材料の名前

日本語では「ローストアマニ」あるいは「アマニロースト」と呼ばれる。漢字では「焙煎亜麻仁」と表記することもある。英語では「Roasted Flaxseed(ローステッド・フラックスシード)」にあたり、フランス語では「Graines de lin grillées(グレーヌ・ドゥ・ラン・グリエ)」となる。そもそも「アマニ」とは、アマ(亜麻)のニ(仁=種子)を意味する言葉で、英語のFlaxseedやLinseedに相当する。学名はLinum usitatissimumで、「Linum」はケルト語で「糸」を、「usitatissimum」はラテン語で「最も有益な」を意味している。その種子を高温で焙煎加工したものがローストアマニであり、製菓や製パンの原材料として流通している。

特徴

ローストアマニの最大の特徴は、焙煎によって引き出される香ばしい風味にある。生のアマニにはやや青臭みがあるものの、高温で焙煎することによってナッツやゴマに近い深みのある香りへと変化する。外見はゴマによく似た小さな楕円形の粒で、色合いは品種によって異なる。ブラウン種は暗い赤褐色、ゴールデン種は明るい黄金色をしている。

栄養面でも注目すべき点が多い。ローストアマニ100gあたりのエネルギーは約530~570kcal。たんぱく質は約20~21g含まれ、これは鶏ささみに匹敵する水準である。脂質は約41~45gで、そのうちオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸が18g前後を占める。α-リノレン酸は体内でEPAやDHAに変換される必須脂肪酸で、日々の食事から摂取する必要がある栄養素だ。さらに食物繊維は約22~25gと豊富で、植物性ポリフェノールの一種であるアマニリグナンも含まれている。アマニリグナンは他の食品と比較して含有量が突出して高く、抗酸化作用をもつ成分として研究が進んでいる。

焙煎加工には殺菌効果もある。生のアマニには微量ながらシアン化合物(青酸配糖体)が含まれるが、加熱処理によってその量は大幅に減少する。ローストされた状態であればそのまま食べても問題はなく、安全性が高い点も製菓材料として重宝される理由のひとつだ。

食感もまた魅力的で、粒タイプはプチプチとした歯ごたえが楽しめる。粉末タイプはすりゴマに近い質感で、生地に均一に混ぜ込みやすい。水溶性食物繊維を含むため、水分に触れるととろみが出る性質があり、パン生地やクッキー生地の食感にも微妙な変化を与える。

用途

ローストアマニは、製菓・製パン分野で幅広く活用されている。

お菓子の材料としては、クッキー、マフィン、スコーン、グラノーラバー、ビスコッティなどに利用される。生地に粒タイプを練り込めば、プチプチとした食感のアクセントが加わり、見た目にもゴマのような粒が散って華やかになる。粉末タイプは、小麦粉の一部を置き換える形で配合することもできる。焼き菓子用の配合であれば、乾燥材料の重量に対して10~30%程度を目安に加えるのが一般的だ。パン生地に練り込む使い方も定番で、食パン、バゲット、ベーグルなどに混ぜると、風味に深みが生まれる。

また、ヨーグルトやシリアル、サラダへのトッピングとしてそのまま振りかける食べ方も人気がある。粉末タイプをスムージーに加えたり、和え物のゴマの代わりとして使ったりするのも手軽な活用法だ。

製菓業界では、健康志向の商品開発においてローストアマニの需要が高まっている。オメガ3脂肪酸や食物繊維を豊富に含むことから、「栄養価の高い素材を使ったお菓子」を打ち出す際に採用されるケースが増えている。チーズクッキーとの相性がよいことでも知られ、アマニの油分がチーズのコクを引き立てるとされる。

主な原産国

アマニの栽培は寒冷地に適しており、世界的な主要生産国はロシア、カザフスタン、カナダ、中国である。2024年のデータによると、生産量はロシアが約118万トンで首位、カザフスタンが約76万トン、中国が約28万トン、カナダが約26万トンと続く。ただし、カナダは食用向けの高品質なアマニの最大輸出国としての地位を長く維持しており、品質管理と流通体制において国際的な信頼が厚い。

南半球ではニュージーランドやオーストラリアも生産国として知られる。日本国内で流通するローストアマニの原料は、ニュージーランド産やカナダ産が中心だ。ニップンのローストアマニ(粒・粉末)はニュージーランド産のゴールデン種を使用しており、ニチガの製品もニュージーランド産を原料としている。

日本国内での亜麻栽培は、1874年(明治7年)に北海道で始まった歴史がある。当時は繊維をとる目的で栽培されていたが、化学繊維の普及とともに衰退した。近年は食用としての価値が再評価され、北海道を中心に小規模ながら栽培が復活している。ニップンからは「北海道産 金のアマニ ローストアマニ粒」という国産原料を使った製品も販売されている。

選び方とポイント

ローストアマニを選ぶ際には、いくつかの着目点がある。

まず品種について。アマニにはブラウン種とゴールデン種の二系統がある。ブラウン種は世界の生産量の大半を占め、工業用・飼料用にも使われる汎用品種である。一方、ゴールデン種は食品用に品種改良されたもので、生産量は世界全体の5~10%程度と希少性が高い。栄養価に大きな差はないが、ゴールデン種のほうが風味がマイルドで、お菓子や料理に使いやすいとされている。製菓用途であれば、ゴールデン種を選ぶのがおすすめだ。

次に形状の選択。粒タイプと粉末タイプがあり、用途に応じて使い分けたい。クッキーやパンの生地に食感を加えたい場合は粒タイプが向いている。生地に均一になじませたい場合や、トッピング用途には粉末タイプが扱いやすい。

