材料の名前
日本語では「アーモンドダイス」と呼ばれ、英語では “Diced Almonds” と表記される。フランス語圏の菓子業界では “Amandes en dés”(アマンド・アン・デ)と呼ぶこともある。「ダイス」はサイコロを意味する英語の “dice” に由来し、アーモンドをサイコロ状に細かくカットした加工品を指す。日本の製菓材料店や業務用カタログでは、「アーモンドダイス」の呼称がほぼ定着しており、「チョップドアーモンド(Chopped Almonds)」や「アーモンドニブス(Almond Nibs)」という呼び方が使われる場合もある。
特徴
アーモンドダイスは、皮を剥いたアーモンド(ブランチアーモンド)を機械で細かく砕いて粒状に整えた製菓用ナッツ素材である。粒の大きさは製品によって異なり、日本の業界では「16割」と「32割」という区分が広く用いられている。16割はアーモンド1粒を約16等分したもので、粒径はおおむね3〜5mm程度。32割はさらに細かく約32等分したもので、粒径は約2〜3mm程度になる。カリフォルニア・アーモンド協会の国際規格ではLarge(約7〜11mm)、Medium(約3〜9mm)、Small(約3〜5mm)、Fine(約3mm以下)の4段階に分類されており、日本で流通する16割はMediumからSmall、32割はSmallからFineに相当する。
最大の特徴は、焼成後に生まれる「カリッ」とした独特の歯ごたえだ。アーモンドホールほどの塊感はなく、スライスアーモンドのような薄さともまた違う。ちょうどその中間にあたる小さな粒が、クッキーやケーキの生地に散りばめられると、噛むたびに心地よい食感のアクセントを生み出す。加えて、ローストすることでアーモンド特有の芳ばしい香りが一段と引き立つのも大きな魅力である。
色味は皮なしタイプの場合、淡いクリーム色からきつね色までさまざまで、ロースト具合によって変化する。皮付きのままダイスカットされた製品も存在し、こちらは茶色い皮の粒が混ざることで、より素朴でナチュラルな見た目に仕上がる。
栄養面では、原料がアーモンドそのものであるため、ビタミンEや食物繊維、オレイン酸を中心とした不飽和脂肪酸を豊富に含む。日本食品標準成分表によると、乾燥アーモンド100gあたりのエネルギーは約609kcal、たんぱく質は約19.6g、脂質は約51.8g、ビタミンE(α-トコフェロール)は約30.0mgとなっている。ダイスカットしても成分的にはほぼ同等であり、少量でも栄養価の高いトッピング素材として活用できる。
なお、生の状態で販売されているアーモンドダイスは、そのまま食べると消化不良を起こす可能性があるため、必ず加熱してから使用する。ローストの目安は150〜160℃のオーブンで8〜12分程度。焼きムラを防ぐために途中で一度天板を返すか、全体を軽く混ぜるとよい。
用途
アーモンドダイスの用途は、製菓・製パン・料理と幅広い。
焼き菓子の分野では、クッキーやビスコッティの生地に直接練り込むのが定番の使い方だ。焼き上がりに粒感が残り、プレーンな生地にリズミカルな食感が加わる。フロランタンの台生地に混ぜ込んだり、パウンドケーキの具材として使ったりするケースも多い。
トッピング用途としては、シュークリームの上に散らしてからオーブンで焼き上げる「アーモンドシュー」や、チョコレートの表面にまぶすデコレーションが代表的である。カリフォルニア・アーモンド協会のデータによると、消費者の85%が「アーモンドはチョコレートをよりクランチーにする」と回答しており、チョコレート製品との相性はとくに高い。
パン作りにおいては、生地表面にまぶして焼くことで見た目と食感にアクセントをつけたり、フィリングの一部として内側に忍ばせたりと、さまざまなアレンジが可能だ。
料理の世界でも活躍の場は広い。サラダのトッピング、肉料理や魚料理のクラスト(衣)として使えば、見た目の華やかさとナッティーな香りが加わる。グラノーラやシリアルバーの材料としてもよく登場する。
アイスクリーム業界では、アイスバーのコーティングにダイスアーモンドを用いるのが古典的な手法で、冷たいアイスとカリカリのアーモンドの対比が人気を集めている。
