材料の名前(日本語・外国語)

胡麻は、日本語では「ごま」と読み、漢字では「胡麻」と書く。
学名は Sesamum indicum(セサムム・インディクム)で、ゴマ科ゴマ属に分類される一年草の植物である。
英語では「Sesame(セサミ)」、フランス語では「Sésame(セザム)」、ドイツ語では「Sesam(ゼーザム)」、イタリア語では「Sesamo(セーサモ)」、スペイン語では「Sésamo / Ajonjolí(セサモ/アホンホリ)」、中国語では「芝麻(ジーマ)」、韓国語では「참깨(チャムケ)」、アラビア語では「سمسم(シムシム)」、ヒンディー語では「तिल(ティル)」と呼ばれる。

「胡麻」という漢字表記の由来は、中国における命名に遡る。古代中国では、西方の異民族やその居住地域を総称して「胡(こ)」と呼んでおり、シルクロードを通じて西域からもたらされた植物であることが「胡」の字で示されている。また、その種子の形が「麻(アサ)」の実に似ていたことから、「胡の国から来た麻に似た植物」という意味で「胡麻」と名付けられたとされる。

特徴

胡麻は、わずか数ミリメートルほどの極めて小さな粒でありながら、栄養素が驚くほど凝縮された食材である。種皮の色によって大きく「白ごま」「黒ごま」「金ごま」の三種類に分けられ、世界には約3,000もの品種が存在するといわれている。

白ごまは最もポピュラーな品種で、クセが少なくナッツのような甘みと香ばしさを持つ。油分がやや多く、まろやかな風味が特徴で、どのような料理や菓子にも合わせやすい万能型である。黒ごまは種皮にアントシアニンなどのポリフェノール系色素を含み、独特のコクと苦みが感じられる。風味がしっかりしているため、和菓子やスイーツではインパクトのある仕上がりになる。金ごまは三種の中で最も香りが豊かで、華やかな風味が楽しめるが、生産量が少なく希少で、価格も高めである。

栄養面では、胡麻の約半分を脂質が占め、そのほとんどがリノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸である。たんぱく質も約20%含まれ、さらにカルシウム、鉄分、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB群、ビタミンEなど、微量栄養素も豊富に含んでいる。とりわけ注目すべきは「ゴマリグナン」と総称される特有の抗酸化成分で、セサミン、セサモリン、セサミノールなどがこれに該当する。セサミンは肝臓に届いて直接作用する数少ない抗酸化物質のひとつであり、活性酸素の抑制、肝機能の向上、コレステロール値の低下などに寄与すると報告されている。

加工形態としては、洗いごま(収穫後に洗浄したもの)、いりごま(焙煎したもの)、すりごま(すり鉢などですったもの)、練りごま(すりつぶしてペースト状にしたもの)、皮むきごま(種皮を取り除いたもの)の五種類がある。お菓子づくりにおいては、目的や仕上がりに応じてこれらを使い分ける。

用途

胡麻はお菓子の世界において、和洋を問わず幅広い場面で活躍する原材料である。

和菓子の分野では、ごまを練り込んだ「ごま団子」は中華菓子としても広く親しまれており、白玉粉の生地にあんこを包み、表面に白ごまをまぶして揚げた香ばしい一品である。また、黒ごまを使った「ごまようかん」「ごまプリン」「ごま豆腐」なども定番で、練りごまのなめらかなコクが生かされている。ごませんべいは、うるち米の生地にたっぷりの胡麻を混ぜ込んで焼き上げたもので、古くから日本人に親しまれてきた焼き菓子のひとつである。

洋菓子では、ごまのチュイール(薄焼きクッキー)、ごまサブレ、ごまフィナンシェ、黒ごまのパウンドケーキ、ごまのビスコッティなどに使われる。練りごまや黒ごまペーストは、アイスクリームやジェラート、ムース、クリームの風味づけとしても人気が高い。近年ではパティスリーの世界でも黒ごまが注目されており、ボンボンショコラの中にごまのガナッシュを忍ばせたり、マカロンのフィリングに練りごまを使ったりといった創作が見られる。

