材料の名前(日本語・外国語)

柚子は、日本語では「ゆず」と読み、漢字では「柚子」「柚」「柚仔」などと表記される。正式な和名は「ユズ」であり、本柚子(ホンユズ)とも呼ばれる。植物学上の学名は「Citrus junos」で、ミカン科ミカン属に分類される常緑小高木である。学名の種小名「junos(ジューノス)」は、四国や九州地方でかつて用いられていた呼称「ゆのす(柚ノ酢)」に由来するとされている。

英語では近年「Yuzu」がそのまま国際的に通用する名称として定着しており、「Japanese citron(ジャパニーズ・シトロン)」と呼ばれることもある。フランス語では「yuzu(ユズ)」あるいは「citron japonais(シトロン・ジャポネ)」と表記される。中国語では「香橙(xiāngchéng)」と呼ばれる。なお、現代中国語で「柚子(ヨウズ)」と書くとザボン(ブンタン)を指すため注意が必要である。韓国語では漢字の「柚子」を韓国語読みした「유자(ユジャ)」と呼ばれ、韓国でも広く親しまれている。

特徴

柚子はミカン属の柑橘類の中でもっとも耐寒性が強いことで知られ、年平均気温12〜15度の涼しい気候でもよく育つ。そのため、他の柑橘類が栽培困難な山間部でも生産が可能であり、日本各地の中山間地域で広く栽培されてきた歴史を持つ。

果実は直径4〜8センチメートル、重さ約110グラムほどの球形で、成熟すると鮮やかな黄色に色づく。果皮の表面にはでこぼことした凹凸があり、これが柚子の外観上の大きな特徴となっている。果汁は少なめだが強い酸味を持ち、何より特筆すべきはその芳醇で爽やかな香りである。果皮には精油成分であるリモネンが豊富に含まれ、この香気成分が柚子ならではの芳香を生み出している。

栄養面では、ビタミンCの含有量が際立っている。日本食品標準成分表によれば、果皮には100グラムあたり約160ミリグラムのビタミンCが含まれ、これは果汁(100グラムあたり約40ミリグラム)の約4倍にあたる。果皮のビタミンC含有量は柑橘類の中でもトップクラスである。このほか、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸、血流改善効果が期待されるヘスペリジン(ポリフェノールの一種)、水溶性食物繊維のペクチン、抗酸化作用のあるβ-カロテンなども含まれている。

柚子は夏に出回る青い「青柚子」と、秋から冬にかけて熟した「黄柚子」の二種類が季節によって流通する。青柚子は若々しく鋭い香りと強い酸味が特徴で、黄柚子は華やかで円熟した香りとまろやかな酸味が楽しめる。

また、現在日本で栽培される品種は主に三つの系統に大別される。もっとも香りが高い本ユズの代表品種である「木頭系」、結実までの期間が短い早期結実品種の「山根系」、そして種がほとんどなくトゲも少ない「多田錦」である。多田錦は本ユズに比べて香りがわずかに劣るとされるが、栽培のしやすさと種なしという利便性から加工用として重宝されている。

用途

柚子はお菓子の世界において、その比類なき香りと酸味を活かして実に多彩な用途で使用されている。

和菓子の分野では、柚子は古くから欠かせない素材のひとつである。柚子餡を用いた饅頭や最中、柚子風味の羊羹は定番中の定番であり、練り切りや干菓子の風味づけとしても用いられる。石川県輪島の伝統銘菓「柚餅子(ゆべし)」は、柚子の果実をくりぬいて餅やもち米などを詰めて蒸し上げ、さらに数カ月間乾燥・熟成させるという手間のかかる製法で作られる格調高い和菓子として名高い。

洋菓子の分野でも、柚子の人気は近年急速に高まっている。柚子ピール(砂糖漬けにした柚子の皮)はパウンドケーキやフィナンシェ、マドレーヌなどの焼き菓子に練り込んだりトッピングとして添えたりする。チョコレートとの相性も抜群で、柚子ガナッシュを使ったボンボンショコラや柚子風味のタブレットチョコレートは、フランスのパティシエやショコラティエからも高い評価を受けている。シャーベットやジェラートの原料としても活用され、柚子の鮮烈な香りと酸味は冷菓にひときわ清涼感を与える。

