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氷砂糖|お菓子・パン材料辞典

2026 4/18
菓子材料
2026年4月18日
目次

材料の名前

日本語では「氷砂糖(こおりざとう)」と呼ばれ、「氷糖(ひょうとう)」と略されることもある。英語では “rock candy” もしくは “rock sugar”、”crystal sugar” と表記される。文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)には “Korizato (crystal candy sugar)” という英名が併記されている。中国語では「冰糖(ビンタン/bīngtáng)」、ドイツ語では「Kandiszucker(カンディスツッカー)」、ペルシア語では「ナバート(nabat)」、ヒンディー語では「ミスリー(Misri)」と呼ばれ、世界各地に類似した砂糖結晶が存在する。語源をたどると、英語の “candy” はペルシア語の “qand”(砂糖きび糖)に由来し、さらにサンスクリット語の “khanda”(砂糖の塊)にまでさかのぼる。

特徴

氷砂糖は、グラニュー糖を水に溶かした高濃度の糖液を、時間をかけてゆっくり結晶化させて作る砂糖である。一粒の大きさは通常1~3cm程度で、透明感のある美しい外観から「甘い宝石」とたとえられることもある。

最大の特徴は、数ある砂糖のなかでショ糖(スクロース)の純度がきわめて高い点にある。上白糖のショ糖純度が約97.8%、グラニュー糖が約99.95%であるのに対し、氷砂糖も同等の高純度を誇る。不純物をほとんど含まないため、雑味のないすっきりとした甘さが持ち味で、素材の風味を邪魔しにくい。日本食品標準成分表(八訂)によれば、氷砂糖100gあたりのエネルギーは394kcal、炭水化物はほぼ100gで、たんぱく質・脂質ともに0gとなっている。

もうひとつ見逃せない性質が、溶けるスピードの遅さだ。結晶が大きく、砂糖の分子が規則正しく配列されているため、上白糖やグラニュー糖に比べて液体に溶けるまでに時間がかかる。この「ゆっくり溶ける」という挙動が、果実酒づくりやシロップづくりで浸透圧を利用して果実のエキスをじっくり引き出すのに適している理由である。

また、品質が安定しているのも長所のひとつで、常温で保存していても変質しにくい。賞味期限を設定していないメーカーもあり、非常食や備蓄食品としても注目されている。

なお、飴と氷砂糖は見た目こそ似ているが構造がまったく異なる。氷砂糖は砂糖分子が規則的に並んだ「結晶」であるのに対して、一般的な飴は砂糖を加熱してから急冷することで分子が不規則なまま固まった「アモルファス(非結晶)」の状態にある。そのため飴はやわらかく加工しやすいが、氷砂糖は固く、溶けにくいという性質の違いが生まれる。

用途

氷砂糖の用途は意外に幅広い。

家庭で最もポピュラーな使い方は、果実酒や果実シロップの仕込みだろう。梅酒をはじめ、レモン酒、あんず酒、かりん酒、ゆず酒など、さまざまな果実酒に使われている。氷砂糖がゆっくりと溶けていく過程で浸透圧が段階的に変化し、果実からエキスが効率よく抽出される仕組みだ。また、普通の砂糖だと瓶の底に溶け残りが生じやすいが、氷砂糖は結晶が大きいぶん果実のすき間に入り込みやすく、最終的にはきれいに溶けきるという利点もある。

お菓子の原材料としても活躍の場がある。ショ糖純度が高くクセのない甘みであることから、和菓子の甘味料として用いれば、あんこや餅、白玉などの素材の風味を上品に引き立てられる。中国料理では「冰糖」として、薬膳スープや煮込み料理の甘味付けに欠かせない存在であり、冰糖燕窩(燕の巣のスープ)や冰糖湘蓮(蓮の実の甘味煮)などの伝統的なデザートにも使われている。

