度がショ糖の約70〜75%程度であるためだ。そのぶん、素材の風味を邪魔しにくいという利点もある。

粒子の細かさもプードルデコールならではの持ち味で、一般的な溶けない粉糖(国産品など)と比べても粒子が微細で、ステンシル(型紙)を使った繊細な模様の再現性が高い。ガトーショコラの上にハロウィンやクリスマスのモチーフを描くといった演出にも対応できる。

注意したいのは、耐水性はあるものの「耐熱性」には限界がある点だ。焼き上がり直後の熱い生地に振りかけると油脂コーティングが溶けてしまい、泣かない効果が失われる。必ず生地が十分に冷めてから使用する必要がある。

用途

プードルデコールの用途は、仕上げのデコレーションに特化している。生地に練り込んで使う粉糖とは役割が根本的に異なるため、混同しないようにしたい。

代表的な使い方として、まず挙げられるのがガトーショコラやブラウニーの仕上げだ。しっとりとした生地の表面にプードルデコールを振りかけると、白と黒のコントラストが美しく映え、時間が経っても白さが持続する。ステンシルを載せて粉糖を振り、型紙を外せば模様がくっきりと現れる。

タルトの縁やフルーツタルトの仕上げにも適している。フルーツから出る水分やナパージュ(つや出しゼリー)の近くに粉糖を振っても、泣きにくいのがありがたい。

ドーナツの仕上げも定番の用途だ。揚げたドーナツは油分を多く含むため、通常の粉糖ではすぐに吸収されて消えてしまうが、プードルデコールなら白い粉糖が長く残る。

さらに、ヨーロッパのクリスマス菓子であるシュトーレンにもよく使われる。シュトーレンは数週間にわたって少しずつ切り分けて食べる菓子で、販売期間も長い。バターを塗った表面に通常の粉糖をまぶすと日が経つにつれて溶けてしまうが、プードルデコールなら3週間経過後も白さを維持できるという検証結果が日仏商事のテストで報告されている。

冷蔵・冷凍保存する菓子にも向いている。アントルメ(ホールケーキ)やムースケーキの仕上げに振りかけて冷蔵庫や冷凍庫に入れても、湿気で消えることがないため、作り置きが求められる製菓現場では重宝されている。

一方で、アイシングやグラスアロー(砂糖衣)のように水に溶かして使う用途には適さない。水と混ぜても溶けずにダマになるだけなので、こうした用途には純粉糖やオリゴ糖入り粉糖を選ぶ方がよい。同様に、クッキーやサブレの生地に練り込む材料としても不向きだ。プードルデコールはあくまで「振りかける・まぶす」ための粉糖と考えておこう。

主な原産国

日本市場で最も多く流通しているマルグリットブランドのプードルデコールは、ドイツ産である。商品パッケージには「原産国名:ドイツ(Allemagne)」と記載されている。マルグリットはフランスのアルザス地方で1919年に創業したブランドだが、現在はCSM Ingredients社の傘下で、ヨーロッパ各地に製造拠点を構えており、プードルデコールについてはドイツの工場で製造されている。

また、ベルギーのCouplet Sugars社が製造する「Decosnow」シリーズも、デキストローズベースの耐湿性デコレーションパウダーとして世界的に知られている。Couplet Sugars社は175年以上の歴史を持つ砂糖加工の老舗で、ベルギーを拠点に各種の砂糖製品を生産している。

ドイツのSüdzucker(ズートツッカー)社が製造する「Raftisnow」も、同ジャンルの飾り用粉糖として欧州を中心に流通しており、こちらはドイツ産だ。

このように、プードルデコール(泣かない粉糖)の主要な生産国はドイツ、フランス、ベルギーといった欧州諸国が中心となっている。日本国内でも富澤商店のオリジナルブランドから「溶けない粉砂糖」が販売されており、こちらは国内製造(原材料:グラニュー糖、澱粉、食用精製加工油脂)となっている。

選び方とポイント

プードルデコールを選ぶ際に確認したいポイントはいくつかある。

まず、主原料の違いに注目してほしい。輸入品の多くはデキストローズ(ぶどう糖)ベースで、甘さが控えめかつ粒子が非常に細かい。一方、国産の溶けない粉糖はグラニュー糖(ショ糖)ベースのものが多く、甘みがはっきりしていて粒子はやや粗めになる傾向がある。ガトーショコラのステンシルのように繊細な模様を描きたい場合は粒子の細かい輸入品を、ドーナツやシュトーレンにたっぷりまぶしたい場合は甘みのある国産品を、といった使い分けも一つの方法だ。

次に、容量と使用頻度のバランスを考えたい。家庭向けの少量パック(200g〜250g程度)から、業務用の1kg、5kgまでさまざまなサイズが販売されている。家庭で月に数回使う程度なら200〜250gが扱いやすい。開封後は吸湿を避けるためにしっかり密閉し、直射日光や高温多湿を避けた冷暗所で保管する。賞味期限は製品によって異なるが、未開封で製造日から約360日程度のものが多い。

また、原材料に含まれる油脂の種類も確認するとよい。Couplet Sugars社の製品ラインナップでは、パーム油コーティング、カカオバターコーティング、シアバターコーティングなど複数の選択肢がある。アレルギーや食のポリシーに合わせて選べるのは、業務用として心強い。日本で一般的に手に入るマルグリットブランドやcottaブランドの製品は加工油脂(植物油脂)を使用している。