製菓の現場で使用される柚子の加工形態は多岐にわたる。搾りたての果汁、冷凍果汁、果皮のペースト、乾燥果皮パウダー、柚子ピール(砂糖漬け)、柚子ジャム・マーマレードなどがあり、用途に応じて使い分けられている。果汁はゼリーやムース、ソースなどに、果皮やピールは焼き菓子やチョコレートに、パウダーは粉と混ぜて焼き菓子の生地に練り込むなど、それぞれの特性を生かした使い方ができる。

お菓子以外の食品用途としては、ポン酢醤油の原料、柚子胡椒(柚子の皮と唐辛子・塩を合わせた調味料)、柚子味噌、柚子茶(韓国で「유자차(ユジャチャ)」として広く飲まれる)、清涼飲料水、リキュールなど幅広い。さらに冬至の柚子湯に代表される入浴剤やアロマオイル、化粧品の原料としても利用されており、まさに「捨てるところがない果実」と称されるほど余すことなく活用されている。

主な原産国・産地

柚子の原産地は中国中央部から西部、揚子江(長江)の上流域とされている。中国からアジア各地に伝播し、現在も中国の一部地域や韓国(主に全羅南道の南部や済州島付近)で栽培されている。しかし、消費量・生産量ともに世界最大であるのは日本である。

日本国内の柚子の生産量は約2万7千トン前後(近年の統計)で、その中でも高知県が圧倒的なシェアを占め、全国生産量の約50〜53パーセントを占めている。次いで徳島県が第2位、愛媛県が第3位と続き、四国3県を合わせると国内生産の約8割に達する。そのほか大分県、宮崎県、鹿児島県、島根県、山口県、熊本県なども主要産地として挙げられる。

高知県では馬路村や北川村、安芸市、香美市などの四国山地の山間部一帯に産地が広がっている。徳島県では那賀町(旧木頭村)の「木頭柚子」が最高品質のブランド柚子として全国的に知られている。また、東日本では岩手県陸前高田市が「北限のゆず」として柚子栽培の北限地帯のブランド化に取り組んでいる。

選び方とポイント

お菓子作りに使う柚子を選ぶ際には、以下のポイントを押さえることが重要である。

まず注目すべきは「香り」である。柚子を手に取り鼻に近づけたとき、鮮烈で爽やかな芳香が感じられるものが良品である。香りが弱いものは鮮度が落ちている可能性が高い。

次に「皮の状態」を確認する。果皮全体にハリとツヤがあり、鮮やかな黄色(黄柚子の場合)または鮮やかな緑色(青柚子の場合)に均一に色づいているものが理想的である。皮がしなびていたり、ぶよぶよと柔らかくなっていたり、黒ずみや傷が目立つものは避けたい。

「重さ」も重要な判断基準である。手に持ったときにずしりと重みを感じるものは、果汁がしっかり含まれている証拠である。見た目のサイズに対して軽く感じるものは果汁が少なく、乾燥が進んでいる可能性がある。

「ヘタの状態」も見逃せないポイントである。ヘタの切り口が新鮮で緑色が残っているものは収穫から日が浅い証拠であり、茶色く変色しているものは鮮度が低下している。

お菓子に使用する場合、果皮を使う用途が多いため、できれば無農薬や減農薬で栽培されたものを選ぶのが望ましい。柚子はもともと病害虫に強く、無農薬栽培が比較的容易な果実であるため、産地直送品やオーガニック認証品も手に入りやすい。

加工用途に応じた選び方も大切である。果汁を主に使う場合はずっしり重いものを、果皮の香りを重視する場合は表面の凹凸がはっきりしていて香りが強いものを選ぶと良い。柚子ピールを作る場合には、果皮が厚めでしっかりしたものが適している。