世界に目を向ければ、中東の代表的な菓子「ハルヴァ(Halva)」はタヒニ(練りごまペースト)と砂糖を主原料とするもので、13世紀頃の地中海沿岸諸国に起源を持つとされる。ギリシャの「パスティリ(Pasteli)」は胡麻を蜂蜜で固めた素朴なキャンディで、古代ギリシャにまで遡る歴史を持つ。中国の「芝麻球(チーマーチュウ)」はごま団子として日本でもおなじみであり、トルコやイランでもごまを使った焼き菓子や飴菓子が数多く存在する。

このほか、ごま油はその芳醇な香りから焼き菓子の風味づけに使用されることがあり、練りごまは製菓用ペーストとしてさまざまなスイーツの基盤材料となっている。

主な原産国・生産国

胡麻の原産地は、アフリカ大陸のサバンナ地帯(現在のスーダン南部からエチオピアにかけての地域)とする説が有力である。紀元前4000年頃にはナイル川流域で栽培が始まっていたと考えられており、古代エジプトではごま油がミイラの防腐剤や灯油、食用油として利用されていた。

現在の世界の主要生産国は、スーダン、ミャンマー、インド、タンザニア、ナイジェリア、中国、エチオピアなどであり、これらの国々で世界生産量の大部分を占めている。全世界の年間生産量は約400万トン以上とされ、アジアとアフリカの両地域が二大産地である。

日本への輸入元としては、ナイジェリア、タンザニア、ブルキナファソ、ミャンマー、パラグアイ、ボリビア、トルコなどが主要な供給国となっている。日本国内で消費される胡麻は年間約15万~17万トンに及ぶが、そのうち国産ごまの生産量はわずか数十トン程度であり、自給率は0.1%にも満たない。鹿児島県や宮崎県、茨城県などで少量ながら国産ごまが栽培されているものの、大変希少な存在である。

選び方とポイント

お菓子づくりに使う胡麻を選ぶ際には、以下のポイントを意識するとよい。

まず、種類の選択である。白ごまはクセが少なく汎用性が高いため、クッキーやサブレなど素材の風味を邪魔したくない場面に向く。黒ごまは見た目のコントラストが美しく、コクと風味が強いため、ごまプリンやごまアイスなど胡麻を主役にしたスイーツに最適である。金ごまは華やかな香りが魅力だが、価格が高いため、ここぞという場面で使うのがよいだろう。

次に、加工形態の選択も重要である。いりごまは粒のまま使い、食感と見た目のアクセントを加えたいときに適している。すりごまは生地に混ぜ込む用途に便利で、ごまの栄養も吸収しやすくなる。なお、ごまは硬い種皮に守られているため、粒のまま食べると消化吸収率が低い。お菓子に栄養面での付加価値も求める場合は、すりごまや練りごまを選ぶとよい。練りごまは滑らかなペースト状であるため、ムースやクリーム、ガナッシュなどに溶け込みやすく、プロのパティシエにも重宝されている。

品質の見極めとしては、粒が均一でふっくらとしていること、色つやが良いこと、異物や虫食いがないことを確認する。開封時に香ばしく清潔な香りがするものが良品である。酸化した油のにおいがする場合は劣化の兆候なので避ける。保存は密封容器に入れ、高温多湿を避けた冷暗所が基本で、開封後はできるだけ早く使い切りたい。すりごまや練りごまは特に酸化しやすいため、冷蔵保存が望ましい。

メジャーな製品とメーカー名

日本における胡麻の代表的なメーカーとしては、まず三重県四日市市に本社を置く「九鬼産業株式会社」が挙げられる。明治19年(1886年)創業のごまの老舗であり、いりごま、すりごま、練りごま、ごま油など幅広い製品を展開しており、製菓・製パン用の業務用練りごまでも高い評価を得ている。

