材料の名前

日本語では「オーガニックシュガー」、または「有機砂糖」「有機砂糖(粗精糖)」と表記される。英語では “Organic Sugar” もしくは “Organic Cane Sugar” と呼ばれる。フランス語では “Sucre biologique(シュクル・ビオロジック)”、ドイツ語では “Bio-Zucker(ビオ・ツッカー)”、スペイン語では “Azúcar orgánico(アスカル・オルガニコ)”、ポルトガル語では “Açúcar orgânico(アスーカル・オルガニコ)” と表現する。国や地域によって「Bio」「Organic」「有機」など認証の呼称が変わるものの、いずれも化学合成農薬や化学肥料を使わずに栽培されたサトウキビを原料とし、第三者機関による有機認証を取得した砂糖であるという点は共通している。

特徴

オーガニックシュガーの最大の特徴は、原料となるサトウキビの栽培から製糖工程に至るまで、化学合成農薬、化学肥料、加工助剤を一切使用していないことにある。日本国内で販売される場合は有機JAS認証の取得が必要で、その基準では、種まきや植え付けの前から2年以上(多年生作物の場合は3年以上)にわたって使用禁止資材を施していない農地で栽培されたものであることが求められる。海外の認証としては、米国のUSDA Organic、EU Organic(旧EUオーガニック認証)なども広く知られている。

見た目は一般的な上白糖のような真っ白ではなく、淡い金色やクリーム色をしている。これは精製度を意図的に低く抑えているためで、サトウキビ由来のミネラル分や糖蜜成分が結晶の中にわずかに残っている証でもある。味わいは上白糖に比べるとまろやかで、かすかにコクがある。一方で、きび砂糖や黒砂糖のように強い風味やクセがあるわけではないので、素材の持ち味を邪魔しにくい。

粒の形状はグラニュー糖に近いサラサラのタイプが主流で、溶けやすく扱いやすい。製品によっては「グラニュータイプ」と明記されているものもある。精製度が低いため、まれにサトウキビの繊維(バガスと呼ばれる)の微小な粒が混入することがあるが、品質上の問題はない。

栄養面に目を向けると、精製を抑えている分だけ、カルシウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルがわずかに含まれている。ただし、砂糖はあくまで甘味料であり、ミネラルの補給源として大きな効果を期待できるほどの含有量ではない。「白砂糖よりも体にやさしい」という表現を見かけることがあるが、砂糖としてのカロリーはほぼ同等であり、摂取量には通常の砂糖と同様に配慮が必要となる。

用途

お菓子作りとの相性は非常に幅広い。グラニュー糖と同じ感覚で使えるため、スポンジケーキ、クッキー、マフィン、パウンドケーキといった焼き菓子全般に向いている。通常のグラニュー糖と置き換える場合、分量は基本的に同量で問題ない。ただし色がわずかに付くため、純白に仕上げたいメレンゲやロイヤルアイシングなどには不向きなケースもある。逆にいえば、焼き色に深みが出やすく、ブラウニーやキャラメル系の焼き菓子では仕上がりにほんのり風味のニュアンスが加わる。

飲み物にも使いやすい。コーヒーや紅茶に入れると、白砂糖よりもやわらかな甘みが感じられるため、風味にこだわるカフェやティーサロンでも採用されている。料理用途としても、煮物の甘味付けや自家製のたれ・ドレッシングに使えるほか、ジャムやコンポートなど果実を使った保存食づくりにも適している。

近年はオーガニック食材を使ったお菓子のニーズが拡大し、製パンや製菓の業務用市場でも採用が増えている。パティスリーやベーカリーのなかには、全製品の砂糖をオーガニックシュガーに切り替えている店舗もある。

主な原産国

世界のオーガニックシュガー生産は、サトウキビの大規模栽培が盛んな中南米に集中している。

筆頭格はブラジルである。ブラジルは通常の砂糖でも世界最大の生産国であり、オーガニック分野でも圧倒的な存在感を持つ。サンパウロ州を中心に広大な有機サトウキビ農園が展開されており、日本で販売されるオーガニックシュガーの多くがブラジル産となっている。ブラジルには主要なオーガニック砂糖メーカーとして、Natíve(バルボ・グループ)、Jalles Machado(ジャレス・マシャード)、Goiasa(ゴイアサ)、Adecoagro(アデコアグロ)の4社がある。

