材料の名前(日本語・外国語)

和名は「緑豆(りょくとう)」。植物としての正式な和名は「ヤエナリ(八重生)」で、学名はVigna radiata(ヴィグナ・ラディアータ)という。マメ科ササゲ属に分類される一年生植物の種子であり、アズキ(V. angularis)とは同属にあたる。日本の製菓業界や食品業界では「グリーンマッペ」という呼び名も広く使われている。このマッペという言葉はヒンディー語に由来するとされ、同属のケツルアズキが「ブラックマッペ」と呼ばれるのと対になっている。

英語圏では”mung bean”(マングビーン)が一般的な呼称で、イギリス英語では”green gram”(グリーングラム)とも呼ばれる。中国語では「绿豆(リュウドウ)」、ベトナム語では「đậu xanh(ダウサイン)」、韓国語では「녹두(ノクトゥ)」、タイ語では「ถั่วเขียว(トゥアキアオ)」と表記する。英語名”mung”の語源は、サンスクリット語の”mudga”にさかのぼるとされ、ヒンディー語の”moong(ムング)”を経て英語に入った。別名として「青小豆(あおあずき)」「文豆(ぶんどう)」という呼び方も古くから日本に存在している。

なお、名前が似ている「グリーンピース」はエンドウ(Pisum sativum)の種子であり、緑豆とはまったく別の植物なので混同しないよう注意が必要である。

特徴

緑豆の種子は長さ4〜5mm、幅3〜4mmほどの小さな長球形をしている。表面は一般的に鮮やかな緑色だが、品種によっては黄色や褐色のものも存在する。乾燥状態での表面はなめらかで、つややかな光沢を持つのが良品の証とされる。

栄養面で見ると、乾燥緑豆100gあたりのエネルギーは約354kcal。たんぱく質を約25g含み、これは豆類の中でも比較的豊富な部類に入る。炭水化物は約59gで、そのうち食物繊維が約14.6gを占める。脂質はわずか1.5gほどと低脂肪であることが特徴のひとつだ。ミネラル分も充実しており、カリウム1300mg、カルシウム100mg、マグネシウム150mg、リン320mg、鉄5.9mg、亜鉛4.0mgなどを含んでいる(日本食品標準成分表に基づく数値)。ビタミンB群も豊富で、特に葉酸は100gあたり460μgと際立って多い。ビタミンB1(チアミン)も0.70mgと高い含有量を示す。

豆の皮にはサポニンや食物繊維が多く含まれ、漢方の世界では「清熱解毒」の食材として知られている。中国の薬膳では「寒性」「甘味」に分類され、体の熱を冷まし、解毒を助ける作用があるとされてきた。近年の研究では、緑豆に含まれるポリフェノールにα-グルコシダーゼ阻害作用があり、血糖値の上昇を抑制する効果が報告されている。

加工適性にも優れている。でんぷんの含有量が多いため、春雨の原料として理想的な性質を備えている。また、煮崩れしにくいながらも十分に加熱すれば粉状にしやすく、餡や粉にして製菓に使いやすいという特長がある。味わいは小豆に比べてあっさりとしており、淡い甘みとほのかな豆の風味が持ち味だ。この控えめな味わいが、砂糖やバター、ココナッツミルクなど他の素材との組み合わせを自在にしている。

用途

製菓における緑豆の用途は、アジア各国で多岐にわたる。

中国では、緑豆を粉にして砂糖やバターと合わせ、木型に入れて成形した「緑豆糕(リュウドウガオ)」が古くから親しまれてきた。北京、天津、桂林などで特に名物とされ、端午節に食べる風習が今も残っている。月餅の餡としても使われており、小豆餡とはまた異なる爽やかな甘みが好まれている。緑豆糕は北京風と蘇式(蘇州風)に大別され、北京風は脂肪分を加えない「乾燥豆糕」タイプ、蘇式は油脂を用いたしっとりとした仕上がりが特徴となっている。

ベトナムでは「バインダウサイン(Bánh đậu xanh)」が国民的な銘菓として知られる。緑豆を蒸して潰し、砂糖と植物油を混ぜて型に入れ、低温で焼成して水分を飛ばしたもので、口に含むとほろほろと崩れる食感が日本の落雁に似ている。北部ハイズオン省が発祥の地とされ、ベトナム最後の皇帝バオダイに献上されたという逸話も伝わる。抹茶味やドリアン味など、現代的なフレーバーのバリエーションも増えている。