さらに、そのまま口に含んでキャンディーとして味わう楽しみ方もある。登山やマラソンなど体を動かす場面では、ゆっくり溶ける氷砂糖が手軽なエネルギー補給源になるとして親しまれてきた。中国の伝統医学(中医学)では、氷砂糖には喉を潤す働きや胃腸を整える作用があるとされ、生薬の調合にも使われている。

このほか、料理の隠し味として煮物やタレの甘みづけに使うと、上白糖よりもすっきりした仕上がりになるため、プロの料理人にも好まれている。

主な原産国・生産地

氷砂糖の原料は、サトウキビまたはテンサイ(甜菜、別名ビート)から精製されたグラニュー糖である。世界の砂糖生産量の約80%がサトウキビ由来で、ブラジルとインドが二大生産国となっている。テンサイ由来の砂糖はEUが最大の生産地域だ。日本国内の砂糖消費量のうち約4割が国産原料(北海道産のテンサイ、鹿児島県南西諸島や沖縄県産のサトウキビ)から作られており、残りの約6割は豪州やタイなどからの輸入原料糖に頼っている。

氷砂糖そのものの製造に関しては、日本国内では愛知県名古屋市に本社を置く中日本氷糖が大きなシェアを持っている。中国でも冰糖は伝統的に広く生産されており、四川省や雲南省、広西チワン族自治区など、サトウキビの産地を中心に製造が盛んである。インドではミスリーとして、イランではナバートとして、それぞれ独自の製法で結晶糖が作られており、砂糖結晶の文化は世界各地に根づいている。

選び方とポイント

氷砂糖を買うときにまず知っておきたいのが、「ロック」と「クリスタル」という2つのタイプの違いだ。

ロック型は、浅い金属皿に濃い糖液を張り、種結晶を入れて約2週間かけて自然に結晶を成長させたのち、できた塊を砕いて仕上げる伝統的な製法で作られる。形はかち割り氷のように不揃いで、ひと粒ごとの大きさにばらつきがある。結晶同士の間に微細な空隙ができるため、クリスタル型より溶けやすい傾向がある。梅シロップのように比較的短期間で仕上げたい場合はロック型が向いている。

クリスタル型は、円筒状の機械(クリスタライザー)に糖液と種結晶を入れ、約50℃を保ちながら回転させて3~4日で結晶を成長させる方法で作られる。16面体の均整のとれた美しい形状が特徴で、大量生産にも適している。スーパーで目にする氷砂糖はこのクリスタル型が多い。溶けるスピードはロック型よりやや遅いため、じっくり漬け込む梅酒や果実酒にはクリスタル型がよく選ばれる。

原料にこだわる人は、北海道産のテンサイ糖を使った氷砂糖も選択肢に入る。パッケージに「国産原料使用」と記載されている製品は、国産のテンサイやサトウキビを原料としたグラニュー糖から作られている。

保存にあたっては、高温多湿を避けて常温で保管すれば長期間品質が保たれる。開封後も密閉容器に移し替えて湿気を防げば、特に問題なく使い続けられる。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内で氷砂糖を製造・販売している主なメーカーと代表製品を紹介する。

中日本氷糖(なかにっぽんひょうとう)は、1895年(明治28年)に愛知県で創業した老舗メーカーで、「馬印」ブランドとして一世紀以上の歴史を誇る。氷砂糖の国内シェアは約48%といわれ、ロック型・クリスタル型の双方をラインナップしている。家庭用の500gや1kg製品から業務用の30kg袋まで幅広く展開しており、氷砂糖資料館を本社工場内に併設するなど、砂糖文化の発信にも力を入れている。

鳳氷糖(おおとりひょうとう)は、福岡県北九州市に拠点を置くメーカーで、1956年(昭和31年)に製造を開始した。「ばら印」ブランドの氷砂糖として広く知られ、果実酒用のクリスタル氷砂糖が定番商品となっている。ただし、親会社のDM三井製糖ホールディングスが2025年3月に発表した生産拠点再編の方針により、鳳氷糖は2026年9月末をもって生産を終了する予定とされている。今後のばら印ブランドの動向は注視が必要だ。