次に注目すべきはパラグアイで、世界で初めて工業規模でオーガニックシュガーの生産を手がけた国ともいわれる。米国へのオーガニック砂糖輸出では長らくトップクラスの供給元であり、パラグアイ政府も有機砂糖産業の再強化を推進している。

コロンビアも有力な産地のひとつだ。1914年に設立されたDaabon(ダーボン)グループは、1990年代以降にいち早く有機農法に取り組み、有機砂糖のほか有機パーム油や有機バナナなど多品目の有機食品を世界各国に供給している。

アルゼンチンのサルタ州にも歴史のある有機サトウキビ農園が存在し、日本市場にも同国産のオーガニックシュガーが流通している。そのほか、コスタリカやフィリピンからの有機砂糖も一部出回っている。

選び方とポイント

オーガニックシュガーを選ぶ際に、まず確認したいのが有機認証の有無である。日本で「有機」「オーガニック」と表示するには、農林水産省が定める有機JAS認証を取得していなければならない。パッケージに有機JASマーク(緑色の太陽のようなデザイン)が付いているかをチェックするのが基本だ。輸入品であっても、日本国内で有機JASマークなしに「有機」と名乗ることは法律で認められていない。

加えて、USDA OrganicやEU Organicといった海外の認証を併せ持つ製品は、複数の基準をクリアしている信頼性がある。製品の裏面やメーカーの公式サイトで、どの認証を取得しているか、原料の原産国はどこかを確認する習慣をつけるとよい。

用途に応じた粒度の選択も大切なポイントだ。お菓子作りに使うなら、溶けやすいグラニュータイプが使い勝手がよい。料理や飲み物にも幅広く使いたい場合もグラニュータイプで問題ない。一方、仕上げのデコレーションや特殊な用途(シュガーペーストなど)では、そもそもオーガニックシュガーでは対応しにくい場合がある。このあたりは、作るお菓子のレシピと仕上がりイメージに合わせて判断したい。

保存方法にも注意が必要だ。砂糖は基本的に長期保存が可能だが、オーガニックシュガーは精製度が低い分だけ吸湿しやすい傾向がある。開封後は密閉容器に移し替え、直射日光や高温多湿を避けて冷暗所に保管するのが望ましい。

価格は通常の砂糖に比べると高めになる。有機栽培のコスト、認証取得の費用、輸入にかかる物流費などが反映されるためで、一般的なグラニュー糖の2倍から3倍程度の価格帯が目安となる。日常使いで取り入れるか、お菓子作りなど特定の場面で使うかは、家計と相談しながら決めるのが現実的だろう。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内で入手しやすいオーガニックシュガーの代表的な製品とメーカーを紹介する。

まず、製菓材料の専門店として全国に店舗を構える富澤商店は、ブラジル産有機サトウキビを原料とした「有機シュガー」を500g・1kg・25kgの3サイズで販売している。業務用の大袋から家庭用の小袋まで揃っており、製パン・製菓に携わる人に広く利用されている。

むそう商事(ムソー株式会社のグループ会社)の「むそう 有機砂糖」も定番のひとつだ。ブラジル・サンパウロ近郊の農場で有機JAS規格に沿って栽培されたサトウキビから作られた粗精糖で、独特のコクがありながらも使いやすい。ブラジルのNatíve社が製造を手がけている製品で、自然食品店やオーガニック専門店での取り扱いが多い。

ダーボン・オーガニック・ジャパンは、コロンビアのDaabonグループの日本法人であり、コロンビア産の有機砂糖を「オーガニックシュガー」として販売している。除草剤や焼畑を使わず、有機農法を徹底した生産体制が特徴で、有機JASのほかUSDA Organicなど複数の認証を取得している。

大東製糖は、フィリピンのネグロス島産有機サトウキビを原料とした「オーガニックブラウンシュガー」を展開している。現地の伝統的な黒糖(マスコバド糖)の製法に日本の製糖技術を組み合わせた、コクのある味わいが特徴の製品だ。

