材料の名前

和名は「柏の葉(かしわのは)」。植物としての正式名称はカシワで、ブナ科コナラ属に分類される落葉高木の葉を指す。学名は「Quercus dentata」で、種小名の dentata は「歯のある」を意味し、葉の縁に並ぶ波状の鋸歯に由来する。

英語では「Daimyo oak leaf」あるいは「Japanese emperor oak leaf」と呼ばれることが多い。中国語では「槲樹(húshù)」の葉として扱われる。なお、日本で一般的に使われる「柏」の漢字は、中国語ではヒノキ科の針葉樹を指すため本来は別の植物にあたる。正確な漢字表記は「槲」であるが、日本では慣用的に「柏」が定着している。

フランス語では「chêne de Daimyo(シェン・ド・ダイミョー)」、すなわち「大名のオーク」と訳される。西洋圏では園芸樹木としても知られており、大ぶりな葉が印象的な東アジア原産のオークとして認識されている。

特徴

カシワの葉は、コナラ属の中でも特に大きく、長さ10~30センチメートルほどの倒卵形をしている。葉の縁には丸みを帯びた波状の鋸歯が並び、フリルのような独特の輪郭が見た目の特徴となる。新葉には柔らかい毛が密生しており、成長するにつれてしっかりとした厚みと硬さを備えた丈夫な葉になる。

お菓子の材料として注目すべき最大の特性は、芳香成分「オイゲノール」の存在である。オイゲノールはクローブ(丁子)にも多く含まれる成分で、抗菌作用や防腐効果を持つフィトンチッドの一種だ。蒸したての餅を柏の葉で包むと、この芳香成分が餅に移り、すがすがしい「柏香(かしわか)」と呼ばれる独特の風味が生まれる。冷蔵技術がなかった時代には、この抗菌作用によってカビや細菌の繁殖を抑え、餅の日持ちを延ばす天然の保存手段としても重宝された。

加えて、カシワには秋に葉が枯れても翌春の新芽が吹くまで落葉しないという「枯凋性(こちょうせい)」と呼ばれる生態がある。この性質は植物学的にも興味深い特徴であり、後述するように縁起物としての由来にも深く結びついている。

市場に流通する柏の葉には、大きく分けて二つの色がある。一つは加熱処理(ボイルや蒸し)を施した茶色の葉で、落ち着いた色合いと強い柏香が持ち味である。もう一つは真空パックや塩漬けで色止めされた緑色の葉で、春らしい鮮やかな見た目が魅力となる。味わいに大きな差はないものの、和菓子店では餡の種類ごとに葉の色を使い分けて、見た目の区別や売り場の彩りに活用している。

用途

柏の葉の代表的な用途は、何と言っても柏餅である。上新粉で作った餅に小豆餡やみそ餡を挟み、二つ折りにした状態でカシワの葉にくるんで仕上げる。5月5日の端午の節句に欠かせない和菓子として、全国の和菓子店やスーパーマーケットの店頭に並ぶ季節の風物詩だ。

柏の葉が果たす役割は多岐にわたる。まず、前述のオイゲノールによる抗菌・防腐効果。次に、餅の表面が乾燥して硬くなるのを防ぐ保湿の役目。そして最も大きいのが、葉から餅へと移るさわやかな香りによる風味の向上である。さらに、手を汚さずに食べられるという実用的な利点も見逃せない。

柏餅以外にも、料理の敷き葉や盛り付けの器代わりとして使われる場面がある。カシワの葉を食べ物の下に敷く文化は古代にまで遡り、「炊葉(かしきは)」「炊く葉(かしぐは)」という言葉がカシワの語源の一つとされるほどだ。神事においてもお供え物を載せる器として用いられてきた歴史があり、和食の盛り付けにおいても季節感を演出する飾り葉としての需要がある。

なお、柏の葉そのものは食用を前提として使われてはいない。桜餅のオオシマザクラの葉とは異なり、繊維が硬く筋張っているため、一般的には葉を外して餅だけを食べる。ただし毒性はないので、食べてしまっても健康上の問題はない。