保存性にも注意が必要だ。ローストアマニにはα-リノレン酸をはじめとする不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、酸化しやすい性質をもつ。開封後は密封容器に入れ、直射日光や高温多湿を避けて保管するのが基本。冷蔵庫での保存も有効で、できるだけ早く使い切ることが望ましい。未開封であれば常温保存で製造から18か月程度の賞味期限が設定されている製品が多い。

また、遺伝子組換えでないことを確認するのもポイントのひとつ。食品用のゴールデン種は非遺伝子組換えで開発された品種であり、主要メーカーの製品はその旨を明示していることが多い。

メジャーな製品とメーカー名

日本国内でローストアマニといえば、ニップン(旧社名:日本製粉)が市場をリードしている。ニップンは家庭用から業務用まで幅広いラインナップを展開しており、主な製品は以下のとおりである。

ニップン ローストアマニ粒(500g)は、製菓・製パン材料としてプロにも使われる大容量タイプ。ニュージーランド産ゴールデン種100%を使用し、香ばしく焙煎した粒状の製品だ。同シリーズには家庭向けの小容量パック(40g)や、個包装の使い切りタイプ(5g×15袋)もある。

ニップン ローストアマニ粉末(500g / 5g×15袋)は、粒を焙煎後に粉砕した粉末タイプ。すりゴマのような感覚で使え、ヨーグルトや料理へのトッピングのほか、製菓にも活用しやすい。

ニップン 北海道産 金のアマニ ローストアマニ粒(300g)は、北海道で栽培されたアマニを使用した国産原料の製品で、産地にこだわりたい層に支持されている。

もうひとつの有力メーカーがNICHIGA(ニチガ)である。正式な会社名は日本ガーリック株式会社で、「ローストアマニ 粉末 国内焙煎」シリーズを200g、500g、1kg、2kgとさまざまな容量で販売している。ニュージーランド産のゴールデン種を原料とし、国内で焙煎加工を行っているのが特徴だ。通信販売を中心に流通しており、楽天市場やAmazonで手に入る。

このほか、製菓材料の専門店である富澤商店やcotta、菊屋といった店舗でもローストアマニを取り扱っている。業務用ではニップンが製パン・製菓メーカーへの卸売りも行っており、ベーカリーや洋菓子店での採用例も増えている。

なお、ローストアマニそのものとは異なるが、キユーピーはアマニ油を配合した「アマニ油マヨネーズ」を機能性表示食品として販売しており、日清オイリオグループもアマニ油製品を展開するなど、アマニ関連市場全体は拡大傾向にある。

歴史・由来

アマニの歴史は極めて古い。人類が初めて栽培した植物のひとつとされ、原産地はヨーロッパの地中海沿岸地域やコーカサス地方から中近東にかけての一帯と考えられている。

最古の記録としては、石器時代にスイスの湖畔に住んでいた古代人(Swiss Lake Dweller People)が、亜麻の繊維と種子を利用していたことが知られている。紀元前7000年代にはトルコやシリアで栽培が確認され、紀元前5000年代にはエジプトでも栽培されていた。古代エジプトでは亜麻の茎から採った繊維でリネン布を織り、ミイラを包む布地として使用していた。

食用としての歴史が明確に記録に残るのは、西暦800年代のことである。フランク王国のシャルルマーニュ大帝(カール大帝、742~814年)は、アマニの健康上の価値を高く評価し、「臣民はアマニをとるべし」という趣旨の法令を発布した。これがヨーロッパにおいてアマニを食用として広く普及させる契機になったとされている。この時代には、種子から搾った油を食用に供し、茎はリンネル(リネン布)や紙の原料として利用するようになっていた。

中世から近世にかけて、亜麻の栽培はヨーロッパ全域に拡大した。新大陸への伝播は17世紀のことで、1617年にルイ・エベール(Louis Hébert)という人物が現在のカナダ(当時のNew France)に亜麻を導入した記録が残る。1753年にはアメリカで商業栽培が始まり、北米での生産が本格化していった。カナダの広大な大地と寒冷な気候はアマニ栽培に適しており、20世紀には世界有数の生産国・輸出国へと成長した。

日本における亜麻の歴史は、1874年(明治7年)にさかのぼる。ロシア公使を務めていた榎本武揚がロシアから亜麻の種子と栽培技術を導入し、北海道での栽培が始まった。当初は繊維をとることが目的で、明治40年代には軍需産業資材として急速に発展し、日本の基幹産業のひとつにまで成長した。しかし第二次世界大戦後、化学繊維の台頭によって亜麻栽培は急速に衰退し、1960年代にはほぼ消滅した。

転機が訪れたのは1990年代以降である。欧米においてアマニの栄養価値が学術的に立証され、スーパーフードとしての認知が広がった。α-リノレン酸やリグナンの健康機能が注目を集め、日本でもこの流れを受けて、2000年代からアマニ油やローストアマニの市場が形成されていった。

ニップンは日本におけるアマニ市場の開拓者的存在で、家庭用・業務用の製品を通じてローストアマニの認知を広めてきた。2004年には業界団体として日本アマニ協会が設立され、アマニの品質基準の策定や啓発活動が行われている。ニップンのアマニ製品は同協会の認定商品となっている。

製菓分野でのローストアマニの活用は、健康志向の高まりとともに年々拡大している。ゴマに似た親しみやすい風味と、栄養価の高さを兼ね備えた素材として、今後もお菓子づくりの現場で存在感を増していくだろう。

免責事項

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購入・ご利用の際は必ず最新のパッケージ表示または公式情報をご確認ください。特に食物アレルギーをお持ちの方は原材料を十分にご確認の上お求めください。
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