主な原産国
アーモンドダイスの原料となるアーモンドは、世界生産量の約80%をアメリカ合衆国カリフォルニア州が占めている。カリフォルニアの温暖な地中海性気候はアーモンド栽培に適しており、セントラルバレーを中心に広大な果樹園が広がっている。日本で流通する製菓用アーモンドダイスも、その大半がカリフォルニア産である。富澤商店や共立食品といった主要メーカーの製品パッケージにも「原産国:アメリカ」と記載されている。
カリフォルニアに次ぐ産地としては、スペイン、オーストラリア、トルコ、モロッコなどが挙げられる。スペインは伝統的なアーモンドの産地であり、マルコナ種と呼ばれる丸みのある品種が有名だ。ただし、マルコナ種は主にそのまま食べるおつまみ用やマジパン原料として珍重されることが多く、ダイスカット用として日本に大量輸入されるケースは少ない。
オーストラリアは近年生産量を伸ばしている新興産地で、南半球に位置するため北半球の端境期に収穫できるという利点を持つ。
選び方とポイント
アーモンドダイスを選ぶ際に、まず確認したいのは粒の大きさだ。前述のとおり、日本では16割と32割が主流で、用途に応じた使い分けが仕上がりを大きく左右する。
16割(粒径3〜5mm前後)は、クッキーやパンの生地に混ぜ込んだときにしっかりとした食感と存在感が残る。噛むたびにアーモンドの風味が口に広がるため、ナッツ感を前面に出したい焼き菓子に向いている。
一方の32割(粒径2〜3mm前後)は、チョコレートのトッピングやアイスクリームのコーティング、あるいは細かい粒が均一に散る仕上がりを求めるケーキのデコレーションなどに適している。口当たりが軽く、生地全体にまんべんなく分散しやすいのが利点だ。
次に確認したいのが「生」か「ロースト済み」かという点である。生タイプは自分好みのロースト加減に調整できる自由度がある反面、使用前に必ずオーブンやフライパンで火を通す手間がかかる。ロースト済みタイプはそのまま使えるので手軽だが、時間が経つと香りが飛んだり酸化が進んだりする可能性がある。少量ずつ使い切れるかどうかを考えて選びたい。
皮付きか皮なしかも選択のポイントとなる。皮なしタイプは色が白くて上品な見た目に仕上がり、洋菓子全般に幅広く使える。皮付きタイプはやや渋みを含んだ風味があり、ワイルドな食感と見た目を生かしたいパンやグラノーラなどに向いている。
保存に関しては、ダイスカットされたアーモンドはホールに比べて表面積が大きく、酸化しやすい性質を持つ。開封後は密閉容器やジッパー付き袋に入れ、冷暗所もしくは冷蔵庫で保管するのが望ましい。富澤商店の製品の場合、未開封での賞味期限は製造日から270日と記載されているが、開封後はできるだけ早く、目安として1か月以内に使い切りたい。長期保存が必要な場合は冷凍も可能で、使うときに必要量だけ取り出してそのままローストすればよい。
購入時には、袋の中で粒が粉状に砕けていないか、変色や油にじみがないかもチェックするとよい。品質のよいアーモンドダイスは、粒が均一に揃っていて、色味が均等に淡いクリーム色をしている。
メジャーな製品とメーカー名
日本国内で手に入りやすいアーモンドダイスの主な製品とメーカーを紹介する。
富澤商店(TOMIZ)は、製菓材料の専門店として広く知られる存在だ。カリフォルニア産の皮なしアーモンドダイスを16割と32割の2種類で展開しており、家庭用の100gパックから業務用の1kg、さらには11.34kg入りの大容量まで幅広いサイズを揃えている。15gの使い切りスティックタイプも用意されており、少量だけ使いたい場面で重宝する。オンラインショップと実店舗の両方で購入可能である。
共立食品は「ホームメイド」ブランドの菓子材料シリーズで知られるメーカーだ。同社のアーモンドダイスは40g入りのパッケージで販売されている。アメリカ産の生アーモンドの渋皮を取り除き、約8mmサイズに機械カットした製品で、スーパーマーケットの製菓材料コーナーで広く流通しているため、最も手軽に入手できるアーモンドダイスのひとつといえる。賞味期間は360日と比較的長い。