アルゼンチン産のオーガニックシュガーとしては、株式会社GIGAが取り扱う「パタゴニアンオーガニックシュガー」や、ナチュラルキッチン(健友交易)が輸入する有機砂糖がある。いずれもサルタ州やトゥクマン州の農園で栽培されたサトウキビを原料としている。

そのほか、エサンテ(アムウェイ)の「オーガニックシュガー」や、オーサワジャパンの「オーガニックシュガー」も流通しており、健康志向の消費者を中心に利用されている。

歴史・由来

砂糖の歴史は古く、サトウキビの原産地はニューギニア周辺とされ、紀元前8000年ごろからインドやペルシャへと伝播したといわれる。結晶化された砂糖の製造が始まったのは、1世紀前後の北インドが最初とされている。「Sugar」の語源はサンスクリット語の「シャルカラ(Sarkara)」に由来し、それがアラビア語を経由してヨーロッパへ伝わった。中世ヨーロッパでは砂糖は香辛料と同等の高級品であり、キプロスやシチリアが生産拠点として栄えた。

大航海時代以降、カリブ海や南米の植民地でサトウキビのプランテーション栽培が拡大し、砂糖は一気に大量生産の時代を迎えた。とりわけブラジルは16世紀からサトウキビ栽培が始まり、現在に至るまで世界最大の砂糖生産国であり続けている。

こうした慣行農業としての砂糖生産とは別の流れとして、オーガニック(有機)農業の思想が20世紀初頭にヨーロッパで芽生えた。化学肥料や合成農薬に依存しない農法を目指す動きは、1920年代のルドルフ・シュタイナーのバイオダイナミック農法や、1940年代のイギリスにおける有機農業運動に端を発する。

サトウキビ栽培にこの有機農法を本格的に導入したのは、比較的新しい動きだ。ブラジルのバルボ・グループ(現Natíve)が1987年に「グリーン・ケーン・プロジェクト(Green Cane Project)」を開始したことが、大規模なオーガニックシュガー生産の先駆けとして知られる。このプロジェクトでは、収穫前にサトウキビ畑を焼く慣行(プレハーベスト・バーニング)を廃止し、機械による「グリーン・ハーベスト」へ転換した。農薬や化学肥料も排除し、サトウキビの葉を土壌に還すことで地力を回復させる再生型農業の仕組みを構築した。Natíveはその後、世界のオーガニック砂糖生産量の大きなシェアを占めるまでに成長し、2021年にはRegenrative Organic Certified(再生有機認証)を砂糖生産者として初めて取得している。

パラグアイでは、ブラジルとほぼ同時期かそれ以前から有機サトウキビ栽培が行われていたとされ、世界初の工業規模でのオーガニックシュガー生産国とも評されている。1990年代から2000年代にかけて、米国市場向けの輸出を中心に急成長した。

日本においてオーガニック食品が法的に整備されたのは、2000年の有機JAS制度の施行がきっかけだ。それ以前にも自然食品店を中心に「無農薬栽培の砂糖」として販売されていたものはあったが、有機JAS制度の導入によって「有機」「オーガニック」の名称使用に明確な基準が設けられた。以降、ブラジルやアルゼンチン、コロンビア、パラグアイなどから有機JAS認証を取得した砂糖が安定的に輸入されるようになり、自然食品店だけでなくスーパーマーケットや製菓材料専門店でも手に取れるようになっている。

近年は、健康志向やサステナビリティ(持続可能性)への関心の高まりから、オーガニックシュガーの市場は世界的に拡大傾向にある。とくに欧米では、チョコレートメーカーやクラフト菓子ブランドがオーガニックシュガーを標準原料として採用するケースが増えている。日本国内でも、パティスリーやベーカリーを中心にオーガニック素材へのこだわりが広がり、「すべての材料をオーガニックで揃える」というコンセプトの店舗が登場してきた。

お菓子づくりの現場において、オーガニックシュガーはもはや特別な素材ではなく、選択肢のひとつとして定着しつつある。原料の栽培環境や認証制度への理解を深めたうえで、作りたいお菓子の仕上がりイメージに合わせて取り入れてほしい。

免責事項

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