メジャーな製品とメーカー名

柚子を原材料に使った代表的なお菓子・食品製品は数多く存在する。

和菓子の分野では、石川県輪島市の「柚餅子総本家 中浦屋」が製造する「丸柚餅子」が全国的に名高い。柚子の実をまるごとくりぬき、秘伝の材料を詰めて半年間かけて丹念に作り上げるこの銘菓は、輪島を代表する伝統の味として知られる。和歌山県の「福菱」は1933年の創業以来、柚もなかを看板商品として販売し続けており、自社で柚子の皮をむき餡を炊き上げるこだわりの製法で長年愛されている。同じく和歌山県の「鈴屋」「港屋」なども柚もなかの名店として知られている。老舗和菓子店の「とらや」も季節の生菓子や羊羹に柚子を取り入れた商品を展開している。

洋菓子の分野では、砂糖漬けフルーツの専門メーカーである「株式会社うめはら」が業務用の柚子ピールを製造・販売しており、多くのパティスリーやベーカリーで使用されている。柚子の特有の香味・酸味が逃げないよう特別な製法で作られたピールは、焼き菓子やチョコレート、パン、シャーベットなど幅広い商品に活用されている。

飲料では、高知県の「馬路村農業協同組合」が販売する「ごっくん馬路村」が特に有名である。柚子とはちみつと水だけで作られたこのゆずドリンクは、馬路村の柚子加工の成功事例として全国に知られ、過疎の村を一躍有名にした製品である。

加工原料の分野では、高知県の「カッセイ食品」がゆず果汁パウダーを製造しており、製菓・製パン用途に広く供給している。和歌山県の「伊藤農園」も業務用のゆず果皮ピールや粉末を手がけ、ロールケーキやパウンドケーキ、焼き菓子のトッピングなどに使用できる製品を展開している。愛媛県の「愛媛果汁食品株式会社」は搾汁方法にこだわった柚子果汁や柚子皮製品を和菓子・洋菓子メーカー向けに供給している。

歴史・由来

柚子の歴史は極めて古く、原産地とされる中国の揚子江上流域では数千年前から存在していたと考えられている。

日本への伝来時期については諸説あるが、飛鳥時代から奈良時代にかけて中国大陸から渡来したとする説が有力である。日本最古級の記録としては、797年に編纂された歴史書「続日本紀」に、772年(宝亀3年)の条に柚子に関する記載が確認されている。当初は主に薬用や観賞用として栽培されていたが、やがてその芳香と酸味が料理や加工品に活かされるようになり、日本の食文化に深く根づいていった。

平安時代の「和名抄」(932年頃)には漢名で「柚」、和名で「由」として記されており、この時代にはすでに広く知られた植物であったことがうかがえる。「柚酸(ゆず)」という表記は、強い酸味を持つ果実であることに由来し、これが転じて「柚ノ酢(ゆのす)」という別名も生まれた。

江戸時代に入ると、各地の山間部で本格的な柚子栽培が行われるようになり、料理の香りづけや薬味として庶民の間にも広まった。冬至に柚子湯に入る風習もこの時代に定着したとされる。1712年の「和漢三才図会」には「柚」に二種ありとの記載があり、柚子とザボン(ブンタン)の区別が意識されるようになった経緯がうかがえる。

近代以降の柚子産地の発展は、日本の山村の歴史と密接に結びついている。1965年頃から、それまで農耕馬の生産や林業、木炭製造、和紙原料栽培を主産業としていた中山間地域がこれらの衰退に直面し、代替産業として柚子栽培に転換していった。高知県をはじめとする四国山地、九州山地、中国山地、紀伊山地の山間部に柚子の産地が集中しているのは、こうした歴史的背景による。

特に高知県馬路村は、柚子による地域振興の成功例として全国的に知られている。人口1000人に満たない小さな山村が、柚子の加工品開発とブランド化によって全国にその名を轟かせた事例は、日本の地方創生のモデルケースとして語られている。

21世紀に入ると、柚子は「Yuzu」として国際的にも注目を集めるようになった。フランス料理のシェフやパティシエが柚子の香りに魅了され、高級レストランやパティスリーで「Yuzu」がメニューに登場する機会が急増した。高知県は海外市場への柚子輸出にも力を入れており、「KOCHI YUZU」としてのブランド確立を目指す取り組みが進められている。こうして柚子は、千年以上にわたって日本の食文化を彩ってきた柑橘が、いまや世界のガストロノミーに影響を与える食材へと進化を遂げつつある。

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