主な原産国

カシワの木は、日本、朝鮮半島、中国を中心とした東アジアに広く分布する。日本国内では北海道から九州まで見られるが、とりわけ北海道に多く、羊蹄山や樽前山の山麓、十勝平野一帯、根釧台地などには大規模なカシワ林が広がっている。石狩市の石狩砂丘には世界的にも貴重な天然のカシワ海岸林が残されている。本州では青森県や長野県が産地として知られる。

ただし、お菓子に使う「柏の葉」という製品としては、現在流通しているものの大半が中国産の輸入品である。国産の柏の葉はきわめて希少で、コストも高くつくため、業務用としての大量供給は難しい。韓国産も一部流通しているが、中国産に比べると流通量は限られている。輸入品の柏の葉は、残留農薬検査など日本国内の安全基準を満たしたうえで流通しているため、品質面での信頼性は確保されている。

もともとカシワの自生が少なかった近畿圏以西では、柏の葉の代わりにサルトリイバラ(別名サンキライ)の葉で餅を包む文化が古くから根付いていた。サルトリイバラの葉は丸いハート形で、カシワに比べると小ぶりで表面がつるりとしている。これを「しばもち」「いばらもち」「かからだご」など地方独自の名称で呼ぶ地域も多い。韓国や中国からカシワの葉が安価に輸入されるようになった現代では、カシワの葉を使った柏餅が全国的に主流となったが、地方によっては今もサルトリイバラの葉が使われている。

選び方とポイント

業務用・家庭用を問わず、柏の葉を選ぶ際にはいくつかの観点がある。

まずはサイズの確認。柏の葉には S、M、L などのサイズ展開があり、包みたい餅の大きさに合わせて選ぶ必要がある。家庭で少量を手作りする場合はM~Lサイズが扱いやすく、業務用では均一な仕上がりを求めてサイズ指定で仕入れるのが一般的だ。

次に、加工状態の違いを把握しておきたい。柏の葉の流通形態は主に三種類ある。一つ目は乾燥葉で、長期保存が可能なため年間を通じてストックできる。使用前に水やぬるま湯で戻す手間がかかるものの、保管スペースを取らず経済的である。二つ目は塩漬け葉で、真空パックに入った状態で販売されることが多い。使用前に水にさらして塩抜きをする。三つ目はボイル済み(殺菌煮)の葉で、洗浄・加熱・選別が済んでいるため、開封してすぐに使える手軽さが利点となる。

色については、茶色と緑色のどちらを選ぶかで柏餅の印象が変わる。茶色の葉は伝統的な風合いで柏の香りが強く、緑色の葉は見た目が鮮やかで現代的な彩りを添える。和菓子店では、こしあんには茶色、みそあんには緑色といった使い分けをして、中身の区別がつくよう工夫している例もある。

保存のポイントとしては、乾燥葉は湿気を避けて冷暗所に保管すること。真空パックや塩漬け葉は開封後に冷蔵保存し、緑色の葉は光による退色を防ぐため遮光して管理する。家庭で少量を購入した場合は、使い切れない分を冷凍保存すればシーズン後にも利用できる。

メジャーな製品とメーカー名

柏の葉を製造・販売している主なメーカーや販売元を紹介する。

小林多男商店(長野県長野市)は、柏の葉の製造販売を創業の原点とする天産物の専門企業である。柏の葉のほか、笹の葉や桜の葉、よもぎなど和菓子に欠かせない天然素材を幅広く扱っており、業務用から家庭用まで対応した商品ラインナップを持つ。Amazonや楽天市場などのオンライン通販でも購入できるため、個人の利用者にもなじみ深い。

美濃与(岐阜県)は、製菓原材料を専門に扱う卸売メーカーで、ボイル済み柏葉や乾燥柏葉など、和菓子店の製造工程に合わせた複数の加工形態を取り揃えている。サイズ展開も豊富で、業務用として全国の和菓子店へ供給している。

天極堂(奈良県御所市)は、吉野本葛で知られる老舗の和菓子材料メーカーで、「天極堂プロ」のブランドで業務用柏の葉(真空パック・緑)を販売している。

舟山株式会社は、柏の葉を中心にした製菓用天然葉の専門メーカーで、Amazonなどで緑色や茶色の柏葉を50枚・100枚単位で家庭向けにも販売している。

cotta(コッタ)や富澤商店といった製菓材料の大手通販サイトでも、8枚入りや20枚入りといった少量パックの柏の葉を取り扱っており、家庭で柏餅を手作りする際に手軽に購入できる。