正栄食品工業は、業務用ナッツの輸入・加工で長い実績を持つ企業である。アーモンド16割皮無、アーモンド32割皮無のほか、ローストアーモンドダイス皮付きなど、用途や仕上がりに合わせて複数のバリエーションを取り揃えている。業務用の大容量パッケージが中心で、パティスリーやベーカリーなどプロの現場での採用が多い。
cotta(コッタ)は、お菓子・パン作りの総合通販サイトとして人気が高く、自社ブランドのアーモンドダイスに加え、正栄食品工業をはじめとする各メーカーの製品を幅広くラインナップしている。レシピと材料をセットで提案するスタイルが特徴的で、初心者にもわかりやすい購入体験を提供している。
海外メーカーとしては、カリフォルニア・アーモンド協会に加盟する多数の生産者・加工業者が業務用ダイスアーモンドを世界各国に輸出している。Blue Diamond Growers(ブルーダイヤモンド)はアメリカ最大級のアーモンド加工協同組合として知られ、ダイスを含む各種加工アーモンドを広く流通させている。
歴史・由来
アーモンドダイスの歴史を語るには、まず原料であるアーモンドそのものの歩みを辿る必要がある。
アーモンドの原産地は西アジアから中央アジアにかけての地域と考えられている。栽培の歴史は極めて古く、紀元前4000年頃にはすでに地中海沿岸や中東地域で人の手による栽培が行われていたとされる。ヨルダンのヌメイラ遺跡からは約5000年前のアーモンドの痕跡が発見されており、人類が最初に意図的に栽培した果樹のひとつと位置づけられている。旧約聖書やギリシャ神話にもアーモンドは繰り返し登場し、古代から貴重な食材として扱われていたことがうかがえる。
その後、アーモンドはシルクロードや海上交易を通じてヨーロッパ各地、さらにアジアへと広まった。とくにスペインやイタリアといった地中海沿岸諸国では、マジパンやプラリネなどアーモンドを主役にした菓子文化が花開いた。ヨーロッパの菓子職人たちがアーモンドをスライスしたり、砕いたり、粉末にしたりと多彩な加工を施すようになった背景には、用途に応じた食感の使い分けという実用的な知恵があった。ダイスカットもこうした加工技術の発展の中で自然に生まれた形態であると考えられる。
カリフォルニアでのアーモンド栽培は、18世紀にスペインからフランシスコ会の修道士がアーモンドの苗木を持ち込んだことに始まる。しかし、沿岸部の冷涼な気候はアーモンドに合わず、商業栽培が本格化したのは19世紀後半、温暖な内陸部のセントラルバレーに栽培が移ってからのことだ。20世紀に入ると機械化と品種改良が進み、カリフォルニアは世界最大のアーモンド産地として不動の地位を確立した。現在では約7,600の農家と100を超える製造加工業者がカリフォルニア・アーモンド協会に組織されている。
日本にアーモンドが伝わったのは江戸時代のことで、南蛮船に乗ったポルトガル人が持ち込んだのが最初とされている。和名の「扁桃(へんとう)」は、その扁平な粒の形状から名づけられた。ただし、当時はあくまで珍しい舶来品の域を出ず、一般に広く流通するようになるのは戦後のことである。日本ナッツ協会やイシハラ社の資料によると、アーモンドの本格的な輸入が始まったのは1950年ごろで、以降、食の洋風化とともに消費量が拡大していった。
製菓材料としてのアーモンドダイスが日本で広く認知されるようになったのは、家庭での手作りお菓子ブームと製菓材料専門店の台頭が大きく影響している。とくに1990年代後半からのインターネット通販の普及は、それまでプロの菓子職人しか入手しにくかった業務用素材を家庭のキッチンにまで届ける追い風となった。富澤商店やcottaのようなオンラインショップが取扱品目を拡充し、アーモンドダイスも「ホール」「スライス」「プードル」と並ぶ定番のアーモンド加工品として一般に定着していった。
現在では、日本国内のスーパーマーケットの製菓材料コーナーにも小袋のアーモンドダイスが並ぶようになり、バレンタインやクリスマスといったイベントシーズンにはとくに需要が高まる。かつてはプロの厨房だけの素材だったアーモンドダイスが、いまや家庭のお菓子作りに欠かせない身近な材料として親しまれている。