香料については、バニリンが添加されている製品と、そうでない製品がある。cottaブランドの250g製品はバニリン入り、マルグリットの1kg製品は「香料」とだけ表記されている。風味への影響はごくわずかだが、バニラの香りを付けたくない場合は原材料表示を確認しておくとよい。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内で入手しやすいプードルデコール(泣かない粉糖)の代表的な製品を紹介する。

マルグリット「プードルデコール」は、日本市場で最も広く知られたブランドだ。フランス・アルザス地方で1919年に創業し、現在はCSM Ingredients社の傘下にある製菓材料ブランドで、日本では日仏商事株式会社(神戸市)が輸入・販売を担っている。1kgと5kgの規格があり、プロのパティスリーから個人の菓子教室まで幅広く使われている。原産国はドイツ。

cotta(コッタ)「プードルデコール 250g」は、大分県に本社を置く製菓材料の通販大手、株式会社cottaが取り扱う製品。製造地はドイツで、250gという家庭でも使いやすいサイズが特徴。原材料にバニリンが含まれており、ほのかなバニラの風味がある。

富澤商店(TOMIZ)「プードル・デコール 200g」は、老舗の製菓材料店である富澤商店が販売する製品。こちらもドイツ産で、200gと5kgの規格がある。同店ではこれとは別に国内製造の「溶けない粉砂糖」も販売しており、好みや用途に合わせて選べる。

Couplet Sugars社「Decosnow」は、ベルギーの砂糖加工メーカーが手がけるデコレーションパウダーのブランド。デキストローズベースで、ホワイトのほかにピンク、ココア、オレンジ、イエローといったカラーバリエーションが揃っている点がユニーク。着色には天然由来の色素を使用している。主に業務用の25kg規格で流通しており、海外の製菓業界で広く採用されている。

FunCakes「Snow Sugar」は、オランダの製菓材料ブランドが展開する溶けない粉糖。デキストローズ75%を主原料とし、150gの小袋で家庭用に販売されている。欧州を中心にAmazonなどのECサイトでも入手できる。

Südzucker社「Raftisnow」は、ドイツの大手砂糖メーカーであるズートツッカーグループが製造する飾り用粉糖ブランド。冷蔵・冷凍品への耐性が高く、業務用として欧州のパティスリーやベーカリーで使用されている。

歴史・由来

プードルデコールという製品の歴史を語るうえで欠かせないのが、マルグリットブランドの歩みだ。

1919年、創業者のグルッセンマイヤー氏とトニー氏がフランス・ストラスブールに「Produits Alimentaires Marguerite Tony et Grussenmeyer」を設立した。当初はアーモンドペーストや塩漬けフルーツ、マスタードなどの食品加工を手がけ、積極的なプロモーション活動とともに知名度を高めていった。設立からわずか1年足らずでシルティカイム工場を建設し、1954年にはビジュハイム工場も稼働させるなど、着実に製造基盤を拡大した。その後、社名は「Produits Marguerite S.A.」を経て、現在親しまれている「Marguerite(マルグリット)」へとブランド名が変遷。やがてヨーロッパ各地に製造拠点を持つCSM Ingredients社の傘下に入り、ナパージュ、フォンダン、プードルデコールなどの製菓副材料を世界中に供給する体制が整えられた。2019年にはブランド創立100周年を迎えている。

プードルデコールそのものがいつ開発されたかについて、正確な年代の公式記録は確認できない。ただし、粉糖の表面を油脂でコーティングして耐水性を持たせるという技術は、20世紀後半のヨーロッパにおける製菓材料の工業化の流れの中で生まれたと考えられている。ケーキやペストリーのショーケース販売が一般化するにつれ、「見栄えを長時間保つ」ことへの需要が高まり、泣かない粉糖が開発される土壌が形成された。

ベルギーのCouplet Sugars社は175年以上にわたって砂糖の加工技術を磨いてきた家族経営の企業で、同社のDecosnowシリーズもまた、こうした欧州の製菓文化と砂糖加工技術の蓄積から生まれた製品といえる。

日本にプードルデコールが本格的に紹介されたのは、日仏商事がマルグリットブランドの製品を輸入・販売し始めたことがきっかけだ。日仏商事は1963年に設立された神戸の専門商社で、フランスを中心とした欧州の製パン・製菓材料を日本に紹介してきた実績がある。レイモン・カルヴェル教授(フランス国立製粉学校教授、「フランスパンの神様」と称される)が1954年に来日して本格的なフランスパンの技術を伝えたことと同様に、欧州の製菓技術や材料が日本の職人たちに浸透していくなかで、プードルデコールもプロの現場に定着していった。

近年では、SNSの普及によって家庭でも「映えるお菓子」への関心が高まり、プードルデコールは製菓専門店だけでなく、cottaや富澤商店といったECサイトを通じて一般の愛好家にも手が届きやすくなった。かつてはプロ向けの業務用サイズしかなかったが、200g〜250g程度の小容量パックが登場したことで、家庭での利用もぐんと広がっている。

免責事項

商品紹介等については、公式サイトおよび公開情報を基に作成しております。
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購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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