柏の葉を「使う側」、つまり柏餅の名品で知られる和菓子店としては、室町時代後期に京都で創業した虎屋(とらや)が挙げられる。毎年4月下旬から5月5日ごろまで販売される季節限定の柏餅は、御膳餡(こしあん)と味噌餡の二種類を展開し、端午の節句の贈答品としても高い人気を誇る。近江八幡の老舗たねやは、粒餡・こしあん・みそ餡の三種類の柏餅を販売しており、素材へのこだわりに定評がある。京都の仙太郎も柏餅で知られる名店の一つで、毎年5月中旬ごろまで店頭に並ぶ。

このほか、コンビニエンスストアや大手スーパーでも端午の節句の時期にはさまざまなメーカーの柏餅が並ぶ。人工柏葉(ビニール製)を使った廉価版も存在するが、天然の柏の葉から移る香りと風合いは、やはり本物ならではのものだ。

歴史・由来

柏の葉と日本人の関わりは古代にまで遡る。カシワの語源とされる「炊葉(かしきは)」という言葉が示すとおり、大きくて丈夫なカシワの葉は、食べ物を盛り付ける器として、あるいは蒸し調理の際に食材を包む道具として古くから利用されてきた。陶器や漆器が普及する以前、自然の葉を皿代わりに使うのはごく当たり前の習慣であり、カシワの葉はその代表格であった。

端午の節句に柏餅を食べる風習が生まれたのは江戸時代の中期、徳川九代将軍家重から十代将軍家治の治世のころとされている。背景には、カシワの木がもつ「枯凋性」がある。秋に枯れた葉が翌春の新芽が育つまで枝に残り続けるこの性質を、「親(古い葉)が子(新芽)の成長を見届けてから世代を譲る」、すなわち「家系が途絶えない」「子孫繁栄」の象徴として武家社会が受け止めたのだ。男子の健やかな成長と一族の繁栄を願う端午の節句にこれほどふさわしい植物はないとして、カシワの葉で包んだ餅を供える文化が江戸で広まった。

江戸で流行した柏餅の文化は、参勤交代の制度を通じて全国へと伝播していった。ただし、カシワの木は関東以北に多く自生する一方、西日本にはそれほど豊富でなかったため、1930年代ごろまではカシワの葉を用いた柏餅は関東が中心であった。近畿圏以西ではカシワの代わりにサルトリイバラなどの葉で餅を包む形が「柏餅」として定着しており、これがカシワの葉を使った柏餅よりも古い起源をもつとする説もある。

やがて中国や韓国からカシワの葉が輸入されるようになると、全国的にカシワの葉で包む形式の柏餅が主流となった。輸入品の流通によって、かつてはカシワの自生が少なかった地域でも、本来の「カシワの葉の柏餅」が手に入るようになったのである。

なお、カシワの葉で餅を包む習慣は日本だけのものではない。中国や朝鮮半島にもカシワの葉を使って餅を包む風習が存在し、韓国ではサルトリイバラの葉で餅を包んだ「マンゲトク」と呼ばれる食べ物が旧正月に食べられている。こうした東アジア一帯に共通する文化の広がりから、カシワの葉で餅を包む風習は元来中国に起源があり、朝鮮半島を経由して日本へ伝わったのではないかとする説も唱えられている。

日本においてカシワは古来「葉守の神の樹」と呼ばれ、冬でも葉を落とさないことから神が宿る神聖な木として崇められてきた。家紋としても「三つ柏」をはじめとする柏紋は武家や神社で広く用いられ、現在でも神道の神紋にカシワが採用されている例は多い。北海道のアイヌ民族もカシワを「コム・ニ・フチ(カシワの木の婆様)」や「シリコル・カムイ(山を所有する神)」として崇拝の対象としていた。

こうした神聖さ、縁起の良さ、実用的な抗菌・防腐機能、そして香りの良さ。これらすべてが組み合わさって、カシワの葉は単なる包装材を超えた、日本の食文化における特別な存在になった。毎年5月になると全国の和菓子店の店先にカシワの香りが漂うのは、何百年もの時間をかけて育まれてきた日本の伝統が、現在も脈々と受け継がれている証である。

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