大阪を拠点とする「株式会社和田萬」は、明治16年(1883年)創業のごま専業メーカーで、国産ごまの取り扱いに力を入れていることで知られる。有機JAS認証のごま製品も数多く手がけており、品質にこだわる菓子職人からの信頼も厚い。

「カタギ食品株式会社」は大阪府に本社を置くごまの老舗メーカーで、有機いりごまや有機すりごまがランキング上位の常連となっている。家庭用から業務用まで幅広く製品を揃えており、品質管理の徹底ぶりにも定評がある。

「かどや製油株式会社」はごま油のトップブランドとして知名度が極めて高く、いりごまなどの加工胡麻も人気商品である。同社の純正ごま油は製菓においても風味づけに用いられる。

熊本県に本社を置く「オニザキコーポレーション」は、ごま一筋60年以上の専門メーカーで、「胡麻せんべい」が看板商品として知られる。1枚あたり大さじ約3杯ものごまを使用した贅沢なせんべいは、ごま好きの間で根強い人気を誇る。

製菓業界で特に有名な胡麻を使った菓子としては、「銀座たまや」の「東京たまご ごまたまご」がある。2001年の発売以来、東京土産の定番として不動の人気を獲得している商品で、黒ごまペーストと黒ごま餡をカステラ生地で包み、ホワイトチョコレートでコーティングしたたまご型の菓子である。

海外では、中東・トルコ方面の「ハルヴァ」が胡麻菓子の代名詞的存在であり、アメリカでは「Joyva(ジョイヴァ)」社のハルヴァが広く流通している。

歴史・由来

胡麻の歴史は極めて古く、世界最古の油料作物のひとつとされている。原産地はアフリカ大陸のサバンナ地帯で、紀元前4000年よりも前にはすでにナイル川流域で栽培が行われていたと考えられている。考古学の発掘調査からは、紀元前3500年頃のインダス文明の遺跡でも胡麻の種子が出土しており、アフリカからインドへと非常に早い段階で伝播したことがうかがえる。

古代メソポタミアでは、ごまは神々への供物として珍重され、バビロニアやアッシリアでは少なくとも4000年前にはごまが高価な作物として取引されていた。古代エジプトでは、ごま油は食用だけでなく、灯油、医薬品、さらにはミイラの防腐処理にも使われるなど、生活に深く根差した存在であった。

インドでは、ごまは「ティル」と呼ばれ、アーユルヴェーダにおいて身体を浄化し活力を与える食材として重用されてきた。インドから中国へは紀元前3000年頃に伝わったとされ、中国ではシルクロードを介して西域(胡の地)からもたらされたことから「胡麻」の名がつけられた。

日本への伝来は非常に古く、縄文時代末期(紀元前1200年頃)の遺跡からごまの種子が出土している。奈良時代(710年~794年)には畑での栽培が行われ、ごま油が食用油や灯油として利用されるようになった。仏教の伝来により肉食が制限されるなか、胡麻は貴重な高たんぱく・高脂質の植物性食品として僧侶たちの食生活を支え、精進料理には欠かせない食材となった。鎌倉時代に中国からすり鉢が伝わると、すりごまが広く普及し、胡麻の利用は飛躍的に広がった。

江戸時代には、胡麻を使ったお菓子の文化も花開いた。小麦粉にごまを混ぜて焼いた「胡麻胴乱(ごまどうらん)」は当時の庶民に親しまれた菓子で、中が空洞になっているため見た目と中身が違う、つまり人を欺くという意味合いから「ごまかす」という言葉の語源になったとする説が残っている。この逸話は、胡麻がいかに江戸の庶民文化に溶け込んでいたかを物語っている。

近代以降、日本ではごまの国内生産が減少の一途をたどり、現在では消費量のほぼすべてを輸入に頼っている。しかしその一方で、胡麻は日本の食文化やお菓子の世界において今なお欠かせない存在であり続けている。ごまの香ばしい風味と豊かな栄養は、和菓子から洋菓子まで、時代を超えて人々の味覚を楽しませ続けている。

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