ウェルネオシュガー(旧・日新製糖)は、「カップ印」ブランドの氷砂糖クリスタルを販売している。スーパーでの取り扱いが多く、手に入りやすい製品として知名度が高い。

パールエースは、クリスタル型の氷砂糖を全国のスーパーや量販店で販売している。1kgサイズの家庭用パッケージが中心で、梅酒シーズンには店頭でよく見かける定番メーカーのひとつだ。

大丸本舗は、個包装の氷砂糖「一歩(いちぶ)氷ざとう」を展開している。23gや30gの小袋入りで、キャンディー感覚で手軽に楽しめるのが特徴である。のど飴の代わりや、ちょっとしたエネルギー補給として持ち歩く人もいる。

歴史・由来

砂糖の結晶を大きく成長させるという技術の起源は古い。サトウキビの栽培が始まったインドでは、2000年以上前から砂糖結晶が作られていたとされ、サンスクリット語の「ミスリー」がその存在を伝えている。9世紀にはイスラム圏の著述家たちが、過飽和の糖液を冷却して結晶を成長させる方法を記述しており、ペルシアやアラブ世界を経由して砂糖結晶の製法がヨーロッパや東アジアへと広がっていった。

中国では、唐代(618~907年)に氷砂糖の製法が発見されたとされ、四川省遂寧の鄒和尚が多結晶型の氷砂糖を作り出したという伝承がある。宋代には「糖霜」や「糖氷」と呼ばれ、明代になって精製技術が発達してから「冰糖」という呼称が定着した。中国では古くから薬膳や漢方の甘味料として重用され、宮廷料理にも欠かせない高級甘味料のひとつだった。

日本に氷砂糖がもたらされた正確な時期ははっきりしないが、砂糖自体は奈良時代に唐から伝わったとされ、江戸時代には長崎を通じて砂糖の輸入が盛んに行われた。ただし、当時の氷砂糖は輸入品が主で、品質にもばらつきがあった。

日本の氷砂糖製造に革命をもたらしたのが、静岡県周智郡森町(現在の森町)出身の鈴木藤三郎(1855~1913年)である。鈴木は養家の菓子商で働きながら製糖の研究に打ち込み、1883年(明治16年)、28歳のときに独自の氷砂糖製法を発明した。当時、日本国内の氷砂糖製造は2社が独占し、その製法は秘密にされていたが、鈴木は試行錯誤の末に良質な白糖を溶かして再結晶化させる技術を確立。この方法で作られた氷砂糖は、氷のように透き通った美しい結晶で、従来品とは一線を画す品質だった。

翌1884年には地元の支援を受けて森町に氷砂糖工場を建設し、さらに1889年(明治22年)頃には東京・砂村新田(現在の江東区北砂)に工場を移して大規模な製糖事業を展開した。鈴木はその後、日本精製糖会社を設立し、台湾製糖株式会社の初代社長も務めるなど、日本の近代製糖業の礎を築いた人物として「日本製糖業の父」と呼ばれている。生涯にわたる特許取得件数は159件にのぼり、発明家としての功績も大きい。

鈴木が確立した製法が、現在のロック型氷砂糖の原型にあたる。その後、機械的に結晶を成長させるクリスタル型の製法が開発され、大量生産が可能になったことで、氷砂糖は一般家庭にも広く普及していった。1895年(明治28年)には愛知県で中日本氷糖の前身となる福井商店が創業し、「馬印」ブランドの氷砂糖が世に送り出された。

昭和から平成にかけては、梅酒ブームとともに氷砂糖の需要が伸び、毎年5月から6月の梅酒仕込みシーズンにはスーパーの店頭に大量の氷砂糖が並ぶ光景が定着した。現在では果実酒やシロップづくりだけでなく、非常食や携帯用キャンディーとしての需要も生まれ、氷砂糖の活躍の場は少しずつ広がっている。

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