台湾では「緑豆椪(リュウドウポン)」と呼ばれるパイ菓子が伝統的に作られている。パイ生地で緑豆餡を包んでふっくらと焼き上げたもので、中秋節の贈答品としても人気が高い。

タイやフィリピンでは、緑豆をココナッツミルクと一緒に甘く煮たデザートが日常的に食べられている。香港やシンガポールでも「緑豆沙」「緑豆湯」と呼ばれる甘い汁粉風のスイーツが広東式糖水(デザートスープ)の定番メニューとなっている。

韓国料理では、緑豆を水に漬けてすり潰した生地で焼く「ピンデトッ(緑豆チヂミ)」のほか、緑豆でんぷんを固めた「ノクトゥムㇰ」という寄せものがある。お菓子としての利用よりも料理材料としての側面が強いが、韓国の伝統菓子「韓菓」の一部にも緑豆粉が使われてきた。

日本のお菓子づくりの現場では、緑豆そのものを主役にした伝統和菓子は少ないものの、ぜんざいや餡に加工して使う人が増えている。小豆とは異なる淡い色合いと上品な甘さが新鮮な味わいを生み出す。製菓材料店では乾燥緑豆のほか、緑豆粉やむき緑豆(去皮したもの)も入手できる。

春雨の原料としての利用も忘れてはならない。緑豆でんぷんから作られる春雨は、そのコシの強さと透明感が特徴で、お菓子の分野ではゼリー状のデザートや涼菓に応用されることもある。

主な原産国

緑豆の原産地はインド亜大陸とされている。考古学的な証拠から、約4000年以上前にインドの野生種から栽培化されたと推定されている。中国には2000年以上前に伝わり、長い栽培の歴史を持つ。日本への渡来は17世紀頃とされ、その記録が残っている。

現在の生産状況を見ると、世界の緑豆総生産量の半分以上をインドが占めており、栽培面積でも世界全体の約65%がインドに集中している。インドに次ぐ主要生産国はミャンマーで、同国で生産された豆の多くがインドへ輸出されている。中国も主要な生産国のひとつだが、近年は生産量の減少傾向が続いているとの報告がある。タイ、オーストラリア、フィリピン、バングラデシュ、インドネシアなどでも栽培が行われている。

日本国内ではもやし用の種子としてほぼ全量を輸入に頼っており、その大部分は中国(特に内モンゴル自治区や吉林省)から、残りはミャンマーやタイから調達されている。製菓用に流通している乾燥緑豆も、中国産やタイ産、ミャンマー産が中心となっている。

選び方とポイント

乾燥緑豆を購入する際、まず確認したいのが粒の色つやだ。良品は鮮やかな深緑色をしており、表面にしっかりとした光沢がある。色がくすんでいたり、褐色に変色しているものは、収穫から時間が経過している可能性が高い。粒の大きさが揃っているかどうかも品質を見極める目安になる。不揃いが多いものは選別が甘い場合がある。

割れ粒や虫食い穴のある粒が混じっていないかもチェックしたい。変色粒(カビの痕跡)や未熟粒(硬く小さい粒)が少ないものほど、品質管理が行き届いている。信頼できるメーカーの製品を選ぶのが安心だ。

保存は直射日光と高温多湿を避け、冷暗所が基本となる。密閉容器に移して保管すれば、虫の発生も防ぎやすい。脱酸素剤入りの包装であれば、未開封なら酸化やカビの心配はほぼない。開封後はなるべく早く使い切ることを心がけたい。

製菓に使う場合、皮つきのまま使うか、皮をむいた「むき緑豆」を使うかで仕上がりが変わる。皮つきは色と食物繊維を生かしたいとき、むき緑豆はなめらかな食感の餡やペーストを作りたいときに適している。用途に応じて使い分けるとよい。

メジャーな製品とメーカー名

日本で緑豆を製菓材料として手に入れる場合、最もアクセスしやすいのは富澤商店(TOMIZ)の「緑豆(グリーンマッペ)」だ。200g入りの小分けパッケージで販売されており、実店舗でもオンラインショップでも購入できる。緑豆ぜんざいやスープ、餡づくりなど幅広い用途に対応しており、家庭でアジアンスイーツを試してみたい人にとって使いやすい。

緑豆春雨も関連する製菓・調理素材として見逃せない。森井食品の「ひょうたん印 緑豆はるさめ」は40年以上続くロングセラー商品として知られる。西日本食品工業の「白鳥印の春雨」も緑豆でんぷんを使った製品で、業務用から家庭用まで幅広く流通している。丸成商事の「緑豆春雨」もオーガニック志向の消費者から支持を集めている。

海外のお菓子製品としては、ベトナムのMINH NGOC(ミンゴック)社が製造する「Bánh Đậu Xanh(バインダウサイン)」が日本国内でも流通している。Amazonや楽天、カルディなどで購入可能で、240g入りの箱が一般的だ。ベトナムの「ロンヴァンホアンギア(Rồng Vàng Hoàng Gia)」社も1997年創業のバインダウサイン専門メーカーとして知られ、多彩なフレーバーを展開している。

台湾土産として人気のある緑豆糕は、台北をはじめ各地の中華菓子店で販売されている。中秋節の贈答品として専門店が季節限定で販売するものも多く、旅行者にはなじみ深い存在だ。

歴史・由来

緑豆の栽培史は、人類の農耕の歴史と深く結びついている。考古学的な知見によれば、緑豆はおよそ4000年以上前にインド亜大陸で野生種のヤエナリから栽培化されたとされる。南インドの新石器時代の遺跡からは緑豆の種子が出土しており、この地域が栽培化の初期段階において中心的な役割を果たしていたことがうかがえる。

インドから南アジア、東南アジアへと伝播した緑豆は、中国においても早い時期から栽培されるようになった。中国での栽培歴は2000年以上に及ぶとされ、6世紀に書かれた農書『斉民要術』にも関連する記述が見られる。同書には緑豆でんぷんから春雨を作る製法の原型も記されており、当時すでに加工食品の原料として重要な位置を占めていたことがわかる。

朝鮮半島への伝来も古く、16世紀前半の『需雲雑方』には、緑豆でんぷんを使って麺状の食品を作る方法が記されている。これは春雨やチャプチェの原型にあたるもので、1670年頃の『飲食知味方』にも同様の記述がある。緑豆は朝鮮半島の食文化に深く浸透し、朝鮮語でデンプンを意味する「녹말(ノンマル)」という一般名詞が「緑豆粉末」の略であることにも、その影響の大きさがあらわれている。

日本へは17世紀頃に伝わったとされるが、小豆や大豆に比べると利用の幅は限られ、おもにもやしの原料として定着していった。戦後、中国やタイとの貿易が活発化すると、もやし原料としての緑豆の輸入が本格化した。かつてはブラックマッペ(ケツルアズキ)がもやし原料の主流だったが、品質や見た目の面から緑豆もやしが台頭し、現在では日本のもやし生産における主力原料となっている。

お菓子としての歴史に目を向けると、中国の緑豆糕は端午節に食べる伝統菓子として長い歴史を持つ。端午節は高温多湿の時期にあたり、「清熱解毒」の効能があるとされる緑豆が体調を整える食べ物として重宝されてきた。「糕」と「高」が同音であることから、縁起を担ぐ意味もあったという。

ベトナムのバインダウサインは、北部ハイズオン省が発祥の地として知られ、もともとは素朴な農村のお菓子だった。やがてベトナムの王室にも献上されるようになり、全国的な銘菓としての地位を確立していった。現在ではベトナムを代表する土産菓子のひとつとなり、国内外で広く親しまれている。

近年はアジアンスイーツへの関心が世界的に高まっており、緑豆を使ったデザートが欧米のフードメディアでも取り上げられる機会が増えている。植物性たんぱく質が豊富で低脂質という栄養特性も、健康志向の消費者から注目を集める理由のひとつだ。日本国内でもベトナム料理店や台湾スイーツ店の増加にともない、緑豆を使ったお菓子を口にする機会は着実に広がっている。古くから東洋の食文化を支えてきたこの小さな豆は、これからも世界の菓子文化の中でその存在感を増していくことだろう。

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